俳優・高岡蒼甫のツイッター発言に端を発したフジテレビバッシングは中国でも話題になり、現地メディアにコメントを求められたというコラムニスト加藤氏。今回の一連の騒動、“中国でもっとも有名な日本人”の目には果たしてどのように映ったのだろうか?


■僕は日本独自の文化を愛していますが、それと他国の文化を排除することはまったく別の話。無意味な批判はやめましょう!

 最近、日本では韓流ブームへのバッシングが話題になりましたが、中国のメディアにもこの件は注目されていて、ぼくもコメントを求められることがあります。中国でも韓流ドラマは人気がありますからね。

 フジテレビを擁護するわけではありませんが、この問題についてまず確認しておきたいのは、テレビ局は「韓流ドラマは視聴率が取れる」から放送しているということ。ビジネスとして視聴率が取れそうな番組を選び、スポンサーを獲得するというのは当たり前のことです。

 それを行き過ぎたナショナリズムというのか、ただ韓流が気に入らないからやめろというのは腑に落ちません。文句を言うのはかまいませんが、どうせならテレビ局の社長に直談判すればいい。その際には必ず「自分たちでいいモノを作ったから、韓流をやめてくれ」と、代案を持っていくべきです。単に批判だけするのでは筋が通りません。「だったらおまえがやれ!」という話ですよ。

 日本には独自の文化があって、ぼくはそれを愛し、誇りに思っています。

 一方、韓国の文化が日本に入ってくるのも歓迎です。韓国文化の流入は、日本にとってもいい刺激になるはずだからです。

 おそらく今回の件で声を上げている人たちは、自分たちの文化に自信がないからこそ過剰に反応してしまっているのではないでしょうか。深層心理で脅威を感じるからこそ排他的な思いに駆られているとすれば、とても非生産的な悪循環です。

 島国の日本は“ムラ社会”で、確かに他者を容易に寄せつけない気質もあるとは思います。ですが、一方で特に明治維新後、欧米から多くの文化や技術を導入し、発展した歴史があるのも事実。これからも他国の文化を素直に受け入れることができれば、きっと次のステップが待っていますよ。

 少子高齢化や経済力の低下などで今後、日本は厳しい国際競争を強いられることになります。今こそ必要なのは、近隣諸国に敬意を払い、しっかりと手を結ぶこと。ただ手を結ぶのではなく、「共同作業のなかに競争原理を持ち込む」ことです。場合によっては、逆に「競争原理に共同作業を持ち込む」こともあるでしょう。

 わかりやすい例が2002年のサッカー日韓共催W杯です。あのとき協力しながら切磋琢磨したことで、両国のインフラ整備は進み、加えてサッカーのレベルも向上しました。

 今後は中国も含め、東アジア3国の協力が国際社会を生き抜く上で重要です。例えば、日中韓のFTA(自由貿易協定)のようなものを締結していくことも必要でしょう。

 この3国には複雑な歴史的背景がありますが、実は協力し合うにはとても相性がいいとぼくは思うんです。島国、大陸、半島という異なる風土の特性をはじめ、人口、経済力など“国家のスペック”がうまくバラけていて、互いが似通っている場合よりもいろいろな問題が発生しにくい。3国がそれぞれの個性を認め、うまく補完し合うことができれば、東アジア地域の大きな発展が期待できるでしょう。

 もし3国間の橋渡しにぼくの力が必要なら、出ていく覚悟はあります。同じアジアの仲間じゃないですか。受け入れて競い合いましょうよ。日本には甲子園の応援をはじめ、競争相手にエールを送るという世界に誇れる文化がある。なぜ韓流に限って、それが素直にできないのでしょうか。

■加藤嘉一(かとう・よしかず)
1984年4月28日生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。中国国内では年間300本以上の取材を受け、多くの著書を持つコラムニスト。日本語での完全書き下ろし初の著作『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)

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