アウェイのマンチェスター・シティがホームのユナイテッドに1−6の大差をつけて勝利! こんなマンチェスター・ダービーのシナリオを誰が予想できただろうか。いやはや、常勝チームのユナイテッドを粉砕したシティの攻撃陣は見事で、パワーシフトを実感させる一戦であった。

だが、この日は試合内容以上に個人的に度肝を抜かれたシーンがある。最初にゴールネットを揺らした男、マリオ・バロテッリのゴールセレブレーションの場面だ。得点を決めた直後にユニフォームをまくり上げたそのアンダーシャツには、「WHY ALWAYS ME?」(なんでいつも俺?)の文字。イングランドのメディアから“無鉄砲な男”と形容されてきたバロテッリだからこそできる技、と言ったらいいのだろうか。そのユーモアセンスに脱帽である。

ご存じの方も多いだろうが、このスーパー・マリオことバロテッリは、これまでピッチ上のみならず、ピッチ外の蛮行でも常に注目を集めてきた人物である。違法駐車による愛車のレッカー移動は数知れず、イタリア系マフィアとつながっているという噂や、トレーニング場での指揮官やチームメイトとの派手な衝突、とマスコミが喜んで飛びつきそうなネタを次から次へと提供してきた。

実はこのダービーマッチ前日の22日未明にも、友人たちと自宅のバスルームで花火を打ち上げて遊んでいたところ、花火がタオルに着火して自宅が火事になるという騒ぎを起こしていたのである。もちろん試合当日の新聞やタブロイド紙のスポーツ欄1面はバロテッリの火事騒動が大々的に報じられた。

普通の人間の神経なら猛反省するとか、恥ずかしくて表を歩けないという心境になるだろうが、彼の場合は違う。ダービーマッチという大一番でゴールを決め、クールな顔をして「なんでいつも俺?」と絶妙なジョークで切り返してきたのだ。“才能溢れるプレーしかり、そのエキセントリックなプライベートライフしかり、常に注目集めちゃうんだよね、俺。”というギャグセンス。火事騒動の翌日にこのネタをユニフォームの下に仕込んでくるあたりは、もう天才的としか言いようがない。

ロベルト・マンチーニ監督は試合後、バロテッリについて「彼はクレイジーだけど、一人の男として気に入っている。彼のやんちゃな部分を取り除いてしまったら、選手としてのバロテッリから何かを奪ってしまうのかもしれない」と話している。

現在21歳のバロテッリが、今後フィジカル・メンタルの両面でどのように成熟していくのか見ものであるが、しばらくは自由奔放な彼を見ていたい。そう密かに思うのは、どうやら私だけではなさそうだ。

【鷲津正美/ Masami Washizu】