7月26日に世を去った巨星・小松左京の業績を偲ぶ書籍が続々刊行されはじめている。

 先陣を切ったのは、電子書籍の総合文芸誌、月刊〈アレ!〉(allez!)の10月号(創刊第2号)https://hon-to.jp/asp/ShowItemDetailStart.do?itemId=B-900053-000000-1107M001-005&itemOnlyFlg=false
「小松左京さん、ありがとう」と題する特集では、石井紀男、かんべむさしのエッセイに加え、北野勇作、佐藤哲也、平山瑞穂、林巧、田中哲弥など10人の作家が、小松左京とその作品をテーマにした短編小説をこの特集のために書き下ろしている。お題にした作品は、瀬名秀明が「岬にて」、松崎有理が「お茶漬の味」、小林泰三が『果しなき流れの果に』、津原泰水が『空中都市008』、堀晃が『虚無回廊』......という具合。それぞれ枚数は短いものの、ひねり方が十人十色で、急遽組まれた特集(9月29日販売開始)とは思えないほど充実している。この特集だけでも、『小松左京トリビュート』というオリジナル・アンソロジーになりそうだ。この〈アレ!〉は、iPhone系、Andoroid系のスマートフォンのほか、PCでも読める。

 続いて11月5日には、河出文庫から、東浩紀編の小松左京傑作選全3巻の第1巻となる『小松左京セレクション 1 日本』が刊行された。編者の序文によれば、もともと生誕80周年を記念する企画だったが、結果的に追悼出版となってしまったという。
 第1巻は、「地には平和を」「戦争はなかった」「ご先祖様万歳」「物体O」「時の顔」「東海の島」「お糸」の名作短編7編に加えて、『日本アパッチ族』まえがき、『果しなき流れの果に』エピローグ(その2)、『ゴエモンのニッポン日記』抜粋、『日本タイムトラベル』あとがき、『日本沈没』エピローグを収録。従来の短編傑作選とはひと味違うスタイルで、巨匠の仕事を多角的に浮かび上がらせる。編者による序文と各編解題つき。続巻の『2 未来』と『3 文学』は近日刊行予定。

 11月10日には、同じ河出書房新社から、追悼ムック『文藝別冊 小松左京----日本・未来・文学、そしてSF』も刊行される。
 目玉は、自宅から新たに見つかった『日本沈没』創作メモと、開高健に宛てた手紙(の草稿)再録。前者については、讀賣新聞(http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20111028-OYT8T00581.htm)などでも報じられているとおり、『日本沈没』完成に至る道のりの一端を窺わせる貴重な資料。後者の手紙は1965年5月ごろ(〈SFマガジン〉に『果しなき流れの果に』を連載していた時期)に出されたとおぼしき私信の下書き。手紙の中には、

〈ロマン主義の流れが、SFにおいては復活しかかっているのは、それなりに不可避な必然的なところがあって----文学が長らくほったらかしておいた間に、科学が達成してしまった、認識の内容というのは、いやはや、ひでえもんでありますぞ。はてしない泥沼のベトナム戦争の奥に、人間対電子計算機の斗いの姿が、おぼろにあらわれてくるような気がしないでもありません。そして、人間的連帯が、この戦いに、必ず最後の勝利をしめるかどうか、どうもあやふやな気もします。〉

 ......と、SFと科学の未来について語った一節もある。

 このほか、『文藝別冊 小松左京』には、講演記録「人間にとって文学とは何か」、山田正紀による書き下ろしの小松左京論35枚、乙部順子ロング・インタビュー「秘書が見た小松左京」、桂米朝、宮部みゆき、谷甲州、樋口真嗣、萩尾望都のエッセイ、星新一、手塚治虫、筒井康隆による小松論の再録、それに東浩紀×宮台真司の追悼対談と、日本SF大会などで行われた追悼トーク3本(鏡明×横田順彌×高橋良平×山田正紀×とり・みき×大森望、堀晃×かんべむさし×山本弘×上田早夕里、瀬名秀明×森下一仁×巽孝之×林譲治×鹿野司×八代嘉美)が収録されている。

 一方、徳間書店からも、追悼ムック『完全読本 さよなら小松左京』が11月下旬に刊行される予定。こちらは、手塚治虫との対談を収めた付録CDと、新発見の短編「鬼の惑星──あるいは『青ヘルメット』」およびラジオ漫才台本「いとしこいしの新聞展望」が目玉。
 そのほか、小松左京インタビュー3本に、小松左京×筒井康隆×星新一の『SF作家オモロ大放談』(一部)と、桂米朝×小松左京×澤田隆治の上方大衆芸能裏面史〈戦後編〉を再録。
 新原稿としては、吾妻ひでお「ゴルディアスにも結べない」と、とり・みき「小松左京の"もっとキャラクターして!"」の追悼マンガ2本、笠井潔、巽孝之、鏡明の小松論、野尻抱介、上田早夕里、北野勇作、横田順彌、倉阪鬼一郎、堺三保によるテーマ別小松作品解題、石川喬司、最相葉月、高千穂遙、伊藤典夫、石毛直道、由美かおる、松本零士、的川泰宣へのインタビュー、堀晃×かんべむさし対談「関西の小松左京、小松左京の関西」、それに鼎談が4本(山田正紀×瀬名秀明×小川一水「小松左京の志を継ぐのは誰か」、萩尾望都×新井素子×小谷真理「女性が読み解く小松左京」、出渕裕×樋口真詞×庵野秀明「SF映像クリエイター オモロ大放談」、とり・みき×鹿野司×米田裕の「小松左京に振り回されて」)----などなど盛りだくさんの内容だ。

 徳間書店では、これに先立ち、未完に終わった小松左京最後の長編『虚無回廊』全3巻をハードカバー1冊の合本にした決定版『虚無回廊』を11月16日に刊行。巻末には、堀晃、山田正紀、谷甲州が『虚無回廊』と小松左京について語る鼎談を収録する。

 また、同じ徳間書店から、鶴田謙二のマンガ『小松左京に捧ぐ トリビュート日本沈没』も11月15日に発売される予定。

(大森望)







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