暴力、高額書籍、そして代議士

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お金を得る方法としてもっとも卑劣なものは、人を脅かし、恐怖を煽ることである。言葉の節々に暴力のニュアンスを含め、本当にそうなるかどうかはうやむやにしたまま、「金を払わないと、ろくなことがない」と脅す行為だ。この行為が暴力団の常套手段であることは、いまさら言うまでもない。

2011年10月6日付の山陽新聞によると、「政治、同和団体をかたり高額書籍を売りつけたとして、組織犯罪処罰法違反罪に問われた出版社『エス・ビー・ビー』」の元社長と元専務に対し、岡山地裁は6日の判決公判で、元社長に懲役5年、元専務に同4年を言いわたしたという。

この出版社の商法を簡単に説明する。まず、領土や公安問題に関する高額の書籍を編集・発行する。さまざまな個人や組織(公的・私的を問わず)に電話で営業をかけたり、書籍を送りつける。電話営業で購入を拒んだり、送った書籍の代金を払わない場合、右翼団体や同和団体に脅されるというようなことを伝え、相手をねじふせる。

逮捕当時(2010年1月21日)の共同通信は、容疑が「岡山県の企業などに電話をかけ、『買わないと直接うかがいます』などと言い、本を売りつけ、数十万円を脅し取った疑い」だと報じている。さらに、記事は「捜査関係者によると、社員らは嘘の同和団体を名乗り、1冊5万円前後で販売。同社の口座などを調べると、書籍代として数十億円の入金が確認されている」と続く。

エス・ビー・ビーの本をオンライン書店ビーケーワンで検索してみた。『日本経済再生大綱 八〇〇兆円大借金国家を救う方法 こうすれば中小企業・地方にも金が回る!』(2003年)が39000円、『日本の領土 北方領土・竹島・尖閣諸島のすべて 』(2005年)が48000円、『大東亜共栄圏の時代 興亜を目指した日本とアジアの歴史』(2006年)が48000円(価格はすべて税込み)である。

すべて発行元はエス・ビー・ビー。出版元は、上記の1冊目が「政治経済研究会」、2冊目と3冊目は「政治・経済研究会」となっている。前者は、山下八洲夫元参議院議員(民主党)が代表を務めていた政治団体であり、役員には吉永祐介元検事総長の名前も見られた。2007年4月3日付の朝日新聞には、「出版社は売り上げから、山下氏の政治団体に印税名目で1億3000万円余を支払っていた。政治団体側は『出版には携わっていないが、名義貸し料として受け取っていた』と授受を認めた」と記されている。

その後、エス・ビー・ビーによる書籍販売のあくどさが世間であからさまになったことから、「政治経済研究会」は名義貸しをやめた。 そして、エス・ビー・ビーは「政治・経済研究会」というギャグのような名前の政治団体を設立し、「政治経済研究会」の威光を名前の上では引き継ごうと試みたのである。

つまり、エス・ビー・ビーは、「政治家ら有力者の名前をバックボーンにして信用を得る」「高額書籍を売りつける」「買わなければ、『右翼だ』『同和だ』と脅す」という手法で、法外な値段の書籍を不特定多数の個人や組織に販売していた(押し売りしていた)、ということになる。

なんだ、この悪徳商法をよく見ると、商品の値段は違うものの、暴力団が地元の飲食店におしぼりを売りつける手法と酷似しているではないか。繰り返すが、お金を得る方法としてもっとも卑劣なものは、人を脅かし、恐怖を煽ることである。そして、その方法を使って人から金を巻き上げているのは暴力団だけではない。そのことを、私たちは知っておいたほうがいいかもしれない。

(谷川 茂)