「初音ミク」で有名になったボーカロイド。パソコンにメロディーと歌詞を入力するだけで、人間の声を元にした歌声を聞かせることができる音声合成ソフトのことです。その手軽さから、「P」と呼ばれるアマチュアの音楽家たちが、動画投稿サイト「ニコニコ動画」(以下、ニコ動)を中心に多数の作品を公開しています。

 そのなかにはクオリティの高い作品も多くあり、新たな才能が次々と発掘され、多くのクリエーターたちがメジャーシーンへその活動の領域を広げています。

 書籍『悪ノ間奏曲』(PHP研究所)の著者、悪ノPさんもそのひとり。悪ノPさんは、「初音ミク」を製作したクリプトン・フューチャー・メディアの「鏡音リン・レン」という音声合成ソフトを使用し、2008年4月に「ニコ動」に「悪ノ娘」という作品を投稿。西欧の中世時代をモチーフにした物語が展開する壮大な世界観と悲劇性が話題を呼び、続編の「悪ノ召使」と合わせて現在までに420万回以上の再生数を記録しています。

 わずか数分の楽曲に過ぎない作品でしたが、そのクオリティの高さと独特な世界観はネットを中心に多くのファンを獲得しました。2010年8月には悪ノPさんが自ら筆を執りその世界観を描いた小説「悪ノ娘 黄のクロアテュール」、翌年2月にはその続編「悪ノ娘 緑のヴィーゲンリート」をPHP研究所より刊行し2冊の累計で30万部を超えるヒットノベルとなったのです。この人気は多感な中高生などの若年層からの支持が圧倒的でファンレターやブログのコメントなども中高生からが多いとか。学校の文化祭で演劇として「悪ノ娘」を上演したいという問い合わせも多く、今年の冬に行われたサイン会には修学旅行を利用して駆けつけた熱心なファンもいたそうです。

 書籍『悪ノ間奏曲』はそのノベルシリーズ累計発行部数30万部を記念して刊行された、「悪ノ娘」シリーズの初の総合ガイドブック。作品世界の解説や書き下ろしの新作短編やイラスト、マンガなど盛りだくさんの内容となっています。同書のなかで著者の悪ノPさんは、「悪ノ娘」に寄せられる多感な若い読者からの様々な考察について、「面白いですよねー。でも、たまに作者が考えている以上の深い考察もあって、若干ドキドキします」と語っています。

 たった1つの曲から広がりをみせる「悪ノ娘」。短い楽曲に濃密な世界観が組み込まれていたからこそ、聞き手や読者の想像力を刺激し、多くの、特に若いファンに愛される作品になったのでしょう。もはやボーカロイドによって生み出された音楽は、若い世代に支持される新世代の文化として進化しているようです。



『ニコ動発ボーカロイド小説が累計30万部突破!−中高生など若い世代に圧倒的な支持』
 著者:悪ノP
 出版社:PHP研究所
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