織田作之助賞受賞者の西加奈子さんが愛してやまないというのが、書籍『漁港の肉子ちゃん』に登場する、肉子ちゃんとその仲間たち。8月31日に発行された同書には、肉子ちゃんという個性的なニックネームを持つ母親と、多くの仲間たちが登場します。

 「肉子」という名前は、太っているために皆が呼ぶニックネーム。本当の名前は「見須子 菊子」で38歳。1人の娘がいます。多くの男に騙された肉子ちゃんは、北陸の港町にたどりつきました。港の焼肉屋で働いており、お店ではとても人気もの。

 肉子ちゃんは小学校に通う娘のことが大好きで、名前は「喜久子」といいます。そう、母も娘も同じ「きくこ」なのです。ただ、肉子ちゃんは生まれながらに「肉子」で通っていたという佇まいをしているので、地元では同じ名前だと思っている人はほとんどいないよう。肉子ちゃんは、肉子ちゃんなのです。

 肉子ちゃんは語呂を合わせることも大好き。人の携帯電話を聞いた時や、参観日の日にちを聞いたときなんかは、「3月4日、さぁよろし、やな!」3とか4とか6とか、ややこしくしてしまったり、「8812、葉っぱ1枚アル、やな!」と、急に中国語を使ったりするのです。漢字の話をするのはもっと好きで、でも、「けものへんに交わるって書いて、狡い、って読むのやから!」こんな具合なので、「キクりん」(肉子ちゃんは娘をこう呼ぶ)はいつも戸惑うのです。「自ら大きいって書いて、臭いって読むのやから!」何が言いたいか......。

 また、『キクりんへ おきたときねてなかったらおこしてー。』肉子ちゃんの置手紙にキクりんはよく混乱させられます。

 『キクりんへ いってきまーす。かえるからね!!』
 『キクりんへ ちょっとだけよ、夜がタノしみ』

 前者は、いつも通り仕事に行くけど、いつも通り帰ってきますの意味。後者は、ちょっと買い物に行ってきます。夜ご飯楽しみにしておいてねの意味なのです。ほとんど謎かけの域です。

 そんな母親らしくない、マイペースな肉子ちゃんなのですが、ページをめくる度に、どんどん肉子ちゃんが好きになってしまうのです。肉子ちゃんにキクりんが冷静なツッコミを入れながら進んで行く同書は、絶えない笑いと癒し効果が共存した不思議な物語なのです。



『「自ら大きいって書いて、臭い」作家・西加奈子が愛する母親"肉子ちゃん"』
 著者:
 出版社:幻冬舎
 >>元の記事を見る





■ 関連記事
『夫婦ゲンカで男と女、ケンカをしかけるのはどちらが先?』(2011年9月29日08:00)
『ヤギの値段はHow much? 〜『ヤギと暮らす』』(2011年9月28日08:00)
『第2回雑誌大賞、グランプリは"糸井重里特集"の『BRUTUS』に決定』(2011年9月27日20:45)


■配信元
WEB本の雑誌