DeNAの横浜買収がほぼ本決まりと報じられた。買収額は連盟加盟金も含めて100億円だという。MLB球団の資産価値の平均は5.2億ドル(約 400億円)。単純な比較はできないが、随分安い。TBSは140億円で「まるは」から球団を買って、40億円も資産価値を下げて売却した。20億円以上といわれる毎年の赤字補てん分も含めば、大変な損失だ。株主に厳しく追及されてもおかしくない。市場はこの買収を懸念し、DeNAの株価は270円(7.93%)も下落、TBSは反対に12円高だった。ビジネスの常識で考えれば、あり得ない企業買収だったと言えよう。

DeNAベイスターズは、横浜スタジアムを継続して使用することになるようだ。恐らくはそれが、売買成立のポイントになったのだろう。12球団の本拠地で、この横浜スタジアムほど球団に冷淡な球場はない。何しろ、入場料収入の4分の1と、球場内の物品販売や看板広告の収入すべてが球場会社に入るのだ。横浜ベイスターズがいくら努力して観客を呼んでも、収益の3割以上を「大家」に取られてしまうのだ。ただ、横浜スタジアムの鶴岡博社長は「今度の親会社は球団運営に積極的に取り組むはず」と語っている。球場側もTBSの経営姿勢に疑問を持っていたのだ。「新たな球団親会社が決まれば、球場利用契約見直しを含め前向きに話し合いたい」とのこと。まともなビジネスの話になってほしい。

球団買収は、オーナー会議での4分の3以上の承認が前提だが、同業の楽天などが「DeNAは“出会い系”を運営している」と反対の意向を示している。反対する球団は3球団以上にはならないようで、承認はされそうだが、この異議申し立ては腑に落ちない。DeNAは、今は出会い系サイトを運営していないはずだ。ただし、ITベンチャーの多くは、アダルト系のパッケージソフトやシステムを販売して成長してきた。また、DeNAのメインの商売であるSNSで“出会い系”的な交際をすることは可能だ。利用者のモラルの問題まで企業の責任にしたら、IT企業の大部分はブラックだということになる。今でこそ日本経済をけん引しているIT企業だが、叩けば埃が出る会社が多いのだ。楽天はECだからアダルトはやっていない、と言いたいだろうが、コンプライアンス上問題のある取引も多々あった。

VHS、DVD、インターネット。新しいメディアをオタクだけでなく一般に普及するに当たっては、アダルトが大きなけん引力となった。商店街のおじさんが、ビデオデッキを買ったのは、嫁さんに隠れて隣の店のおやじから貰ったビデオを見るためだった。

いつも思うことがある。スポーツ紙は大きな紙面を使ってアダルトな記事を毎日掲載している(そのエネルギーたるや大変なものだ。頭がおかしくならないか、と思う)。中日スポーツ、スポーツ報知はアダルト記事をやめたようだが、この2紙も含め、風俗関係の広告はしっかり載せている。風俗とは要するに売春、売春まがいのサービスを提供する店だ。また、裏DVD販売などの広告も多い。これは問題ないのだろうか?

球団は、明らかな違法行為である売春、わいせつ図画販売を行っている可能性のある広告で収益を得ているスポーツ紙の記者をなぜ球場内に入れ、取材を許しているのか。DeNAの昔の脛の傷をつつくくらいなら、なぜスポーツ新聞のブラックな部分を指摘しないのだろうか。また、親会社である全国紙、ブロック紙も、なぜスポーツ紙の反社会的な営利活動を許しているのか。

いい年をして、“大人の世界は汚れている”などという気はないが、これを見ても、今回のパリーグ3球団のDeNA買収へのクレームは「単なる嫌がらせ」に過ぎないのは明白だ。