「リボン」から「お花」へ〜真珠子個展「花びらうらない」レポート

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熊本県天草出身の美術家、真珠子さんの活動は幅広い。県立高校の美術科講師を経て2000年に上京してから、イラストを中心に、映像、陶芸などの作品を発表。2004年にNHK「デジタル・スタジアム」第191回田中秀幸セレクション受賞するなど、数々の賞にも輝いている。
近年は、リボンを結ぶ少女というモチーフのイラストを多く描き続けていた真珠子さんに、転機が訪れたのは2011年3月。東日本大震災が発生し、『祈る。』という彫刻画を描きブログにアップすると、通常の10倍のアクセスを記録し、自身が呼びかけた「祈り」が「切実な日常になった」ことを痛感したという。*1

*1 祈る。-真珠子にゅうす-
http://blog.goo.ne.jp/yanoki83/e/9b97f94745ad668fe355eebafe42fb98[リンク]

そこで、単身「神々の国」と形容されヒンドゥ教の独特の慣習様式であるアダットが残るバリ島に渡り、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されたバリ更紗「バティック」を学んだ上で、自身の線や色使いをミックスした独特のろうけつ染めの世界観を作りあげた。
その結実として2011年8月22日から9月3日まで、銀座ヴァニラ画廊にて個展「花びらうらない」を開催。現地で描いた3作品と帰国してから制作した8作品を中心に展示を行った。
「皆様に『祈る。』を観て頂いて、絵の力、芸術の力を改めて感じたんですね。それで、以前から更紗に興味があったので、バリに行く決心をしました。最初は先生、職人さんについていたのですけれど、要領を得てきたので、そこからは離れて、自分なりの線と色使いをしはじめて、真珠子流のろうけつ染めを開発しました」
そう語る真珠子さんによると、紙で描くのと布に描くのでは、気持ちに違いがある、という。
「布には魔力があると思う。」

会期中の27日には、数枚のイラストに真珠子さん自身がストーリーを読み上げていく「アニメ紙芝居活弁ショー」を実演、装画を手がけた『論理と感性は相反しない』(講談社文庫)の作者、山崎ナオコーラさんとのトークショーが行われた。
「私のアニメ活弁をたまたま客席でナオコーラさんが見て下さっていて、それが縁になって装画を描かせていただくことになりました。」
そう語る真珠子さんは、「頭の中では常に絵が動いている」という。

これまで「お花が嫌い」と公言して、「リボン畑でリボンを栽培していた」という真珠子さん。それが今回、色鮮やかな花を描いた作品が多く展示された。
「それまではお花は美しく咲くことが約束されていると考えていたんです。でも、ほんとうは誰かのためではなく、偶然咲いているんだ、と思って。そのことに、ナオコーラさんとトークショーした時に、ナオコーラさんの作品の朗読をさせてもらって、気がつきました。私の大好きなくだりです」

”自然は美しいことがあるけれど、美しさには向かってはいない。
見上げると、枝が伸び、葉っぱが重なり、見たことのない模様を作っている。
美しいと感じるけれど、枝は美しさに向かって伸びてはいない。
枝は偶然に向かって伸びている。
たまたまそういう形になっている。
偶然を作り出そうとしている。
偶然を多発している。”

芥川賞候補作にも選ばれた『人のセックスを笑うな』(河出書房新社)の一節を挙げて、 心境の変化があったことを語る。

28日には、希望者を対象にろうけつ染めのワークショップを開催。会場内はろうそくを溶かした独特の匂いに包まれた。
「実際に体験してもらうことで、より作品も理解してもらえると思います。機会があればこういうイベントをもっとしてみたいですね」

新境地に到達した真珠子さん。次のテーマは、と尋ねると「陶芸です」と答えてくれた。

10月2日にはイベント『SADISTIC CIRCUS』での活動絵活弁ショー、10月11日から11月6日までは、出身地の天草で自身が制作した陶芸の器で飲めるメイド喫茶『みぞかふぇ』を開業。そして、11月下旬にはろうけつ染めのワークショップ『真珠子学園第四時間目』を開催する。
その幅広い活動には、これからもますます目が離せなくなりそうだ。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「ふじいりょう」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営。ネット、メディア、カルチャー情報を中心に各媒体に記事を提供している。