川端康成が遺した“百合小説”が復刊

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 昭和初期に発表された、とある日本の文豪の小説が再び注目を集めていることをご存知だろうか。ツイッター上ではその小説の読者からは、クールジャパンのひとつの源流だといった声や、映画化を控える人気ライトノベル『マリア様がみてる』と通じるといった意見が寄せられており、現代のアニメやマンガといった文化との類似点を指摘する人も多い。

 その小説が、このほど実業之日本社から復刻、文庫本として出版された『乙女の港』(川端康成/作)だ。
 本作は横浜を舞台に展開する三人の女学生たちの交友を描いた作品。テーマとなっている女学生同士の友情「エス」は、女学生同士の純潔な交際を意味し、まさに“秘密の花園”だ。正統派少女小説といえる作品だ。
 さらに本書の解説で、内田静枝氏はこんなことを指摘している。

「実は、『乙女の港』はいわゆる〈百合小説〉として、一部マニアに知られてきた作品でもありました。今や、日本のマンガやアニメは世界的に注目を集めていますから、本作がこうしたムーブメントの源流に位置することは興味深い現象です」(p318より)

 この言葉から、本作の歴史的な意義がよく分かるのではないだろうか。

 さて、この小説、作者は川端康成とされているが、実は他に原作者がいる。それが川端の弟子である中里恒子だ。神奈川近代文学館には、中里による『乙女の港』草稿が25枚保管されており、川端がその原稿に手を入れている様子がうかがえるという。

 また、本作には「少女の友」連載時に掲載していた中原淳一の挿絵が全点収録されている。中原淳一の名やイラストは、NHK連続テレビ小説「おひさま」の主人公である陽子が女学生時代にファンだったということもありご存知の人も多いのではないだろうか。そんな中原の絵がじっくりと堪能できるのも、この文庫の特徴だ。

 川端康成と中里恒子のコンビが残した伝説の少女小説を、今、楽しんで欲しい。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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