先週土曜日のスタンフォードブリッジは、ゴールラッシュに沸いた。チェルシーMFフランク・ランパードのファインゴールで幕を開け、その後は手に汗握るシーソーゲームに。終わってみれば敵地に乗り込んだアーセナル主将ロビン・ファン・ペルシがハットトリックを決める大活躍でホームのチェルシーを3−5で下したわけだが、このスコアボードを見て頭をよぎったのは、オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッドがアーセナルを8−2と撃破した8月の一戦と、まだ記憶にも新しい10月のマンチェスターダービーでシティがユナイテッドに1−6と大勝した試合だ。欧州でも名高いトップクラブがこのような大敗を喫するのは、一体なぜだろうか。

アーセナルのディフェンスの脆さが指摘されるのは、今に始まったことではない。ヴェルメーレンやサーニャの戦線離脱、新加入メルテザッカーのコミュニケーション不足に若手の経験不足と様々な要素が相まって、これまで無失点に抑えた試合が少なかった。幸い守備の要であるヴェルメーレンが復帰し、ローラン・コシェルニーのパフォーマンスもずいぶんと改善されているので、今後は強固なディフェンスが期待出来そうだ。

むしろ、気がかりなのはユナイテッドとチェルシーではないだろうか。両チームの守備の要であるイングランド代表のリオ・ファーディナンドとジョン・テリーのパフォーマンスが揃って低下しており、“年齢のせいでスピードについて行けず、相手ストライカーに振り切られるシーンが増えた”と巷で囁かれているのだ(チェルシーファンの友人に言わせると「テリーは元々速い選手じゃない!」そうだが)。

年を取れば体力的に衰えるのは自然の摂理であるが、ディフェンダーの場合は経験値がモノを言うので、身体の衰えをカバーするのは十分可能だ。たとえスピードで勝てなくとも、相手の裏をかこうとするFWの動きを的確に読み、それを阻止すればDFとしての役割をきっちり果たせるからである。それをベテランならではの“安定感”と呼ぶのだろうが、先日のテリーのようにフィットしていなければ元も子もない。支えであるはずのベテランの出来がイマイチだと、チームメイトの心配や不安がミスを誘発してしまう。

またユナイテッドとチェルシーの場合、今季取り入れているラインを高く保つ戦術が上手く機能していないことも大量失点の理由に挙げられるだろう。エネルギッシュな中盤がいてこそ成立する戦術だが、生憎チェルシーやユナイテッドには優れたテクニシャンはいても肝心のダイナモがいない。過去にCLで欧州王者バルセロナと対戦して苦い経験を持つ両クラブが、彼らの攻撃的サッカーに対抗するにはこちらも攻撃的に行くしかないと息巻いているように見えるが、再考の余地があるのではないだろうか。

【鷲津正美/ Masami Washizu】