「テレビ局の売上高が減少傾向にあることは承知している」フジテレビデモ総務省からの回答

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8月21日に6000名を超える規模のデモがフジテレビに対しておこなわれました。その件に関連してガジェット通信は(株)フジテレビジョンと総務省に対して質問状を送り、本日9月5日に総務省からガジェット通信への回答が送られてきましたので、ここに公表します。
尚、(株)フジテレビジョンからの回答はまだ届いていません(記事執筆時点)。

※ガジェット通信ではこのような形で関連する省庁や企業への取材などをおこなっていますので、記事に関連してみなさんがきいてみたい質問などあればコメント欄に書いておいてください。質問の際の参考とさせていただきます。

フジテレビ社屋

■フジテレビデモに関する総務省への質問と回答
8月21日にフジテレビに対しておこなわれた大規模デモに関するご質問

●質問1「フジテレビに対する大規模デモに関してのコメント」
2011年8月21日に、お台場にあります(株)フジテレビジョンに対しまして、歴史的にみても前例のない大規模なテレビ局に対するデモがおこなわれました。その規模は公式発表では6000人ともいわれ、30万人を超える人がネット放送を経由してライブでこのデモを閲覧したという集計があります。この前例のない大規模な抗議を総務省は所轄官庁としてどのように受け止めましたか。

■質問1への回答
○ 2011年8月21日に、(株)フジテレビジョンに対してデモ活動が行われたことは承知しておりますが、(株)フジテレビジョンが放送法及び電波法に違反しているという事実はないため、放送法及び電波法を所管する総務省としては、特段コメントはありません。

●質問2「テレビ放送の公共性について」
放送局は国から認可を受け電波を独占的に利用することで成り立っているビジネスですが、元来電波は皆にとっての共有財産であり、それを利用するにはおのずと「公共性を持つ内容であること」等といったルールが存在するものと思われます。これら公共性に照らし、現在これら公共の電波を利用したさまざまなテレビ局の番組及びそれらテレビ局に関連する会社、子会社などの行っているビジネスや持っているコンテンツはすべて問題がないとお考えでしょうか。問題があるとすればどの部分でしょうか。

■質問2への回答
○ 現状のところ、放送事業者が電波法及び放送法に違反しているという事実はございません。


●質問3「クロスオーナーシップ問題」
今回のデモでは、クロスオーナーシップについても問題提起されていました。マスメディア集中排除原則が現在の日本では守られていませんが、この現状に関してどう考えておられますか。また、民主党政権においてクロスオーナーシップ規制の法制化が進んでいたにもかかわらず、結局見直し条項は削除された経緯がありますが、この件についての貴省の見解をお知らせください。

■質問3への回答
○ 現状、マスメディア集中排除原則に違反している放送事業者はありません。
○ ご指摘の、放送法等の一部を改正する法律案の附則に盛り込まれていたクロスオーナーシップに関する規定につきましては、国会における審議の過程で削除されたものと承知しており、総務省としては申し上げるべきことはございません。
○ なお、放送法等の一部を改正する法律案に盛り込まれていたマスメディア集中排除原則の基本的な部分の法定化は実施されております。

●質問4「テレビ局の外国人株式保有率について」
テレビ局の外国人直接株式保有率が、フジテレビに関しては29.59%であり、日本テレビは22.66%です。これは電波法第5条に定める外国人株主の比率、20%を大きく上回り、法的に問題がある状態です。またこの状態が2013年まで続くとこれらの放送局は免許取り消しとなります。この法的に問題のある状態について貴省ではどう考え、どういう取り組みをおこなっておられますか。

資料:テレビ局株式の外国人直接保有比率
日本テレビ 22.66%
TBS    7.19%
フジテレビ 28.59%
テレビ朝日 14.57%
テレビ東京 1.26%
参考)外国人保有制限銘柄期中公表
http://www.jasdec.com/reading/for_pubinfo.php


■質問4への回答
○ 電波法(第5条第4項)及び放送法(第159条第2項)においては、外国人等の議決権の割合が5分の1以上である場合が欠格事由(免許・認定の取消し事由)として規定されています(いわゆる「外資規制」)。
 ※ この電波法及び放送法上の外資規制は、ご指摘の株式の保有比率ではなく、議決権の割合で規定されています。名義書換拒否が可能であるため、議決権の割合は、ご指摘の株式の保有比率とは必ずしも一致するものではありません。
 ※ 各社の外国人等の議決権の割合は、参考としてご指摘いただいた(株)証券保管振替機構のウェブページの右欄にある「参考」の「表示する」からご確認いただくことができます(ポップアップで開いたページの最も下欄にある「外国人保有比率」と記載されている箇所です)。
○ (株)フジテレビジョン((株)フジ・メディア・ホールディングス)及び日本テレビ放送網(株)につきましては、直近の株主確定日(議決権の確定日)における外国人等の議決権の割合は5分の1に満たない旨の届出を受理しており、放送法及び電波法上の欠格事由には該当していない(外資規制に違反していない)と認められます。

