“絶望の国”日本において、なぜ若者の多くは「幸せ」を感じているのか。若き社会学者・古市が解き明かす

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 26歳の若き社会学者・古市憲寿。彼が書いた『絶望の国の幸福な若者たち』が今、巷(ちまた)で話題になっている。

 同世代の古市が描く「若者論」は、手垢のついた古くさい主張とは一線を画す視野と思考で、リアルにこの社会を射抜いている。終身雇用制度が崩れた感のある現代において彼が考える「若者」と「仕事」とは?

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――古市さんは『絶望の国の…』のなかで「現代は世代間格差をはじめとした社会構造が若者にとって“不幸”な仕組みになっているのは事実だが、実は若者の満足度や幸福度は過去にないほど高い」と書かれています。そもそも研究者として同世代を語る、「若者論」に着目したきっかけはなんだったのでしょうか?

「昨年、『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』という本を出しました。この本ではコミュニティと若者の関係みたいな感じのことを書いたんですが、それ以降、インタビュー取材などで“現代の若者ってどうなの?”みたいなことをよく聞かれるようになりました。一応、自分も若者なんですけど、そんな若者一般のことを聞かれてもデータがあるわけでもない。そこで真剣に若者のことを考えてみようと思ったんです。

 あと、サッカーのワールドカップで盛り上がったり、デモに参加している若者を取材しましたが、30歳、40歳になってやるのではなくて、彼らと同年代である今やることに意義があると考えたのも理由のひとつです」

――一般的には格差社会のもと、その「不幸」が語られる若者ですが、20代の約7割が現状の生活を「幸せ」と感じているというデータは衝撃的でした。

「財政赤字や少子高齢化など、今の日本は問題が山積みで、確かに未来に希望は持てません。それでも若者たちは現状にそこまで不満があるわけでもなさそうだし、むしろ意外と幸せそうです。いったい、それはなぜなのかと考えたとき、人は今日よりも明日がよくなると信じることができなくなったとき、将来に希望をなくしたときに、『今が幸せ』と感じるのではないかと思ったんです。仲間たちとのんびり、自分の身の回りの小さな世界で幸せを感じる。それが現代の若者の幸せの本質なんだと思います」

――今後、格差社会のさらなる広がりが予想されるなか、先日、その是正を求めるデモがニューヨークを中心に世界中に波及しました。このなかには若者の参加者も多かったようですが、こうしたデモをどのようにご覧になっていますか?

「あの一連のデモがいかにも“若者の怒り”の象徴のように報じられることにはちょっと違和感を覚えます。

 というのも、ちょうどあの時ニューヨークにいたんですけど、僕はデモにはまったく気づかず、五番街で買い物をしていました(苦笑)。マスコミでは大きく取り上げていましたが、それでも実際の参加者はそこまで多いわけではない。その後、東京で行なわれたデモも見てきたのですが、参加しているのは別に若者だけというわけではなく、デモひと筋30年のオジサンやオバサンもたくさんいました。

 それでもなぜか世の中的にはあのデモが“若者の怒り”として表象される。えっ、それってちょっと違うんじゃないのって。いったい若者に何を期待しているんだろうって思いますね」

――本の中でも、上の世代が抱えている問題を若者の問題としてすり替えているのではないかとおっしゃってますね。

「(上の世代の人には)そんなふうに若者に期待しないで、自分たちでやってよって思いますね。そもそも“若者に期待したい”なんてしたり顔で言っているオジサンたちは、たいてい大企業のトップだったりするんですけど、実際、その会社の取締役とか理事のなかに若い人はひとりもいない。つまり、意思決定する機関に若者がひとりも入っていないのに、“若者に期待したい”は無責任だってことです。本当に期待するのであれば、そうしたトップの人たちは、若者におカネか権利のどちらかを差し出してからにしてほしい。それもせずに安全な場所で“頑張れ”と言われてもなぁ……って感じですよね。