永遠のオリーブ少女、
衝撃漫画は『神のちから』。


 前回は、漫画が大好物だった子供の頃、小説を読むのはちょっと苦手だったことを告白してくださったしまおまほさん。しかしながら、ご自身も文章を書かれるようになった頃から、エッセイも小説もよく読むようになったのだとか。
 
 「佐野洋子さんや岸本佐智子さん、向井万起男さんのエッセイも一時期ハマってすごく読んでました。それから、ラジオ好きなこともあり、永六輔さんや野坂昭如さんの本も読んだりもします。でも、いまだに気合いを入れて読まないと別のことを考えちゃうので、ちょっと短めの本を選ぶことが多いですね(苦笑)」(しまおまほさん)

 そんななかで、最近読んだ西村賢太さんの芥川賞受賞作『苦役列車』は最高!だったそう。

 「世の中に恨みがある......というとちょっと直接的すぎる表現になりますが、そういう気持ちを持っている人が、私としては信用できるし、共感できるんです。もちろんただ恨みがあるだけでなくて、そういう気持ちを世の中にぶつけるようかのように表現し、同時に自己反省もあるというのが、自分にもすごく当てはまるんです。『苦役列車』にはそういう部分をすごく感じて、ワクワクしました!」

 また、大好きだった『オリーブ』繋がりでは、以前に読んだ小泉今日子さんの『人生らしいね』(「Oliveの本」として発売された)が好きだという。19歳から21歳の小泉さんの仕事と日常がスナップ写真と文章とで綴られたフォトエッセイ集だ。

 「アイドルらしい抜けた感じとは少し違って、若い頃から何かを犠牲にしている女の子という感じがしたんです。もちろん直接的なことは全然書いてないんですが、読んでいるとそういう部分が見えてくる。難しいことは言っていないんだけど、言葉がすごく染みてきて、この人ちょっと寂しいのかな、楽しいのかなって、心の奥にある感情が透けて見えるようで、とても印象に残っていますね。この本はライターの方が小泉さんへのインタビューから言葉を拾ってまとめたものなので、ご本人が書かれているのとはまた少し違うんですが」

 なんというかこの感じ、しまおさんの最新作『ガールフレンド』から受ける印象と通じる部分もあるような。読んでみたい!
 
 ところでしまおさんにとっての衝撃の一冊はどんな本でしょう?

 「さくらももこさんの『神のちから』かな。さくらさんって実はすごくガロが好きで、ちびまる子ちゃんの登場人物の名前も、みんなガロからきてるんですよ。例えば花輪くんは『刑務所の中』の花輪和一さんからだし、みぎわさんは『パンコちゃん』のみぎわパンさんから。『ちびまる子ちゃん』も、さくらさんっていい意味で意地悪なんだろうなぁって思いながら見てますが、『神のちから』はもっとすごい。意地悪全開というか、もはやしっちゃかめっちゃかなんですよ。私はウェルカムな感じが苦手なんですが、だからといって人のことをばかにするのも好きじゃない。そこの絶妙なバランス感が『神のちから』にはあります。見たままではない意味を伝えてくれる作品だと思います」

 ということは、『ちびまる子ちゃん』が表なら『神のちから』は裏さくらももこという感じなのだろうか。

 「いや、両方裏だと思いますよ(笑)」


 と、しまおさん。なるほど、『ちびまる子』ちゃんも真剣に読み返してみたくなる。

 ほかにもすぎむらしんいちさんの『老人賭博』や『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ』、大橋裕之さんの『音楽と漫画』、先ほども登場したみぎわさんの元ネタであるみぎわパンさんの『パンコちゃん』などお薦め漫画は尽きないが、最新の好きな漫画はしりあがり寿さんの『あの日からのマンガ』だという。

 「朝日新聞の夕刊で連載されている四コマ漫画『地球防衛家のヒトビト』をはじめとして、しりあがりさんが震災以降に書かれた漫画を集めた作品集です。ご本人が実際に被災地に行かれた時、瓦礫が広がった景色のなかで自衛隊の人たちが作業している姿が実は小さく見えたってことや、家族で"また余震があったね"って話し合うとか、あの日からの様々が描かれています。しりあがりさんのタッチなので絵自体に生々しさはないんだけど、その先に見えたものはすごく生々しかったんだろうなっていうのが伝わってきて、なんとも言えない読後感。もう一度震災の日が帰ってくるんじゃないかって。不思議とそれが怖くはないんだけど。震災直後は特に、笑ったり笑わせたりがすごく難しかったと思うんですが、そのなかでしりあがりさんが挑戦していた部分もあります。少し軽い笑いに持っていったり、それでも冗談はいうけどやっぱりみんな不安だよねっていう感じが漫画の中にあらわれてて。すごく心に残る作品でした」


 自転車の準備はいいだろうか。買いに走ろう!


【関連リンク】
アノヒトの読書遍歴 :しまおまほさん(前編)

<プロフィール>
しまおまほ
1978年、東京生まれ。漫画家、エッセイスト。高校時代に入御中に配られたプリントの裏に描いた漫画『女子高生ゴリコ』が話題になり、1997年に漫画家デビュー。著書に『タビリオン』『ぼんやり小町』『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』など。近年はエッセイストとしても注目されており、最新作の54篇のエッセイをまとめた『ガールフレンド』も話題


取材・文=根本美保子



『アノヒトの読書遍歴 しまおまほさん(後編)』
 著者:
 出版社:ブルース・インターアクションズ
 >>元の記事を見る





■ 関連記事
『「ベテラン経理マン」「アラフォー敏腕専務」には要注意?――粉飾・横領の見抜き方』(2011年9月12日07:00)
『オリンピック出場を決めたなでしこ、強さの秘密は「言葉」にある』(2011年9月9日09:00)
『「探偵×ススキノ×大泉洋」のハードボイルド映画公開間近』(2011年9月9日08:00)


■配信元
WEB本の雑誌