今回、紹介するのは、心の底から面白いと思える秀逸なサスペンス・ミステリーです。ナチス・ドイツがユダヤ人を迫害していた時代を背景にした映画ですが、ユダヤ人を犠牲者としてではなく、ヒーローとして扱っており、ユーモアもあって痛快な作品です!


 1938年、オーストリアのウィーンで、ユダヤ人一族のカウフマン家は画廊を経営していました。カウフマン家の息子ヴィクトル(モーリッツ・ブライプトロイ)と使用人の息子ルディ(ゲオルク・フリードリヒ)は、兄弟のように仲がよく、ヴィクトルはルディに、150年前から一族が密かに守ってきた、ミケランジェロの幻の名画があることを明かします。

 そんな中、オーストリア国境にナチス・ドイツが進軍し、ユダヤ人は財産を略奪され始めます。ヴィクトルの父は絵画を守ろうとしますが、ナチスの軍人たちが家に押しかけてきて、驚いたことに彼らはミケランジェロの絵の隠し場所まで知っていました。カウフマン家の人々の知らぬ間にナチスに傾倒していたルディが、軍で出世するために密告していたのです。絵を奪われた家族は、ポーランドに送られて、別々の収容所に入れられてしまい、やがてヴィクトルは父が亡くなったことを知ります。


 1943年、戦況が不利になってきていたナチス・ドイツは、イタリアとの同盟を強固にするために、ムッソリーニにミケランジェロの絵を贈ることにしますが、カウフマン家から奪った絵は贋作だと発覚。ルディに本物はどこにあるのか詰め寄られたヴィクトルは、絵が偽物だったと初めて知りましたが、母を救うことを条件に本物の在りかを教えると言い、一か八かの賭けに出ます。本物が存在するかどうかも分からないのに……。


 ヴィクトルは恋人のレナ(ウルズラ・シュトラウス)と、収容所に送られた後、離ればなれになっていました。尋問のため移送されたベルリンで再会した時、レナは時代の流れに逆らえず、ルディの婚約者となっていましたが、ヴィクトルをずっと愛し続けており、危険を承知で彼に力を貸します。


 残された家族を救うために、窮地を乗り切ろうとするヴィクトルの活躍が、とにかくすごいです! 恐ろしいナチスが相手だというのに、ユーモアの精神を持ち続けて、機転を利かせるヴィクトル。次々とピンチが訪れ、緊張感の連続で、ラストまで夢中になって見入りました。

 本作は、第80回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した「ヒトラーの贋札」の制作会社とプロデューサー、ヨゼフ・アイヒホルツァーが手がけた映画です。ナチス・ドイツとユダヤ人の物語に加え、信じていた友達の裏切り、1人の女性をめぐる2人の男の戦い、家族の深い絆、そして名画にまつわる謎など、見どころが盛りだくさんで、見た後に爽快感を残してくれる傑作。絶対に見てよかったと思える一作です。

「ヨゼフ・アイヒホルツァーが制作した映画」DVD紹介

「ヒトラーの贋札」


 ナチス・ドイツが行った史上最大の紙幣贋造事件に隠された、ユダヤ人技術者たちの正義をかけた戦いを描き、第80回アカデミー賞、外国語映画賞に輝いた秀作。第二次世界大戦中のドイツ・ザクセンハウゼン強制収容所に、ユダヤ系の技術者たちが集められる。ナチス・ドイツが、イギリスの経済混乱を狙って企てた“ベルンハルト作戦”のもと、贋作師のサリー(カール・マルコヴィクス)、印刷技師のブルガー(アウグスト・ディール)らは、完璧な贋ポンド札を作ることを命じられるが、彼らは自分の命を守るために使命を全うするか、正義を貫くか、究極の選択を迫られる。

2007年/ドイツ、オーストリア/カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール
発売元:デックスエンタテインメント 販売元:東宝/3990円/発売中
「アフリカン・ソルジャー 少女兵士の戦場」


 ドイツで活躍するシンガー、セナイト・メハリのベストセラー自伝書をもとに作られた、紅海に面したエリトリアが舞台の戦争映画。修道院の養護施設で育った少女アウェト(レテキダン・ミカエル)を、姉のフレウェイニ(ソロミエ・ミカエル)が迎えに来る。家族のもとに戻ったアウェトは、妻子に働かせて、酒場で愛国心を語るばかりの怠惰な父親にひるまず直言する。気丈な末娘が疎ましくなった父は、娘たちを独立のための戦闘組織“エリトリア解放戦線”に譲り渡してしまう。政治信条の異なる者を敵視し、ゲリラ戦で殺りくを繰り返す組織の中で、アウェトは内戦の渦中に巻き込まれていく。

2008年/ドイツ、オーストリア/レテキダン・ミカエル、ソロミエ・ミカエル
ケンメディア/3990円/発売中