2011年09月09日配信の「しみマガ」より抜粋

 今回は臨時増刊号として、みなさんから頂いた、なでしこジャパンに関する質問にお答えしたいと思います。「槙野が試合に出られない理由」については、来週の通常号でタップリとお届けします。


 まずはなでしこに関するこの質問から。


 「なでしこvsオーストラリア戦は、オーストラリアがタイ戦からメンバーを入れ替えて休養十分にもかかわらず、韓国戦と同じメンバーだったなでしこジャパンよりも先にバテたと思います。逆に、なでしこvs韓国では、なでしこがタイ戦でメンバーの入れ替えを成功させて臨んだのに、韓国よりも先にバテました。『日程に余裕があるほうが先に疲れる』現象は、なぜ起こったのでしょうか?」


 コンディションの問題については後述するとして、


 先にバテた理由はシンプルです。


 相手に主導権を握られてパスを回され、走らされた時間が長かったからです。


 ちょっと状況を説明しますね。


 まず、なでしこvs韓国は、前半開始からなでしこが猛プレッシングを仕掛けました。韓国はそれに対してロングボールで逃げることはせず、徹底的にディフェンスラインからパスをつなぎ、ショートパスでなでしこのプレスをかわすことにこだわりました。


 序盤は、韓国がかわし切れずに、なでしこにボールを奪われてショートカウンターを食らう場面が多かったと思います。その流れの中で、なでしこはCKから阪口夢穂が先制点を挙げます。


 ところが、徐々に韓国は慣れて来ました。恐れずにショートパスをつなぎ続けたことで、日本のプレスをはがせるようになり、また、日本も先制点によって若干プレスが落ち着き、韓国のボランチが前を向くシーンが増えました。


 一概には言えませんが、『ボランチが前を向く』というのは、ポゼッションを取って攻める上で重要なことです。韓国はセンターバックが中盤まで上がって高い位置でパス回しに参加するなど、リスクを恐れない攻撃的なポジショニングが光り、なでしこは先制点以降、ほとんど韓国にゲームを支配されました。


 それによって、ボールを追うために走らされたなでしこは先に疲れてしまったわけです。


 一方、なでしこvsオーストラリア戦は、オーストラリアがロングボールをボコスカ蹴り込むサッカーで、フィジカルの強さを前面に出してきました。


 ロングボールは、うまくつながれば一発でチャンスを作ることができる『ゴールへの最短ルート』ですが、その分、セカンドボールをうまく拾えるか否かはフィフティー・フィフティー、あるいは敵陣での数的関係を考えれば、拾える確率は50パーセント以下でしょう。つまり、確率の低いプレーと言えるわけです。


 そのような確率の低い、出たところ勝負のプレーばかりを選んでいればどうなるか? 


 たまに成功したときはチャンスになるが、全体的には相手がボールを持つ時間が増えて、徐々にスタミナが削られるわけです。


 ロングボールは、最初にヘディングで競り合った後にどれだけ素早くセカンドボールを拾って攻められるかがカギなので、その走力を失えば威力は半減したも同然です。


 なでしこは熊谷沙希のところにボールコントロール面での不安があったので、ディフェンスラインでパスを回すのは極力避け、左サイドから中央に動いて来る宮間あやにボールを預けていました。彼女が中心となってパスを回し、ポゼッション(主導権)を握る展開。これがチームとしての約束事なのか、彼女の即興なのかは分かりませんが、いずれにしろ素晴らしいサッカーセンス。さすが女・遠藤です。


 といった試合の流れで、パスを回されたオーストラリアは徐々にバテ始め、なでしこが勝利を収めたというわけです。


 ただ……。


 そうはいっても、コンディションとしてはボールを回された側のほうが日程的に余裕があったはずだし、なぜそれが表に出なかったのか? というご質問ですよね。


 『中2日』、『中3日』とかよくいわれるコンディションの話。ライターもよく話題にしていますが。


 誤解を恐れずに言えば……、僕はそれって『気のせい』だと思ってるんですよ。というか、あまり信用していないのです。



続きは「しみマガ」にてどうぞ!