【宙にあこがれて】第12回 厚木CVW-5フレンドシップデイレポート
9月10日、神奈川県にあるアメリカ海軍厚木航空施設(NAF厚木)にて「CVW-5フレンドシップデイ」が開催されました。今回の「宙にあこがれて」は、このフレンドシップデイのレポートをお送りします。

アメリカ海軍第7艦隊に所属する空母ジョージ・ワシントン(CVN-73)の航空機部隊、第5空母航空団(CVW-5)のホームであるNAF厚木は、アメリカ海軍の東日本における航空の拠点です。一般に「アメリカ海軍厚木基地」と紹介されることの多い当施設ですが、正式名称は「海軍航空基地(Naval Air Station=NAS)」ではなく「海軍航空施設(Naval Air Facility=NAF)」となっています。理由は判りませんが、基地機能だけではない、ということでしょうか。これに対し、西日本の航空拠点となっているアメリカ海兵隊岩国基地は、文字通り「海兵隊航空基地(Marine Corps Air Station=MCAS)」です。

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かつて、厚木のフレンドシップデイは「WINGS」という名称で、飛行展示をともなう航空祭を2日間にわたって行っていました。戦闘機をはじめとするダイナミックな飛行展示は航空ファンの人気を集めていたのですが、その分周辺への騒音被害も大きく、2000年のWINGSを最後に飛行展示がなくなり、現在では航空機の地上展示のみとなっています。これはかつての「WINGS」パンフレット。

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毎回入場の際には手荷物検査があるのですが、今回はアメリカ同時多発テロ10年を翌日に控えていたこともあり、今までで一番の警戒態勢でした。18歳以上の人は、本籍地が記載された写真付きの身分証明書(パスポートや住基ネットカードなど)か、外国人登録証の提示を求められることに。これは国籍を確認するためのもので、日米両国以外の国籍の人物は入場できないようになっていました。今までは運転免許証でも大丈夫だったのですが、今回は国籍を確認する必要がある(運転免許証自体は日本以外の国籍でも取得できる)為、免許証に本籍地が記載されていない場合は、本籍地を記載した住民票などをあわせて提示するよう求められます。

この為、本籍が記載されていない免許証だけを持参していた人々は、正門で入場を断られており、これが非常に目立っていましたね。入場待ちの列が、施設の敷地をぐるりと取り囲むように伸び、中には2時間近く並んだあげくに本籍地が記載されていない免許証しか持ってきていない為、入場を断られたかわいそうな人も。海軍側の発表では、入場者は2万人ということでしたが、同じ関東地区で開催される航空自衛隊の航空祭での入場者数(茨城県の百里基地で15〜18万人、埼玉県の入間基地で20万人)を考えると、今回どれだけの人が入場を断られたか、おおざっぱに想像できます。個人的には並ばずにほぼフリーパスに近い状態(一応身分証明書と手荷物の検査はありましたが)だったので、ちょっと申し訳ない気分です。

さて、テロ10年を控えて警戒の厳しい中でも開催された今回のイベントは、ちょっと特別なものでした。正式なタイトルである「NAF厚木 CVW-5 CoNA フレンドシップデイ」に、それが表れています。

「CoNA」とは「Centennial of Naval Aviation(海軍航空100年)」の略。1911年5月8日、ワシントン・アーヴィング・チェンバース大佐が、飛行機設計者であるグレン・カーチスに海軍最初の飛行機となる水上機(後のカーチスA-1トライアド)の設計を依頼したのをスタートとして、今年で100周年を迎えることを記念したものです。海軍では、今年2月10〜12日にサンディエゴで行われたイベントから、12月1日のワシントンにおけるイベントまで、各地で記念イベントが行われています。今回厚木でも、小規模ながらそれに関連したイベントが開かれたという訳です。今回のタイトル(見出し)画像が公式のエンブレム(展示機体に記されていたもの)。円の中には海軍初の飛行機カーチスA-1トライアドと、最新のロッキード・マーティンF-35ライトニングII(まだ開発中)が描かれています。

という訳で、地上展示のみではありますが、CVW-5に所属する飛行隊の中でも、派手なスペシャルマーキングが施されたCAG(飛行団司令)機が勢揃いする豪華なものとなりました。

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では、ひとつひとつを見ていきましょう。まずはVFA-102「Diamondbacks」CO(飛行隊長)機のF/A-18Fスーパーホーネット。通常、機首に記された3ケタの番号(先頭の数字は飛行隊ごとに割り振られます)のうち、末尾「00」がCAG機、末尾「01」がCO機となっていますが、このVFA-102の場合は例外的に、飛行隊の番号にちなんで「102」をCO機としています。

