男子サッカー日本代表がブラジルW杯アジア三次予選で北朝鮮を1-0で破れば、なでしこジャパンもロンドン五輪最終予選で韓国を2-1、オーストラリア1-0で突き放した。
 昨年W杯ベスト16位に入った男子と、頂点に輝き国民栄誉賞に輝いた女子。両者とも次のステップに向かって着実に世界の檜舞台を歩んでいる。
 9月2日の北朝鮮戦では、激しい雨が降りしきるなか、北朝鮮の守備を破れずに、なかなかシュートまでもっていけなかったが、ボールを支配したのは圧倒的に日本だった。これが、得点には至らなかったものの、前半32分の李忠成、直後33分の香川真司のシュートへとつながり、後半、ロスタイムの吉田麻也の決勝点を呼び込んだ。

 ザッケローニに対する周囲の評判も良い。
 「ザックはイタリアでの経験が豊富で、選手の信頼も厚い。実にクールで、トルシエのようにヒステリーに怒鳴り声を上げているのを見たことがありません。メディアも彼が日本に溶け込もうとしている姿勢を非常に高く買っています。最近では、他のスポーツからも得るものがあると、巨人-ヤクルト戦を観戦に出かけた。日本文化を積極的に吸収しようという意欲は選手にも伝わり、その関係は非常に良好です」(スポーツ紙記者)
 ザックジャパンは今後の予選も危なげなく乗り切ることができるというのが、一定の評価だ。

 一方、日本中を沸かせた、なでしこはどうか。
 「韓国はスピードがあり、プレスも強い。日本は技術的には上ですが、先日は攻守に苦しい戦いでした。W杯で優勝しただけに、国民の多くはタイを圧倒し、韓国にも簡単に勝つだろうと思っていたようですが、実は日本だけが抜けているわけではないのです。タイはともかく、韓国やその後戦う北朝鮮や中国とは実力が拮抗している。韓国戦は運よく日本が勝ちましたが、負けていても不思議はなかったのです」(サッカー記者)

 そもそも、W杯での優勝さえ、できすぎていたというのだ。
 「あのときは実力以上の力を出し切って、ドイツ、アメリカを倒した。それをロンドンオリンピックでも求めるのはちょっと酷ではないでしょうか」
 とサッカー関係者は言う。

 確かに、なでしこの人気と期待は異常なものがあるという。前出のスポーツ紙記者が言う。
 「神戸に住む澤穂希などは、三宮から歩いて15分くらいの商店街へショッピングに出かけるのが日課だったのに、行けばファンにもみくちゃにされるため、それもままならなくなってしまった。それどころか、暴走した一部のファンが自宅を突き止めストーカーまがいの行動を起こしたため、やむなく引っ越したそうです。あれではサッカーどころではない。精神的支柱の彼女が乱れれば、それはすぐにチーム全体に影響する。これは今後の大きな不安材料です」

 これまで、男子サッカーの陰に隠れて、ほとんど注目されなかった、なでしこジャパン。それがメディアに露出し有名になるにつれ、弊害が生まれてきたという。実際、韓国戦にもそれが表れていたと前出のサッカー記者が話す。
 「澤、海堀、岩清水、阪口の4人は韓国戦が初登場でした。にもかかわらず後半には疲れが見えた。澤は、存在感はあるものの、精彩さを欠き余裕がないのが見え見え。問題はこれからですよ。北朝鮮、中国。アウェーでやるなら審判も敵と考えなければならない。事実、韓国戦などでは、倒れている選手に上から落ちてきたボールが当たってハンドですからね。こういうことは中国開催である以上、覚悟しなければならないでしょう」

 気持ちに余裕がないなどとは言っていられない環境なのである。
 佐々木則夫監督は韓国戦の後、「見事な勝ち点3を獲得しましたと言いたいところですが、コンディションと技術的コンディションが最悪でした」としながら、「準備の中で、タイトな試合を戦うためにもっと走れる体に強化しておかなきゃいけなかった」と語っているが、今のなでしこジャパンには、それ以上にプライベートでの精神的な強化も求められている。
 大舞台での連戦が続く男子と女子だが、置かれた状況はかなり違うようだ。