“大阪人は逮捕するぞ”

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関西人にとって、東京で最も“アウェー”を感じる街は港区ではないかお金持ちの住む町は、関西にも芦屋とか帝塚山とかいろいろあるが、単なる屋敷町ではなく、大企業の本社があり、海外公館が賓館が立ち並び、しかも日本を代表する要人、VIPが住む町というのはここしかない。“日本の応接間”という感じだ。下手に大阪弁でも使おうものなら、逮捕されないかと思ったりする。歩いてみればわかるが、そういう“超都会”にもかかわらず、港区はアップダウンが激しい。コンクリートで完全にコーティングされた街だが、昔は山あり谷ありだったのだな、と思わせる。
さて、港区にも地味寺は数多い。
写真のお寺は円福寺(曹洞宗)、どこにあると思いますか?
このお寺はグランドプリンスホテル高輪の北隣にあるのだ。恐らく近世に建ったと思われる建物は簡素だが、禅寺らしい雰囲気が漂っている。高輪には赤穂浪士ゆかりの泉岳寺をはじめたくさんお寺がある。昔は皇族や大名の御屋敷が並んでいたが、そうした方々の菩提寺だったわけだ。そういえば、プリンスホテルは旧皇族竹田宮のお屋敷跡に建っている。だから「プリンス」と名付けられたのだ。
高輪には、こんな地味寺も。松光寺(浄土宗)。明治学院大学の東側にある。


寺の伝承では織田信長が桶狭間の戦いをしている頃に浄土宗の僧侶がこの地に建てたという。つまり江戸、東京ができる前から立っているお寺。この寺も山形上山松平家の菩提寺だ。境内には殿さまのお墓も立っている。宝篋印塔という形。


まるで時代から取り残されているようだ。

高輪から北東に歩くと、東京タワーが見えてくる。昔は芝という町は増上寺という大きなお寺があることで知られていた。今も増上寺は賑わっているが、その周辺には大小さまざまなお寺が点在している。入母屋造の屋根をいただいた古めかしいお寺もあるが、中にはこんな寺院も。観智院(浄土宗)。



お寺の表札がなければ、一般の住宅かと思ってしまう。昭和20年3月10日の東京大空襲でこのあたりは焼け野原になった。建物はすべて戦後のものだが、それも65年もたてば老朽化する。恐らくこのお寺は戦後二代目か三代目の建物だ。寺族の方々の居住性と、檀家の方の集まりやすさを考えてこういうお寺になったのだろう。でも、お寺であることはしっかり主張している。これも現代のお寺の一つのありようだ。

さて、地下鉄御成門周辺といえば、広壮な建物が立ち並んでいるが、このど真ん中に恐らくは誰もお寺だとは思わない地味寺が建っている。


表札には「松蓮社」と記されている。お寺といえば○○寺か○○院が普通。○○社なんてお寺、聞いたこともない。でも、浄土宗では僧侶が「○蓮社」という名前を持つ。この建物は浄土宗のお寺なのだ。松蓮社は三代将軍徳川家光の長女千代姫の菩提を弔うために建てられ、芝増上寺の高僧が住持した。昔は広大な境内を持つ大寺院だったが、今は大都会の真ん中でひっそりとたたずんでいる。


このお寺、私のとっておきの地味寺の一つだったのだが、今年の3月10日(震災の前日だ!)、NHKのブラタモリで紹介されてしまった。少し残念。



写真と文/広尾晃「地味寺」アーカイブ運営






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