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他の飛行隊は原則として末尾「00」のCAG機を展示しているのに、なぜこの飛行隊はCO機なのかというと、これは各航空団に1機用意される、CoNAを記念してかつての海軍機の塗装を再現した「Heritage Paint」機だからなのです。塗装のモチーフになっているのは、1970年代のF-4。機体の背中に書いてある飛行隊の番号が「VFA-102」ではなく、F-4やF-14時代の「VF-102」になっていることに気付かなければ、現行の塗装とあまり変わらないので、これが記念塗装機だと気付かない人も少なくなかったようです。太平洋戦争時のネイビーブルーとかだと、すぐ判るんですが……世界情勢次第でいつ作戦行動に入るか判らない実戦部隊では、あまり現行のものと大きくかけ離れた塗装はできないんでしょうね。

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機体に記された、アメリカ海軍航空100年の飛行隊オリジナルエンブレムをバックにポーズをとる、VFA-102飛行隊長のスティーブン・"SONIC"・ヘッジマノウスキー中佐。映画にもなった「トップガン」の卒業生でもあります。

続いて、VFA-27「Royal Maces」のCAG機(F/A-18Eスーパーホーネット)。

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VFA-115「Eagles」のCAG機であるF/A-18E。

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ここまで見てきてお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、展示してある航空機の周りに立ち入り禁止のフェンスなどを設置していません。なので機体には触り放題。自衛隊の航空祭の場合、フェンスなどで区切っている為に地上展示機の撮影では構図が限られてしまいますが、ここでは翼の下にもぐってこんな構図でも撮影できます。

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このVFA-115の機体にも「100YEARS OF NAVAL AVIATION」と海軍航空100周年を記念した文字が書かれています。また、機首にはこんなマーキングも。

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エンブレムでニューヨーク市消防局のことを書いているので、てっきり関係ある消防士の名前かと思ったら、アメリカ同時多発テロに巻き込まれて犠牲になった、当時配備されていた空母エイブラハム・リンカーンの乗組員達の名前だそうです。当時改修中で母港のワシントン州エバレットにおり、乗組員達は船を降りて、様々な場所で任務をこなしていた為、巻き込まれたのでしょう。

展示機で人気なのが、このVFA-195「Dambusters」のCAG機(F/A-18E)。ここのCAG機は、伝統的に飛行隊のモットーをもとにした「Chippy Ho!」という名前が付けられています。「Chippy」にはスラングで「売春婦、あばずれ」の意味がありますが、相手を選ばず誰とでも相手をする……というところから「相手が誰でもやってやるぜ(かかってこい)!」という意気込みを表しているんでしょうね。

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VFA-195は、今年使用機をF/A-18CホーネットからF/A-18Eスーパーホーネットに切り替えたばかり。なので、F/A-18Eになって初めてのお披露目でした。

続いてVAQ-136「The Gauntlets」のEA-6Bプラウラー(左写真)と、VAW-115「Liberty Bells」のE-2Cホークアイ(右写真)。

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電子戦機EA-6Bは退役が進んでおり、現在EA-18Gグラウラーに世代交替が進んでいます。もうじき見られなくなる機体ですね。E-2Cは航空自衛隊でも使用している早期警戒機ですが、こちらの機体は同じE-2Cでも「ホークアイ2000」という性能向上型。内部の機器も更新されていますが、扇風機のような8枚プロペラが外見上の特徴です。航空自衛隊でも、内部機器はホークアイ2000相当になっている機体がありますが、プロペラは既存の4枚のままで、外見上の区別は容易につきません。

艦隊向け輸送飛行隊VRA-30(Det.5)「Providers」のC-2Aグレイハウンドと、厚木ベースフライトの多目的機C-12ヒューロン。

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VRA-30は、東日本大震災の「トモダチ作戦」で、海軍における支援物資輸送に活躍した部隊です。厚木ベースフライトのC-12にも、CoNAにちなんだマーキングが施されていました。目立ちませんが、垂直尾翼と機体後部にCoNAのエンブレム、そして機体後部のライン下には、太平洋戦争初期まで使用されていたアメリカの国籍マーク(青丸に白星、星内部に赤い小丸)が。

ヘリコプター部隊は、機内に立ち入れるようになっていました。トモダチ作戦で遭難者の捜索・救助にも当たったHS-14「Chargers」のSH-60Fシーホークでは、搭載されているM240D 7.62mm機関銃を自由に触れたり、HSL-51「Warlords」のSH-60Fは、VIP輸送用の特別機(緑色)を展示。VIPが座る革張りシートに座ると、ちょっとエラくなったような気がしますが、機内は案外狭く、それほど快適なものではありませんね。

