コンバインドサイクルで運用中の川崎天然ガス発電所。この効率に優れたシステムの発電所が、東京都にも建設されることが決定

写真拡大

 9月13日、東京都の猪瀬直樹副都知事が「東京都天然ガス発電所」の建設プロジェクトを発表した。都の説明によると、この発電所の発電量は 100万kw。第3セクターやPFI(民間資本を活用した社会資本整備)方式で事業を立ち上げ、公費の投入なしで総建設費1000億円を調達。すでに発電所用地として東京湾の中央防波堤外側埋立地など5ヵ所をリストアップ済みである。

 この「東京都天然ガス発電所」の意義について、作家の広瀬隆氏はこう語る。

「やや遅きに失した感はありますが、都の動きは大賛成です。何よりも、こうした発電所を増やせば、東京都が供給を受けて消費している新潟県の柏崎刈羽原発は不要になりますから」

 かねてから、都会は自らの豊かさのために、原発のリスクを地方に押しつけていると批判されてきた。つまりこの発電所は、その状況を少しでも変えようという動きの第一歩なのだ。

 そしてもっとも注目される点は、コンバインドサイクルと呼ばれる発電方式。これはガスタービン、蒸気タービンのふたつを組み合わせたもので、まず天然ガスを高温で燃やしてガスタービンを回す。さらにその際に出る排熱で水を蒸気に変え、今度は蒸気タービンを回す。このふたつを合わせた発電効率は、原発の約30%、蒸気タービンだけを利用する通常の火力発電の42%を大きく越える60%近く。非常に効率に優れた発電方式となっている。

「しかも建設費は原発の4分の1。用地も4万から6万平方mとコンパクトで、原発や風力発電のように広大な敷地を必要としません。またコンバインドサイクル発電は中型の発電機をズラリと並べることによって、起動からわずか1時間で最大出力に達します。機動力に富んでいるんです。刻々と変化する真夏のピーク電力にきっちりと対応できます」(前出・広瀬氏)

 加えて、燃料である天然ガスの埋蔵資源量は数百年分もあるとされており、燃料不足を心配する必要もない。しかも、その天然ガスは東京湾や房総半島の地下など、南関東一帯に大量に眠っているのだ。

「南関東ガス田と呼ばれる東京、千葉、茨城、埼玉、神奈川にまたがる120km四方のエリアに、地下水に溶け込んだメタンガスが大量に蓄積しています。千葉県茂原市九十九里地域などは、天然メタンガスを含む地層が地表近くにまでせり出しているため、自宅敷地内にガス井戸を掘り、そこから取り出したガスで風呂たきや煮炊きをしている民家もあるほどです」(ジャーナリスト・有賀訓氏)

 将来、東京湾からこの天然ガスを掘り出すことが可能となれば、エネルギー自給率が一気に上がる。まさにエネルギーにおける「地産地消」の実現だ。4年後の完成を目指し、プロジェクトは動き出した。

【関連記事】
中規模火力発電所に匹敵。東京都“ゴミ発電”が電力不足を救う?
原発燃料再処理と自然エネルギー実用化。どちらもコストは約50兆円
太陽光、風力、地熱、バイオマス。“脱”原発を担う自然エネルギーの可能性と問題点
自然エネルギー大国への必須要素「スマートグリッド」とは?
キロワット当たり5.3円が実は10.7円?「原子力発電は低コスト」というウソのカラクリ