様々な本が刊行されているビジネス書。書店の書棚を見てみると、帯に写った様々な著者の顔を見ることができるだろう。しかし、その一方でビジネス書の勢いが一時期に比べて落ちてきている話もあるが、実際の業界の動きはどのようになっているのだろうか?
 今回、新刊JPで開設された「ビジネス書検定」の監修者で、『ビジネス本作家の値打ち』の著者である水野俊哉さんとブックナビゲーターの矢島雅弘さんの2人が対談。ビジネス書の“現在”を語ってもらった。3回目となる最終回はビジネス書を選ぶ際の注意点を語ってもらった。

■ビジネス書を選ぶとき、タイトルには気をつけろ!?

矢島「読み手としては、ビジネス書を選ぶときにどんなことに気をつければいいですか?」

水野「これは自分の中の選ぶ目を高める必要がありますね。出版社はタイトルで売り抜こうとする発想があって、最近売れた本の傾向として気になったのが、例えばビジネス雑誌を読んでいるような方だけではなく一般の方にも読まれている『バカでも年収1000万円』や、年代別でターゲットにあてる本、例えば大塚寿さんの『40代を後悔しない50のリスト』がヒットして、類似したタイトルの本が何十冊も出ています。
特に年代別の本はもしかしたら本に書いてある中身とタイトルが合っていない可能性があります。本来違うタイトルだったかも知れないのに、「今は年代本にしておいた方がいいのではないか」という力が働く可能性がありますから。
あとは、最近ブレイクしている千田琢哉さんに関しては、もともときこ書房で千田さんの本をベストセラーにした有名なビジネス書編集者の方がかんき出版に移って、そのときに千田さんが先に原稿を書いて、ご祝儀としてお渡ししたらしいんです。そして、その本を出したところベストセラーになって、以降、十何社から一気にオファーがくるようになったということを聞きましたね。
この業界は自称カリスマ編集者も多いんですけど、中には1割くらい、やっぱりその方が手がけると、確実にクオリティが高くて、売れる本が出るということもあります。だから、ちょっとマニアックですけど、その方々が手がけた本を読んでみるという方法もありますよね。
また、女性の読者の方であれば、同じ女性の方が言っていることのほうが、同じことを説明していても感情移入しやすいというか、共感しやすいっていうのがあると思います。昔はビジネス書も男性社会で、女性で本を書きたいという方がいても参入できないということもあったと思うのですが、今は本を出している女性の方も多いので、これだったら私も出せるのではないかということで、どんどん勇気を出してチャレンジしている方が多いと思います。だから女性の著者の方の本も注目だと思います」

矢島「今の水野さんのお話を聞きつつ、僕も自分なりに最近のビジネス書を振り返ってみたのですが、すごく細分化されてきているように思いますね。僕自身、本を人に紹介する仕事をしていますから、色んな本を読んでいますが、本当に色んな業種の方がいろんな人に向けて書いているように思います。そういう意味では、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が大ヒットしたのは驚きましたね。まだ、こんなにたくさんの人に読まれる本があるのか、と。『もしドラ』がビジネス書かどうかというのは評価がわかれるところではありますが」

水野「ですから、セールスの傾向としては、一部のショートヘッドとロングテールじゃないですけれど、一部の本は初期の段階から注目を集めることによって、どんどんプラスのフィードバックが働いて、色んなメディアで取上げられて一人勝ちするわけですけど、(全体の)売上の90%くらいを占めているそれ以外の本というのは、ニーズが細分化していているという、両極端な傾向にあるでしょう。そして、どれがショートヘッドになるかというと、それはわからない(笑)」

矢島「そうですね(笑)。だからこそ、色んな本が出るわけですね。水野さんは、今後のビジネス書業界はどうなっていくと考えていますか?」

水野「表向きはそんなに変わらないと思いますね。例えば1980年代くらいの日本の経済と今の経済の状況というのがどのくらい大きく変わったのかということになると、ビジネス書もバブルが崩壊したといってもビジネス書業界がなくならない限りは、これからも新刊が同じように出てきますし、全体のパイは少しずつ減っていったとしても、その中で一部のものすごく売れる本もあれば、そこそこの本がいっぱい出ると思います。
その中で、自分としては、売れる企画ありきではなくて、自分の書きたい本とか、求められているであろう本など、同じことをやろうとするのではなくて、違うことにも挑戦していくべきかなと。
例えば、お笑い芸人さんとかにしても一時ネタ見せ番組が増えたとき、自称・お笑い芸人みたいな人たちがたぶん何百人もデビューしたと思うんですけど、そういった方はほとんどいなくなっていますよね。そういう人たちは言うなれば1冊だけ本を出した人たちと一緒であって、なんとなく一発ネタがはやっているから同じことをやろうといことでは、いずれ忘れ去られてしまいます。だから、そういうことではなくて、自分で一番面白いと思っていることや、やりたいことを突き詰めていくというのはビジネス書でも同じだと思います」

矢島「専門性のあるビジネス書作家が求められているというのは、僕もそう思いますね。一発屋が多い現状は確かにあると思います。ですが、今後ビジネス書、日本の経済とあわせて不況は免れないと思いますし、その中でも面白い本が出てくることを期待したいですね。今日はありがとうございました」

(了)

■水野俊哉さん
1973年生まれ。大学卒業後、ベンチャー起業するも、個人保証を入れていた3億円の負債を抱えて取締役を解任。
その後、絶望から再生し、経営コンサルタントとして数多くのベンチャー企業経営に関わりながら、世界中の成功本やビジネス書を読破、成功法則を研究する。現在は著述を中心に、セミナー、講演などの活動も行なっている。
著書は、シリーズ10万部突破のベストセラーとなった『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社ペーパーバックス)の他、『「法則」のトリセツ』(徳間書店)、『お金持ちになるマネー本厳選50冊』(講談社)、『徹底網羅!お金儲けのトリセツ』(PHP研究所)など多数。
ブログ : http://d.hatena.ne.jp/toshii2008/

■矢島雅弘さん
1982年11月29日生まれ。埼玉県出身。
新刊ラジオのパーソナリティとして、これまで約1500冊の書籍を紹介してきた。
モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。


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