福島第一原発の監視カメラに突然、白い防護服を着た作業員が現れ、カメラのレンズを右手で指さし、激しく叫んだ。

   2011年8月28日午前10時過ぎに起きたことだ。いったい男は何をしようとしたのか、ネットは騒然となった。

   そうした中、2011年9月8日昼、それは自分だと名乗る人物が掲示板「2ちゃんねる」に現れ、示したリンク先には、今回の行為に至る経緯と、狙いが長文で綴られていた。

雑務に追われ睡眠時間が1、2時間の作業員も

   「2ちゃんねる」の「ふくいちライブカメラ関連 実況」スレに現れた人物は、「8/28にカメラに向かって指差しした者ですが、言いたいことをまとめたので興味ある方は見てください」などと書き、3つのリンクを置いた。一つ目と二つ目には男性の目の周りを写した写真と、原発内の作業場のような写真が貼られていた。

   監視カメラでは、目の周りの様子がわかる作業用メットを頭から被っていたため、自分が本物だと証明したかったらしい。3つめのリンクには、内閣府の園田康博大臣政務官に宛てた文章と、今回の行動の説明が写真付きの長文で綴られていた。

   園田政務官宛てにしたのは、合同記者会見で記者から「指さし男」について質問され、政務官が「本人の考えを教えて欲しい」などと述べたからだという。

   文章では、今回の行動や、原発のJヴィレッジと免震棟内の写真を撮影してウェブで公開したのは規則違反だと認めた。これは全て自分の単独行動であり、自分が所属していた会社への制裁はやめてほしいと訴えている。また、今回の行動についての詳細は別途ウェブサイトで説明する予定だ。記者から記者会見の場に自分を呼べとの要望が出ていたが、

「私はその場に行くことに問題ありません」

とした。

   3つめのリンク先には、園田政務官に宛てた文書とは別に、今回の行動についての詳細が綴られている。原発作業現場の実態を知ってもらいたい、という願いが込められているようだ。

   作業員は低賃金、保険未加入、契約書も書いてもらえないといった不当な雇用条件の元で働かされ、中には、新人の面倒や諸手続きなど雑務に追われ睡眠時間が1、2時間という人もいて重大な事故につながりかねない、と明かしている。

   また、都合の悪いことは隠され上に報告されている。例えば毎日の健康状態を規定の用紙に記入し提出する際、自分は睡眠時間を4時間と記入したが、6時間に書き換えられた、というのだ。

指をさした先は東電、政府、視聴者、そして自分?

   作業現場には、全国の子供達による応援メッセージ、色紙や旗が、千羽鶴がたくさん飾られているが、それが「残酷な自己犠牲を強いる声」になってしまう可能性がある、とも指摘している。

   ライブカメラに指を向けたことについてはこう説明している。指をさした対象は東京電力及び政府、この映像を見る人々、またスマートフォンを通してこれを見る自分自身だという。カメラは原発や自分を映していて、視聴者は「観察」しているが、カメラに写っている自分もモニター前の視聴者を「観察」している。対等に議論すべきだ、ということを示したかった、そうだ。ただ、自分は社会人として多くの人に迷惑をかけることをしたのだから、批判や罵倒は当然だなどと結んでいる。

   この「告白」がわかりにくく、内容もすべて本当かどうかはわからない点もあるが、ネットでは、

「とにかく現場作業員には相応の報酬と生涯生活保障と名誉を国が担保してやれ」
「原発で働いた記録が残らないんだったら、労働者に深刻な健康被害が出ても東電は隠蔽出来る」

などといった書き込みも出ている。

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