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テキスト系妄想メディア「ワラパッパ (WARAPAPPA )」より

 毎朝立ち寄るコーヒーショップがある。毎日同じ時間にアイスコーヒーのMをテイクアウトしている。1ヶ月くらい続けていたら、レジの女性に完全に顔を覚えられてしまった。覚えられたので、注文しなくても「アイスコーヒーのM、テイクアウトですね」と言ってくれる。ミルクとシロップを入れた状態で渡してくれて、「袋に入れますか?」という問いかけも省かれる。僕のことを覚えてくれている店員さんがレジに立っていない時でも、僕の顔をみるとその店員さんがレジの店員さんに「アイスコーヒー、M、テイクアウト、ミルクとシロップ入れる、袋いらない」という情報を伝えてくれたりもする。

1ヶ月通ったことで毎朝の注文がとても合理的になったのだ。

しばらくの間、そのちょっとしたVIP待遇に満足していたのだが、ふとある不安が頭をよぎった。

主な不安点は以下である。

1.店員さんの間で僕にあだ名がついてるんじゃないか。
2.そのあだ名が「M男(Mばかり頼むから)」だったらどうしよう。
3.凄く喉が渇いていてLが欲しい時の対処について。
4.逆にSで充分な時の対処法は?
5.これから寒い季節を迎えてもアイスコーヒーのMが出て来るのだろうか。
6.ホットコーヒーに切り替える時はどうしたらいいのか。

1と2の懸念事項については、逆の立場での経験がある。大学時代、西新宿のクラブでウエイターのバイトをしていた。そこに毎日やってくるおじいさんがいて、そのおじいさんは来ると必ず小さなカクテルグラスでジンライムを2杯飲み、ジンライムがなくなるとカラオケでぴんから兄弟の「女のみち」を1回歌う。毎日毎日、判で押したようにジンライムと「女のみち」。僕たち店員は、そのおじいさんが来ると厨房で「ぴんから割り1つ!」と声を掛け合っていた。たまに病気で来ない時などがあると、「今日はぴんから割り来ないな」と心配したものだった。

あの頃、おじいさんのあだ名が「ぴんから割り」と決まったように、20年経った今、僕のあだ名が「M男」になろうとしている。

そんなことを考え始めたら、VIP待遇を喜んでいる場合じゃないことに気がついた。
気がついたのでここ数日はコーヒーショップに寄っていない。

距離感の問題だ。
お店における店員さんとの距離感は本当に難しい。

ここ1ヶ月、仕事が立て込んでいて行きつけの飲み屋さんに行けてない。それまでは週2のペースで顔を出していたのに、突然1ヶ月のブランクを空けてしまった。お店の人も心配しているだろうと思い、「仕事が忙しくていけない」というメールを入れておいた。「来週あたり落ち着くから顔を出します」とメールを締めくくったものの、翌週になっても仕事が落ち着かなかったので行けなかった。

そうしたら、

「お仕事が落ち着きましたらよろしくお願い致します」

と、普段は気さくな口調のマスターが、敬語で短いメールを入れてきた。

1ヶ月空けたことで、別れが近いカップルみたいな関係になってしまった。
今週あたり顔を出せるかな、と思っていたけど何だか気まずい。


この1ヶ月忙しかったのは、来年2月にオンエア予定の番組を作っていたからだ。

今年の1月にNHKワンセグ2のコンペに参加した「Mr.SUMI」の第2弾である。前回はショートショートネタを色々と盛り込んだが、今回の作品は1話完結の短編が3本。作、演出、出演、編集を自分でやったのでとても大変だった。脚本の段階でイメージが伝わりづらいと指摘され、絵に描いてくださいと頼まれた。僕は絵が苦手なので断ったのだが、「絵コンテレベルで良いので」とゴリ押しされてこういう絵を描き始めた。



8カットほどこのトーンで描いたものをプロデューサーに見せたら、「絵コンテは無しで行きましょう」とあっさり言われた。

そんないざこざを乗り越えて、先日、ようやく3話分が仕上がった。オンエアは4ヶ月ほどさきなので、また近くなったら報告させてください。それまでに、行きつけのお店との関係をうまいこと修繕して行きたいと思っています。
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この記事の元ブログ: 常連客になることのリスクについて


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