福島原発の周辺地域で検出されていた放射性ストロンチウムが、約250キロも離れた横浜市内でも検出された。放射能の飛散が、距離だけでは計れない現実が明らかになりつつある。

 10月6日に文部科学省が公表した、東京と神奈川県の「セシウム汚染マップ」も、遠隔地であっても「汚染飛び地」があることを示すものだった。

 汚染が進んでいたのは、東京のほぼ東西の両端に位置する葛飾区と奥多摩町で、その放射線量はそれぞれ、0.1〜0.2、0.2〜0.5マイクロシーベルト。セシウムの蓄積量では、両地域とも1万〜3万ベクレルで、奥多摩の一部では、6万〜10万ベクレルの観測地もあった。「汚染マップ」によると、地域によって汚染の度合いに大きなバラツキがある。

 文部科学省の説明はこうだ。

「高濃度の汚染地域には2つの流れがあります。1つは、栃木から群馬そして、東京の西部に至る流れ。もう1つは、茨城南部から千葉の一部を抜けて、東京の葛飾区に至る流れです。放射性物質の飛散は、風の流れと地形によって異なり、風が滞留しやすい窪地や植物の多いところ、また、飛散途中で雨が降ったところなどにとどまる傾向があります」(原子力災害対策支援本部)

 ところで、埼玉・秩父から東京・奥多摩といえば、スギ花粉の一大貯蔵地域。少々気の早い話だが、来年の花粉の飛散が気になるところ。スギ花粉とともに放射性セシウムも一緒に飛散する可能性があるのではないか。 放射能の内部被曝に詳しい、矢ケ崎克馬・琉球大学名誉教授によれば、「セシウム137の粒子は0.01マイクロメートル。それに対して、スギやヒノキの花粉は20〜40マイクロメートル。セシウムが花粉に付着して飛散する可能性は十分あります。それよりも、葉についたセシウムが落ちて腐葉土となり、吸収され花粉の中に取り込まれて飛散するという事態が予想されます」

 また専門外の話だがと前置きしつつも、「単なる花粉症の症状だけでなく、さらに悪性の症状が出る可能性があるのではないか」

 と、「悪性花粉症」が蔓延する可能性を指摘する。

 花粉症に詳しい三好基晴医学博士も、

「放射性物質が付着した花粉を吸い込んだ方が花粉症の症状が強くなる可能性はある」

 と指摘する。防衛策としては、

「従来の花粉対策と同様にマスクなど物理的な対処になる。積極的に食べて放射性物質の有害性だけを減らせる食物はない。リンゴやニンジンに含まれるペクチンはセシウムを排泄しやすいが、ビタミンやミネラルも排泄してしまう」

 いずれにせよ、花粉症持ちにとって、来年の花粉シーズンはさらに憂鬱な季節となりそうだ。