●質問5「外国人による株式保有率が放送免許に与える影響」
2013年まで外国人による株式保有率が20%を超えるこの状態が続いた場合、フジテレビと日本テレビは放送免許取り消しがおこなわれる、という認識を貴省ではお持ちでしょうか。


■質問5への回答
○ 前述のとおり、現時点においては、(株)フジテレビジョン((株)フジ・メディア・ホールディングス)及び日本テレビ放送網(株)は、法律上の欠格事由に該当していません。


●質問6「特定の事業者による電波の独占について」
現在、放送用の電波は一部の放送局で長年固定的に独占されていますが、この現状に対する貴省の見解をお知らせください。

■質問6への回答
○ 電波法第13条により、免許を付与したものに対しては、免許の有効期間後に再免許を行うことができるとされています。
○ 放送事業者からは、免許の有効期間である5年ごとに再免許の申請が行われており、その都度、申請内容の審査を行っております。
○ また、新規事業者の申請により、申請が競合した場合には、公共の福祉に寄与するかどうかという観点から、比較により優劣を決めることとされています(基幹放送局の開設の根本的基準第10条)。
○ したがって、結果として、同じ者が放送を継続している事例もありますが、放送局の免許制度は、再免許時に審査を行っており、また、新規事業者の参入も可能な制度となっております。


●質問7「電波利用料は適切か」
テレビ局の電波利用料に対して、現在の利用料は適切だと考えておられますか? そうでないという場合、どのようにして適正化を図りますか。

■質問7への回答
○ テレビジョン放送局に対する電波利用料の料額は、他の無線局と同様に、使用周波数帯、使用帯域幅、無線局数等に基づいて決定されており、適切な金額であると考えております。

●質問8「電波オークション」
電波オークションの実施についてどう考えておられますか。

■質問8への回答
○ 現在、総務省では、総務副大臣主催の「周波数オークションに関する懇談会」を開催しており、オークション導入に際しての課題や方向性について、検討を行っているところです。

●質問9「テレビによってつくり出される流行について」
テレビ局が「ブームを捏造している」という問題提起もおこなわれております。まだ流行とはいえない現象をことさら大げさに「流行している」ように放送番組で扱い、ブームを作り出しているのではないかという指摘ですが、この件に関して貴省の見解をお知らせください。このようなブームの捏造はおこなわれていると考えておられますか。またそれに近い行為もまったくないという認識でおられますか。

■質問9への回答
○ 放送事業者の自主自律を保障する観点から、放送法(第3条)において、放送事業者には放送番組編集の自由が保障されており、原則として行政権が放送番組の内容には関与することはできないとされています。
○ したがって、放送番組の内容に関しては、コメントを控えさせていただきます。


●質問10「テレビ離れ」
ネットでのニュースサイトを中心に展開している弊誌読者には「テレビはもう持っていない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。貴省は現在、テレビ離れ(テレビ視聴者数の減少、総視聴時間の減少)は進んでいるとお考えでしょうか。また、テレビ離れが現実のもので会った場合、貴省としては何かテレビ離れが起きないような施策をおこなう可能性はありますでしょうか。

■質問10への回答
○ 近年、テレビ局の売上高が減少傾向にあることは承知しておりますが、第一義的には、放送事業者において取組が行われるものと考えております。

●質問11「テレビ局のあるべき姿」
今回のデモ抗議を通して、「テレビ局のあるべき姿」が問われていました。貴省の考える「テレビ局のあるべき姿」を教えてください。またその実現のために貴省はどのように取り組んでいかれますか。

■質問11への回答
○ 放送メディアとしては、地上放送、衛星放送、有線放送といった様々なメディアがありますが、それぞれのメディアがそれぞれの特性を生かして、多種多様な放送番組を提供することにより、全体として、国民にとって情報を入手する最も身近な手段としての機能を一層果たしていくことを期待しており、総務省としては、このような認識のもと、放送行政に取り組んでいきます。

【以上、総務省への質問と回答ここまで】


――ざっくり要約すれば「放送局に問題なし」という回答です。総務省は管轄官庁ですから、放送局に問題があれば立場上看過できません。つまり総務省から見て放送局は常に「問題のない状態にある」というのが当然であって、いろいろ質問をおこなってもその回答は当然ながら「問題はない」ということになってしまいます。しかし総務省の考え方等を再確認するという点では意味があると考え、いただいた回答をそのまま掲載させていただきました。

(株)フジテレビジョンからのご回答もお待ちしております。

※ガジェット通信ではこのような形で関連する省庁や企業への取材などをおこなっていますので、記事に関連してみなさんがきいてみたい質問などあればコメント欄に書いておいてください。質問の際の参考とさせていただきます。

参考)
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