■ 第25節

J1の第25節。7勝9敗8分けの勝ち点「29」で12位のセレッソ大阪が、ホームで6位のサンフレッチェ広島と対戦。広島は10勝8敗6分けで勝ち点「36」。C大阪は9月14日(水)にACLの準々決勝の全北戦(H)を控えている。

ホームのC大阪は「4-2-3-1」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、茂庭、上本、丸橋。MF山口蛍、扇原、清武、ファビオ・ロペス、倉田。FW杉本。U-22日本代表に選ばれたMF山口蛍、MF扇原、MF清武の3人が揃ってスタメン出場。MFキム・ボギョン、MF中後、FW播戸らがベンチスタート。DF高橋が怪我から回復して久々のベンチ入りとなった。

対するアウェーの広島は「3-4-2-1」。GK西川。DF森脇、森崎和、水本。MF中島、青山敏、ミキッチ、山岸、高萩、李忠成。FW佐藤寿。MF森崎浩は出場停止。日本代表のMF李忠成はリーグ戦で11ゴールを挙げている。

■ 乱打戦の末に・・・

試合はJリーグ史上に残る壮絶な打ち合いとなった。先にペースをつかんだのはホームのC大阪で、DF高橋大輔が復帰してきたため、お尻に火が付いた右SBのDF酒本が積極的な攻撃参加を見せて攻撃をリードする。しかし、C大阪は前半4分にDF茂庭が負傷して交代。守備の要を失ってしまう。

これで流れが広島に傾いていくと、前半22分に広島が先制に成功する。右サイドでボールを受けたMFミキッチが中央にクロスを入れると、DFに当たってコースが変わったのか、おかしな軌道を描いてゴールに吸い込まれる。記録上は「MFミキッチのゴール」となって1点を先制する。

広島は、前半22分にも右サイドの裏のスペースを突いたMFミキッチのクロスをMF高萩が合わせて2点目を奪う。MF高萩は今シーズン初ゴール。さらに、前半終了間際にも、MF青山敏の絶妙の縦パスを受けたFW佐藤寿が鮮やかなボールコントロールからDFをかわして右足でゴールを決めて3点目。前半だけで3対0と大量リードを奪う。

前半終了と同時にホームのサポーターから大ブーイングを浴びたC大阪は、後半開始からFW杉本とMF山口蛍に代えて、FW播戸とMFキム・ボギョンを投入。早くも交代枠を使い切って反撃を試みると、後半1分も経たないうちに、MF清武がカットインしてから左足でミドルシュートを決めて1点を返す。日本代表のMF清武は今シーズン6ゴール目。

1点を返したC大阪は、後半10分にも、左サイドでボールを受けたDF丸橋のクロスをFW播戸がヘディングで決めて2対3と1点差に迫る。そして、その2分後にも、FW播戸が中央で起点になって左サイドの裏を走ったFWファビオ・ロペスにボールが渡ると、FWファビオ・ロペスが左足でゴール前に正確なクロスを入れる。これをFW播戸がダイビングヘッドで決めて、あっという間に3対3の同点に追いつく。

FW播戸の連続ゴールで追いついて勢いに乗ったC大阪は、後半27分にもMF倉田、MFキム・ボギョン、MF清武の連携で右サイドを崩して、MF清武がグラウンダーのクロスを入れると、広島のDFに当たってコースが変わってFW播戸の足元につながる。これを、FW播戸はキープしてから右に流すと、フリーのMFキム・ボギョンが左足でシュートを決めて4対3と遂にリードを奪う。韓国代表のMFキム・ボギョンはリーグ戦7ゴール目となった。

さらに、後半32分には、MF清武が中央をドリブルで突破して右サイドに展開すると、DF酒本のアーリークロスをFW播戸がニアサイドでスライディングシュートを決めて、5点目を挙げる。FW播戸は8月20日のアウェーの清水エスパルス戦に続いて今シーズン2度目のハットトリックを達成。またしても、途中出場でのハットトリックとなった。

広島も終了間際にMFミキッチのスルーパスからFW佐藤寿が決めて4対5と1点差に迫るが、反撃はそこまで。結局、5対4でC大阪が大逆転勝利を飾って、水曜日にスタートするACLの準々決勝に向けて、最高にはずみの付く勝利を手に入れた。

■ まさかの大逆転劇

前半終了時点で0対3と3点ビハインドだったC大阪は、DFリーダーのDF茂庭も失っており、絶体絶命のピンチだったが、誰も予想しなかった大逆転劇を見せた。サッカーの場合、2点差を逆転して勝利することは、たまに見られるが、3点差というと滅多にないものである。

