文庫化以来売れ続けているミステリー小説

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 ミステリー小説の面白さといえば、やはり刑事なり探偵なり、つまり事件を追う者がその核心へと向かうプロセスだろう。しかし、そのプロセスに臨場感やリアルさを吹き込むためには、まずは登場人物たちを印象的に描かなければならない。
 その視点で見て、優れたミステリー小説だと言えるのが、樋口有介の長編群像劇『ピース』(中央公論新社/刊)である。2006年に刊行され、2009年に文庫化された本作だが、この作品がここ最近、大手書店を中心に売れ続け、半年で25万部を突破したという。
 
 物語は、埼玉県北西部の、元警察官のマスターと、マスターの甥の青年が切り盛りするスナック「ラザロ」の近辺で起きた連続バラバラ殺人事件で幕を開ける。二人目の被害者が店の従業員だったこともあり、マスターや店員をはじめ常連客達も事件の成り行きをうかがうが、やがて三人目の犠牲者が出てしまう…。
 この事件を追うのは県警のベテラン刑事である坂森。三人の犠牲者の間に共通点を見出せず、事件は難航するが、やがてあることをきっかけに死んだ三人を結びつける一つの事実が浮かび上がる…。

 あらかじめ断っておくが、この作品には派手なトリックや仕掛けは出てこない。しかし、登場人物たちの心理や行動、また情景や景色を執拗なまでにじっくりと書くことで、物語としての豊かさやリアリティを獲得しているのである。この点では松本清張的だと言えるかもしれないが、本作の場合はリアリティに加え、どこかユーモアを感じさせる文体で書かれている。

 人には誰にでも過去があり、良いことも悪いこともそれぞれの過去を持った人間が交差したり、同じ場所に集まることで起こるのであるが、たとえどんなことがあったとしても人はまた人を求めてしまう。そんな人間の悲しさと愛おしさを堪能することができるのは、著者の丁寧な描写のおかげだろう。
(新刊JP編集部)


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