この秋、めでたく100歳になった医師の日野原重明さんや、昨年、99歳で処女詩集『くじけないで』を出した詩人の柴田トヨさん。高齢化社会とはいえ、ここまで現役でいられるのは敬服ものです。活躍する場も生き様も違いますが、人生の大先輩である二人の言葉に胸を打たれる人は多いのではないでしょうか。

 そして新たに、93歳にして"スーパー老人"界の新人王候補が誕生しました。青森県に住む、竹浪正造さんがその人です。今年5月にテレビ朝日の『ナニコレ珍百景』に出演したのが縁で、『はげましてはげまされて』と題した本を出版。発売1週間で早くも12万部を突破。

 正造さんが今回本にまとめたのは「まんが絵日記」。昭和29年、36歳のころから毎日書いているもので、書き溜めた大学ノートは2300冊近く。日々の生活のワンシーンを切り取ったものばかりです。昔は漫画家になりたかったという正造さん。独特のほのぼのとしたタッチは、ご本人のあたたかい性格を表しているかのよう。絵を見ただけで懐かしい気分になる人も多いかもしれません。

 書き始めた頃の日記を見てみると、正造さん夫妻の日常着は和服。『三丁目の夕日』よりも前の時代の日本で、家族5人仲睦まじく暮らす様子が描かれています。

 子どものネタが多かった昭和30年代の日記を見てみると、青森地方でテレビが初公開されたり、家に壁掛けの電話機が来たり。昭和を振り返る貴重な史料として読むこともできそうです。

 その後、孫とのエピソードが増える昭和40年後半へと時代は移ります。最愛の奥様とのエピソードや平成に入ってからは、頭の毛の薄くなった人たちと「ツル多はげます会」を結成。満面の笑みで記念撮影に臨むメンバーを描き、「勿論フラッシュ不要」の文字を加えるところなど、正造さんのユーモアセンスが光ります。その後も、パソコンに挑戦したり、スナックのママさんに告白したり、笑いあり、涙ありの自分史、家族史はいまなお続くのです。

 人はひとりでは生きていけない。支えあうことで幸せに楽しく生きることができる。そんな当たり前のことに気づく一冊といえそうです。



『93歳の新人漫画家デビュー 「56年間の絵日記」が本に』
 著者:
 出版社:廣済堂出版
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