様々な本が刊行されているビジネス書。書店の書棚を見てみると、帯に写った様々な著者の顔を見ることができるだろう。しかし、その一方でビジネス書の勢いが一時期に比べて落ちてきている話もあるが、実際の業界の動きはどのようになっているのだろうか?
 今回、新刊JPで開設された「ビジネス書検定」の監修者で、『ビジネス本作家の値打ち』の著者である水野俊哉さんとブックナビゲーターの矢島雅弘さんの2人が対談。ビジネス書の“現在”を語ってもらった。今回はその2回目をお送りする。


■名刺代わりに「本」を使うビジネス書著者たち

矢島「なるほど。では、良い本と売れる本というところで、ここ最近、ビジネス書は売れるけれど、内容の質は下がってきているのではないか、という主張についてどうお考えになっているのかお聞かせ願えますでしょうか」

水野「私自身は売れる、売れない、良い、悪いという表面的な分類はあまり好きではないのですが、ビジネス書の編集部の傾向として、後追いの発想というのが非常に多くを占めているように思います。もちろん、常に売れる本を模索することは当たり前なんですが、安易に売れた企画に飛びつきすぎる、と。たとえば課長の本が売れると、『課長の手帳術』だ、『課長の朝飯』だ、と。もちろん朝飯なんていうのはないですけど(笑)。
そういう形で、売れた企画に飛びつきすぎる。それが行き過ぎてしまうと、パクリ癖というか、誰かが言ってた面白そうなことをすぐパクってしまったりとか、これは本来はいけないことなんですけど、「赤信号みんなで渡れば怖くない」的にパクったらパクり返すという空気が生まれてしまって、新しいものが出てきにくくなるんです。
ですから、売れる、売れないという発想ではなくて、『このメッセージを世に発信したい』、とか『こういうことが書きたい!』という発想で執筆しないと、ビジネス書全体のクリエイティブのレベルが下がってしまい、読書が好きな人たちからはより倦厭されてしれてしまうのではないかと思うんです

矢島「ふつう、本は著者と編集者の共同関係で出来ていくと思うのですが、良い本を作る上でその二者の力関係はどういうのがベストだと思いますか?」

水野「単純な見方をしますと、書き手側の問題がありまして、別のゴーストライターに執筆を頼んでいる場合が多いですね。また、ビジネス書を書きたいという人の中には、何かを伝えるために本を書きたいという人ももちろんいますけど、ただ著者になりたいという人が多く、実際のところ7割くらいは占めていると思います」

矢島「そんなに! つまりは名刺代わりに本を使うという目的ですね」

水野「そうですね。たとえば編集者に中身を決めてもらって、そのテーマに沿って自分がしゃべって、それを誰かがまとめてくれる形で本が出れば嬉しいと思っている方も多いですから、編集者との関係はそもそも本来の関係ではないことが多いですよね」

矢島「つまり、書きたいものを持ち込んで、編集者と一緒に練り直していきながら本を出すという旧来のスタイルがなくなってきている」

水野「そうです。こちらはもう少数派です。『最初からライターをつけて欲しい』というケースも多いのではないでしょうか」

矢島「出版社側はビジネス書を出したいし、ビジネス書作家になりたい人は『とりあえず本の著者になりたい』という、そのニーズがマッチしている状態ですよね」

水野「全部が全部ではありませんが、そういう傾向はあると思います。たとえば、今、フェイスブックの中に著者コミュニティというのがあって、そこには400人くらい集まっているようなのですが、その中のほとんどの方は1、2冊しか出したことがないんですよね」

矢島「まさにバブル的な兆候ですね」

水野「別に集まるのが悪いとは思いませんが、結局アマゾンキャンペーンの応援合戦のようなものが発生したり、そういうものを仕切ろうとする人間が必ずでてくる」

矢島「では、真似ではないエポックメイキングな本で、近年で『これはいいぞ』という本はありましたか?」

水野「エポックメイキングというと難しいですが、手前味噌になりますが、次の私の新刊で『幸福の商社 不幸のデパート』(10月25日刊行/大和書房)は、私の12作目の本となるのですが、作風もがらりとかわり、ビジネス私小説というか、今までにあまりなかったタイプのビジネス書になっています」

矢島「今までの水野さん本は、客観的な分析をしながら、ビジネス書を茶化した本が多かったように思いますが、今作はサブタイトルが『僕が3億円の借金地獄で見た景色』とのことで、もしかしてノンフィクション的な話でしょうか…?」

水野「そもそもは私が借金3億円から復活して、なぜ今、上手くいってるのか? その理由を教えるという企画で、私がしゃべったことを秘書がレジュメに起こしてまとめいくというスタイルだったのですが、去年の年末くらいに、読者の心に届く企画が少なくなっているということに気づいたんです。
そこで、私が感じたことを時系列的に並べていって、そのとき何を感じ、どう行動したのかをちゃんと伝えたいと思いまして、一回原稿はできていたのですが、それを全部捨てて、ゼロから書き直しました」

第3回「ビジネス書を選ぶとき、タイトルには気をつけろ!?」に続く

■水野俊哉さん
1973年生まれ。大学卒業後、ベンチャー起業するも、個人保証を入れていた3億円の負債を抱えて取締役を解任。
その後、絶望から再生し、経営コンサルタントとして数多くのベンチャー企業経営に関わりながら、世界中の成功本やビジネス書を読破、成功法則を研究する。現在は著述を中心に、セミナー、講演などの活動も行なっている。
著書は、シリーズ10万部突破のベストセラーとなった『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社ペーパーバックス)の他、『「法則」のトリセツ』(徳間書店)、『お金持ちになるマネー本厳選50冊』(講談社)、『徹底網羅!お金儲けのトリセツ』(PHP研究所)など多数。
ブログ : http://d.hatena.ne.jp/toshii2008/

■矢島雅弘さん
1982年11月29日生まれ。埼玉県出身。
新刊ラジオのパーソナリティとして、 これまで約1500冊の書籍を紹介してきた。
モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。



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