「モンモンモン」「マキバオー」「サバイビー」など動物漫画の第一人者・つの丸。「たいようのマキバオー」で描きたかった世界とは?

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 秋華賞馬・マキバコの初年度産駒であるヒノデマキバオーが、地方競馬を舞台に活躍する競馬漫画「たいようのマキバオー」。この春からweb連載が始まり、新シリーズ「W」に突入。「みどりのマキバオー」から続く“血のドラマ”を描く漫画家・つの丸が語る、「マキバオー」の世界とは?

――短足の白馬がサラブレッドを打ち破る。前世紀最高のスポ根競馬漫画『みどりのマキバオー』の続編『たいようのマキバオー』を描くにあたって、どんなことを考えましたか?

【つの丸】前回は割と天才的なエリートの話だったんで、“たいよう”では下から這い上がってくるような話が描きたかったんです。みんなもう忘れちゃってると思うんですけど、連載を始める少し前に、高知競馬場でハルウララがブームになってたんですね。あの馬は、“負けっぱなし”がゆえに人気者になっちゃった。すごく違和感があったんですよ。「負けて喜ぶってどうなんだ?」と。

 その一方で、中央競馬ではディープインパクトという無敗の最強馬が出てきて、熱狂的ブームになっていた。“絶対勝たない馬”と“絶対負けない馬”って、格差社会の象徴だなと思ったんですよ。で、こっちのブームにも違和感があった。「圧勝し続けるって、そんなに素晴らしいことか?」と。

―― 競ってないのに「競馬」と言うな。そんな台詞(セリフ)が出てきます。

【つの丸】漫画でもそうじゃないですか。主人公が必ず勝つとわかってたらつまらない。いろんな立ち位置のキャラクターがいたほうが面白いし、作品に広がりが出る。ハルウララとディープの間にはいろんな馬がいて、いろんなドラマがあるわけですよ。僕はなるべくいろんな視点からいろんなドラマを描きたい。そう思って「この馬だったらこういう話にしよう」「こういう話だったらこの馬だ!」とか描き分けるうちに、最近どんどん主人公の出番がなくなってきているんだけど(笑)。

――ヒノデマキバオーがなかなか勝てない理由がわかりました(笑)。

【つの丸】最初の想定では、マキバオーはもっと勝たない感じだったんです。意外と勝ったな、と(笑)。

――レースで勝つか負けるかは、どう決めているんでしょうか。

【つの丸】そこが難しいところなんですよね。負ける予定が勝っちゃうときもあるし、レースの流れ次第です。マキバオーだけじゃなく、出走している全部の馬のドラマを考えて、「ここでこいつが勝ったら、次のレースはどうなるだろう?」というパズル的な感覚で描いてたりしますね。レース展開自体はだいたい決まってるというか、毎回そんなに変わったことはできないと思うんです。だから、ドラマを盛り上げることでレースを面白くするしかない。一番意識しているのは、展開を読まれたくないってことですね。読者からの「あ〜、やっぱこうくると思った」みたいな感想が一番ムカつくんで。

――ムカつくんですか(笑)。

【つの丸】自分に対してね。読者に「予想どおりだった」ってことだけは言われたくない!

――非常になめらかに物語が大きくなっていますよね。まるで最初からきれいに設計図が引かれていたのではないかと思うぐらいで。

【つの丸】全体の流れをなめらかにというのは心がけていたことではあるんです。自分でも読み返しながらバランスを考えて、毎回毎回盛り上げていくということよりも、全体の流れを大事にしています。“ジャンプ”の頃は、派手なことばっかりを毎回せっせと描いていて、一歩引いて見るとゴツゴツしたところがけっこうあったと思う。今は理想的なペースでお話が描けていると思いますね。


■世界に挑戦する話をゆっくり、丁寧に

――泥くさいスポ根のにおいは古き良き少年漫画のDNAを感じます。影響は自覚されていますか?