(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会

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 札幌在住のミステリー作家・東直己の「ススキノ探偵シリーズ」を映画化した『探偵はBARにいる』の公開が9月10日と目前に迫っている。大泉洋と松田龍平の絶妙なコンビネーションが話題を呼び、マスコミ試写会は満席となり大盛況だった。

 本作は、主演二人の掛け合いに注目をされているが、他にも、その世界観そのものも大きな魅力を持っている。作りこまれたセットと細かな設定を考えた小道具で、これでもかと言わんばかりに「ハードボイルド」の世界に誘ってくる。昔ながらの渋い“大人の男”の魅力がたっぷりと詰まっている。草食男子などと言われて、男性の“強さ”が薄らいでいる今だからこそ、この映画で、男のあり方を学んでみるのはいかがだろうか。

 そこで、今回は、本作の「男臭さ」があふれるセットや小道具について詳しくチェックしていこう。また「探偵カクテル」とも言うべきお酒についても紹介する。

スタッフが余計なところにもこだわった隠れ家的BAR

 探偵(大泉洋)と助手の高田(松田龍平)の拠点であり、このタイトルにもなっている“BAR”は、東映撮影所のスタッフのこだわりが詰め込まれている。カウンターだけのこじんまりとしたBAR「ケラー・オオハタ」は、ウッディに統一されたシックな内装でまとめられ、照明もやや明るさを落とした暖かな灯りを紡いでいる。まさに探偵たちの“秘密の隠れ家”としては、ちょうど良い雰囲気ではないだろうか。あまり広すぎたり、騒がし過ぎたりしては、裏の職業的な感覚がなくなってしまう。

 そして、北海道在住の俳優である桝田徳寿演じる寡黙なマスターが佇むカウンターは、7.5メートルもある1枚板でできていて、これはかなり高価なものらしい。そして、棚に並べられた高級ウイスキーも本物が入っているそうだ。そして、そのお酒の量をリアルに減らして見せるためにスタッフたちが宴会を開いた…という噂もある。宴会は余計だが、随所にこだわりが見える。作り上げた美術スタッフもななか骨太でハードボイルドな精神の持ち主ではなかろうか。

男としてのこだわりを持ち物で表現しよう

 小道具についても、細かなこだわりが。探偵が依頼を受けるのは、携帯電話ではなく、バーにある“黒電話”。勿論、プッシュ式ではなくダイヤル式である。古風なものとの取り合わせは、落ち着いた大人の渋さを感じさせる。また、探偵の持ち物からも、そのハードボイルド感がにじみ出ている。まずは「胃薬」。胃が悪くなっても酒をやめないという頑固さが伝わってくる。そして、「缶ピー」。これは缶入りのピースのこと。まず日本の代表的なたばこの銘柄である「ピース」を選んでいる時点でもこだわりがあるが、缶に詰めたピースというところがさらなる奥深さを感じさせる。缶は気密性が高く流通過程で風味が落ちにくいため、こだわりのファンはこちらを選ぶそうだ。この“頑固さ”“こだわり”は、まさに「固ゆで=ハードボイルド」的である。


探偵と同じカクテルを注文できる男になれ

 こんなこだわり抜いた映画『探偵はBARにいる』を観た後は、おそらくお酒が飲みたくなるだろう。そこで、最後に、本作の探偵が愛飲しているカクテルを紹介しよう。

『サウダージ』
ジンベースのカクテルで、マティーニのベルモットをティオ・ペペに代えたものである。
1)マティーニをつくる要領で、ジンとティオ・ペペを3:1程の割合(あくまで参考)でシェイク。
2)ランプ・オブ・アイス(丸氷)を入れたオールド・ファッションド・グラス(ウイスキーを飲む時のロックグラス)に注ぐ。
3)アンゴスチュラ・ビターズを1ダッシュ加える。
4)レモン・ピールやオリーブは入れるとか入れないとか。

 「サウダージ」は、ポルトガル語で、「昔のことをなつかしく思いだすこと。郷愁。」を意味する言葉らしい。ハードボイルド的な名前だ。このカクテルは、原作者の東氏も実際に愛飲している。ただし、こちらは、一般的なカクテルではなく、“探偵”オリジナルのカクテルらしいので、お店のメニューにはないようだ。しかし、バーテンダーと仲良くなればつくってもらえるかも知れない。こだわりを持つ男になり、隠れ家的BARを見つける、そして、いつしか常連となり「サウダージ」をつくってもらう。そんなハードボイルドな男を目指そう。なお、バーテンダーにつくってもらえなくても怒ってはいけない。ハードボイルドな男は、小さなことで腹を立てないのだ。

 ハードボイルドな道を進むために、まずは、映画を観ることから始めよう。映画『探偵はBARにいる』は、9月10日から全国ロードショー。

『探偵はBARにいる』オフィシャルサイト
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