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アメリカ海軍と飛行場を共用する海上自衛隊も、厚木基地(海上自衛隊は「厚木航空基地」です)に所属する第3航空隊のP-3Cと第51航空隊のSH-60Kとを展示。P-3Cは海軍機と同じく、フェンスもなく自由に近づけるようになっていました。SH-60Kは日本オリジナルの機体だからか、ここだけ周りを囲ってありましたね。

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アメリカ軍のフレンドシップデイに特徴的なことといえば、部隊が製作したオリジナルグッズを各自のブースで販売するところ。パイロット達が直接店頭に立ち、飛行隊のプロモーションDVD(市販の映像ソフトにも負けない、なかなかのエンターテインメント作品に仕上がっています)やパッチ(ワッペン)、Tシャツやマグカップ、そして海外ではコレクションの定番となっているコイン(メダル)などと商品は豊富です。

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右下写真はVFA-115のグッズ。黄色いTシャツの左側、赤い縁取りの丸いパッチがありますが、これは初代の部隊パッチでデザインしたのは、あのウォルト・ディズニーです。

売店だけでなく、海軍航空100年を紹介するブースもありました。下に見える模型の飛行機は、日本人のコレクターがこの展示の為に貸し出したもの。

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写真パネルの中段左端に見える人物が、海軍航空の父、チェンバース大佐です。その右隣に見える写真は、海軍初のパイロットとなるセオドア・エリソン大尉がカーチス飛行学校で学んでいる頃に撮影されたもの。

売店でのオリジナルグッズ販売だけでなく、パイロット達は気軽に記念撮影に応じるなど、サービス満点です。

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左写真のVAQ-136では、操縦席まで登ってパイロットとの記念撮影ができました。この飛行隊のEA-6Bは、機首に「攻」の漢字が書かれているのが特徴的ですね。……ちなみに、機体後部(お尻の方)に回ってみても「受」とは書いてありませんので、念の為。右写真はVFA-115のパイロット。「Thambs up!」の声にこたえてポーズをとってくれました。

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VFA-27(左写真)では、パイロットが機体の上で様々なポーズをとってくれましたし、VFA-102(右写真)は飛行隊長が音頭をとって、パイロット達が勢揃いしての撮影タイム。ノリノリだったり、かっこいいポーズをとる姿を同僚がちゃかしたりと、彼ら自身も非常に楽しんでいるのが判ります。

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質問などにも丁寧に答えてくれます(英語ですが)。左写真は、空母からカタパルト発進する際の手順を説明してくれるVFA-102のパイロット。右写真は今年韓国のオサン空軍基地で開かれた熱気球競技大会で、見事3位入賞した際のトロフィを誇らしげに掲げる、VAQ-136のデマースマン少佐(左)とマックリン大尉(右)。

飛行場地区だけでなく、グラウンド(フットボール場)では、縁日のように軍人達によるアメリカンフードの模擬店があるのも米軍フレンドシップデイの名物。

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バーベキュー(右写真)なんて、ソースのかけ方が豪快ですね。

模擬店の中に、ちょっと「おたくま経済新聞」的なものを見つけました。

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左は、とある部隊の模擬店のお品書き。なぜかゲーム「大神」のアマテラスが描かれています。そしてイラスト即売をしていた軍人さん(右写真)。話を聞いてみると、日本のアニメが大好きで、普段はコスプレで「コードギアス 反逆のルルーシュ」のゼロをやってたりするということでした。他には「天地無用!」の魎呼や「新世紀エヴァンゲリオン」のアスカなどが好きだとか。以前自衛隊にも結構おたくの人がいる(第2回「新田原航空祭2010レポート」参照)という話がありましたが、米軍でも同様ですね。おたく文化の広がりを感じます。

野外ステージでは、バンドなどのイベントも開催されます。当初はアメリカ本土からプロのバンドを招聘する計画もあったそうですが、様々なスケジュール上の都合(当初は4月に開催する予定だったのが、東日本大震災の救援活動で延期)で断念し、軍のアマチュアバンドなどが中心となったようです。これはマイケル・ジャクソンのモノマネパフォーマンス「MJ Tribute」。

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正午から午後8時まで続いたイベントで、やってきた人々はアメリカ気分(実際に日米地位協定で、ここは日本の主権が及びませんが)を満喫していたようでした。

(文・写真:咲村珠樹)

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