厚生労働省の調査によると、日本人の労働時間は不景気の影響もあり減少傾向にあるという。確かに「過労死」という言葉をテレビや新聞で見る機会は、一時期に比べ減ってきているような気もする。

 だが、不景気ゆえに働かざるをえない職場も存在するはず。はたして本当に労働時間は減少しているのだろうか。労働問題に詳しい弁護士の山内一浩氏は、こう疑問視する。

「実際は長時間の残業をしているのに、申告できない会社はいくらでもあります。自己申告制の統計がどれだけ信用できるか疑問です。また、不景気が続き、企業が採用を手控えた結果、社員の人数が減っているのに仕事量が減っていないことで長時間労働を強いられている職場もあります」

 過労死という事象がクローズアップされるに伴い、企業に対する責任も追求されるようになった。山内氏の言うように、社員だけが減って仕事量が減少していないのにもかかわらず、申告する「残業時間」だけが減っていたとしたら、むしろ労働環境は悪化しているともいえる。

 また、『就活前に読む会社の現実とワークルール』(旬報社)の共著者で、弁護士の川人博氏は「ひとつ、はっきりひどくなっていることがあります」と指摘する。

「20年くらい前まで、過労死するほど仕事がキツいのは40代、50代でした。今、キツいのは20代、30代です。特に20代は悪い意味で即戦力にされてしまいます。以前の日本の会社では、入社1年目、2年目の新人は基本的に“育てる”もの。だから1年目から過労死するなんてことはまずありませんでした。今は入社1年目から“名ばかり店長”にさせられたり、ノルマを与えられたりします」

 この背景には、「狭き門をくぐってせっかく正社員になれたのだから、これぐらい働くのも仕方がない」という働く側の意識が存在するのだろう。就活地獄からの過労地獄、今の日本の20代で満足のいく職に就いているのは、ほんの一部かもしれない。

(取材/梶野佐智子、写真/井上賀津也)

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