私たちが環境問題に対してできること―枝廣淳子さんインタビュー(2)

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 3回にわたってお送りしている『私たちにたいせつな生物多様性のはなし』(かんき出版/刊)著者・枝廣淳子さんへのインタビュー第2回目。
 枝廣さんはアル・ゴア元米国副大統領の『不都合な真実』の翻訳者としてご存知の方も多いかも知れませんが、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)( http://www.japanfs.org/ja/ )代表を務めるほか、環境問題に関する考え方や知見を環境メールニュース( http://www.es-inc.jp/lib/ )で広く提供するなど、日本を代表する環境活動家の一人として注目されています。そんな枝廣さんが上梓した『私たちにたいせつな生物多様性のはなし』は「生物多様性」とは何か、それをないがしろにしておくとどうなるのかなど、地球と私たちのつながりを知ることができる一冊となっています。目によく見えない「生物多様性」をどう考えればいいのか。
 今回は「第6次絶滅期」や「生物多様性」に対しての企業の動きについてお話をうかがっています。

―中編:地球は21世紀半ばに崩壊する…それって本当?―

―本書を読ませていただくなかで、非常に怖いなと思うところがありました。それは、人口の増加などによって、地球に大きな負担をかけてしまい、もうそれは限界まで来ているという部分です。本書では「第6次絶滅期」や2050年の生態系についても言及していますが、今のままでは動植物だけでなく、人間たちすら滅んでしまう可能性があるという事実はあまり知られていないと思いますが。

「そうなんです。私自身、それはなぜだろうってずっと思っていたのですが、おそらくその理由のひとつは、もちろん意識を高くもって活動している方もいますけど、一般の人たちは見たくないものは見ない、目を閉じてしまうというところがあるからだと思います。
自分が生きている間はきっと大丈夫だと仮定して、いつか誰かが素晴らしい解決をしてくれるだろうという幻想を抱く。これまで通りを続けている方が楽ですよね。立ち止まって考えたり、悲惨な現実を見てしまうと自分を変えなければいけなくなる。変えるということはとても面倒なことですから、すごく大事な問題だとうすうす感じつつも、見て見ぬふりをしているということなのではないでしょうか」

―人口増加や資源、そして食料も将来的に問題になると思いますが、地球の環境システムがもう限界近くまできていることを、もう少ししっかりと学校などで教えても良いのかなと思ったりもします。

「そうですね。一番基本的なこと、つまり全てはつながりの中で支えあって生きているということを、学校では教えていないですよね。例えばリサイクルの仕方とか、ペットボトルをどう再生処理するのかとか、そういったことは学校で習いますが、これはテクニックの部分です。それ以前に、自分と環境、地球とのつながりについてしっかり教えるべきだと思いますね」

―なるほど。

「今、メンタルな部分で疲れてしまっている人が多くなっていると言われていますが、自分は生きとし生けるもの――そうでないものも含めて――、自分の身のまわりのさまざまなものの中で生かされているという感覚があれば、少しは救われるのではないでしょうか」

―本書の中では、生物多様性や自然環境への問題に対しての取り組み方にも触れていますが、改めて私たちが個人としてできることはなんでしょうか。

「一番大事なことは、自分が買ったり、食べたりするものがどこから来たのか、想いを馳せることです。それらは必ず地球のどこかにつながっているはずなんです。お肉はスーパーでつくられているわけではありませんよね。それこそ、先ほどの子どもたちへの教育の話で言えば、つながりを教えたり、見せたりしないことが多いですね。これはアメリカの幼稚園での笑い話ですけど、園児に鶏の絵を書かせたら足が6本あったそうなんです」

―どうしてですか?

「なぜかというと、ファーストフードのフライドチキンの1パックが6個入りだからですよ(笑)もちろん冗談話なんですけどね」

―でも、ちょっとゾッとしますよね。

「それくらい子どもたちが自然から切り離されてしまっているということなんです。フライドチキンがもともとどういうものなのか、どこから来たのか、想いを馳せることで、そのつながりを感じることができるのだと思います。それが最初だと思いますね。
そして、そのつながりが見えてきたら、できるだけ地球や生物多様性に対する悪影響を少なくなるように買い物をしたり、食べ物を選んだりする。そうすることで変えることができます。私ひとりだけやっても意味がないのでは…と思うかも知れないけれど、実は私たちが一生涯で買い物する額ってすごくて、サラリーマンの可処分所得で1億円から2億円くらいになるらしいんです。そのくらいのお金を、環境を守る方に使うのか、そうではない方に使うのか、大きな違いになりますよね。
また、地球と私たち生活者の間には企業や産業界が入っています。食べ物も生産者がいて、加工会社がありますよね。環境に良いやり方をしている企業や生物多様性を守る活動をしている企業を応援して、できる限りそういうところのものを買う。これは今日からでもできることだと思います」

―企業のお話が出ました。今夏の節電もそうですが、企業が協力をしないと生物多様性の保護は成立しないと思いますが、近年の企業の取り組みについて、枝廣さんはどのように評価されていますか?

「ここ何年かですごく大きく変わってきています。多くの場合、温暖化対策が切り口になっているとは思いますが、ほとんどの企業で以前よりも改善されていますね」

―それはどうしてでしょうか。

「そうしないと企業として生き残れないということが社会的条件になってきているのでしょう。CO2を大量に排出している企業の製品は買わないとか。日本ではあまり聞かれないですが、欧米などではよくあります。ランキングも出ますからね。でも、日本ではそのような背景がなくても、企業心理としてちゃんと対策をしようという姿勢はあります。
ただ、生物多様性への対応として何をしたらいいのか分からないとか、やっても効果が分かりにくいという声は聞かれます。また、環境対策の部署の方々は分かっているけれどどうしてそうすべきなのか経営層に上手く説明できないということも多いですね」

―では、この生物多様性の問題をこのまま放置してしまったとしたとき、枝廣さんがお考えになる最悪のシナリオはどのようなものでしょうか。

「本書ではイースター島の悲劇を例にあげているのですが、イースター島って東太平洋に浮かぶ孤島なんですね。だから、人々はその島の中で全てを調達しなければいけなかった。ただ、自然が豊かなので生活には困らなかったわけです。
ところが、人口が増えて森林の伐採を進めていったところ、生物多様性がぼろぼろになってしまって逆に人間が生きられなくなってしまい、人口がガクンと減ったんです。この例は今の地球にも通じるところがあると思います」

―「第6次絶滅期」のお話にも通じますし…。

「同じなんですよ。私はそうした最悪のシナリオまでにはいかないと思っています。ただ、現状の問題に気がついても見てみぬふりをし続けていたら、今のような暮らしがいずれできなくなって、飢餓であるとか流行病であるとか、いろいろな形で人間が死んで文明が崩壊していく…ということはありえるのではないでしょうか」

後編「日本はもっと自然環境の豊かさを誇るべき」に続く



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