パッと思いつくのは、C大阪がホームの浦和戦で0対3からひっくり返した試合と、2006年にFC東京が味スタで川崎フロンターレに5対4で逆転勝利を飾った試合と、2010年にJ2のヴァンフォーレ甲府が横浜FCを相手に4対3で逆転勝ちした試合くらいで、数年に1度のレベルである。

そして、こういう大逆転劇が生まれる試合は、たいていの場合、リードしているチームに退場者が出たり、負けているチームにPKが与えられたりと、試合が荒れる要素がいくつかあるが、この試合は、退場者も出ず、PKもなくて、レフェリーが試合を壊したということもなかった。それだけに後半の展開は、全く予想できないものだった。

■ 逆転まで至った要因

逆転した理由はいくつかあるが、C大阪側の立場で考えてみると、後半から登場したFW播戸とMFキム・ボギョンの活躍に尽きる。FW播戸の活躍は言うまでもないが、MF山口蛍に代わってMFキム・ボギョンがボランチに入ったことも大きく、彼が投入されて、中盤の守備力が上がって、攻撃の起点もできるようになった。勝ち越しのゴールも見事だったが、それ以上に「強靭なフィジカル」を生かしたボール奪取が光った。

広島側の立場に立ってみると、4点目を奪えなかったことが響いた。広島が先制点を奪ってから、C大阪は中盤で全く守備が機能しなくなって、広島は面白いようにボールを回えるようになった。その結果、2点目、3点目のゴールが生まれた。「このままでいくと、何点入るのか?」という流れで、後半開始早々にも、MF李忠成がゴール前でビッグチャンスをつかんだ。しかし、後半のロスタイムに4点目を挙げるまで、ゴールを奪えなかった。

また、後半17分にMF李忠成に代えてMFムジリを投入したことも裏目に出た。走れないMFムジリが入ってから攻撃のリズムはなくなって、チャンスも少なくなっていった。MFムジリは「一発」のある選手なので、「一発」に賭けたくなる気持ちは理解できるが、C大阪の守備はサイドはスカスカだったので、普通にボールを回していたら、チャンスは作れたように思う。MF李忠成はウズベキスタンから戻ってきたばかりで、コンディションが悪かったのかもしれないが、C大阪としては、もっとも危険な選手が早い時間に退いたことで楽になった。

■ 神がかっているFW播戸

ということで、歴史に残る試合となったが、大逆転の立役者になったのはFW播戸である。後半から登場してハットトリックを記録しただけでなく、1点目のMF清武のゴールと、4点目のMFキム・ボギョンのゴールもアシストしており、45分間で「3ゴール2アシスト」という考えられないような活躍を見せた。

FW播戸は8月20日にも途中出場でハットトリックを記録しているが、これだけの短期間で、2度も「途中出場でハットトリック」というのは、神がかっているとしか言いようがない。今シーズンのゴール数も「8」となったが、わずかに378分で8ゴールと驚異的なペースでゴールを量産している。

今シーズンの途中にザスパ草津からガンバ大阪に移籍したFWラフィーニャも、驚異的なペースでゴールを量産していて、FW播戸と同じ8ゴールを記録しているが、それでも、684分で8ゴールである。FWラフィーニャの数字も物凄い数字であるが、FW播戸の数字は、飛び抜けた数字である。

楽しみなのは、この活躍に対して、サッカーダイジェストやサッカーマガジン、エルゴラッソといったメディアがどういう評価を下すのかである。普通に考えると「8.5」になるかと思うが、プレーに関しては、マイナスになる要素は、ほとんどなかったので、「9.0」という評価になっても不思議ではない。もちろん、シーズン終盤で、優勝がかかっていたり、残留がかかっていたりという試合ではないので、「試合の重み」という点では落ちるが、個人としてはパーフェクトに近いパフォーマンスである。どういう評価になるかは興味深いところである。

■ FW佐藤寿人 ファインゴール2発も・・・

大逆転負けとなって、すべてをFW播戸に持っていかれた形となったが、FW佐藤寿の2ゴールも見事なものだった。FW佐藤寿の1点目のゴールは、MF青山敏から素晴らしいスルーパスが来たが、うまくCBの間に入ってボールを受けると、鮮やかなコントロールでDF藤本をかわしてネットを揺らした。

さらに、後半ロスタイムのゴールも見事だった。右サイドのMFミキッチから、こちらも素晴らしいスルーパスが出てきたが、あのタイミングで裏に抜け出して、点で合わせることができるストライカーは、日本にはFW佐藤寿しかいないだろう。このとき、FW佐藤寿に対してDF上本がマークに付いていたが、一瞬だけスキを見せたのを見逃さず、「あっ!?」と思った次の瞬間にボールをゴールに流し込んだ。