企業の情報発信を学生あがりの連中に任せてみたらどうなるか

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こんにちはエステー特命宣伝部長の高田鳥場です。皆さん、なだぎ武さんがあのアメリカ人キャラ「ディラン」として登場した「ぷくポン」のCM「ディランと家族」篇(http://www.st-sendenbu.com/story/episode/pk01.html)のオンエアを開始しましたが見ていただけましたか〜。今回は「ネット上で他人に自社の宣伝をしてもらう」ということについてお話します。

私は最近、もはやネット上に飛び交う自社情報は誰にも統制できないと思うようになりました。いえ、「統制」という考え方自体おこがましくて、こちらはネットという自由な空間にネタを提供するだけで、何を書かれようがそれは元ネタの良し悪しが影響するわけですよ。

2000年代前半には、企業に関する情報は全部自社で「統制」しようとしていたと思います。2ちゃんねるに悪いこと書かれたから消してもらう方法はあるのか…。アマゾンのレビューがひどいけどどうやって消させようか…。

【エステーでは学生あがりの連中が勝手に情報発信している】

そんなことに多くの企業が悩んでいましたが、ここまでソーシャルメディアが発展したらもはやそんな時代ではないでしょう。私は常々「もはや企業関連の情報は企業が自ら発信するだけでなくてもいいんじゃないの?」とも思ってきました。

そんななか、生まれたのが「勝手にエステー宣伝部(http://www.st-sendenbu.com/katteni-st/)」です。エステー宣伝部ドットコムのサイトの下部レイヤーに存在するのですが、正式名称は「宣伝部長ほぼ公認 飲み屋で出会った学生あがりpresents 勝手にエステー宣伝部」ですね。

ここでは、「学生あがり」の連中が消臭力のミゲルのレポートをしたり、会議の内情を書いたり、ミゲルのお宝写真を公開しています。ヤフー・トピックスで消臭力のCMが紹介された時も彼らはツイッターで「CM好感度1位の記事、今ヤフーのトップにきてます!!!! フ〜!!!! 」などと告知をします。

かと思えばツイッターで「ミゲル様@名古屋レポート後編、勝手にアップです!」なんて勝手にやっては私から「おまえ!ミゲルの貴重な写真を勝手に温存してたな!」と怒られ、「へへへw とはいえ、今回でかなりバラまいてしまいました…これからどうしよう。」と切り返したんだか心配しているんだか分からないリアクションを取る。本来企業の秘匿事項もツイッター上で可視化し、上司が部下を叱るように「お前ら!」と言えば「すいません!」と謝られる。

一見自由にやっているように見えますが、私は彼らに情報発信をするにあたってレギュレーションを作りました。それは、

「誰かを傷つけること、不快にさせることは書くな。誰かを絶対に攻撃してはならない」

これだけです。そして例として挙げたのは、例えば「『ドリアンが臭かった』と書いてはいけない」ということですね。だって、ドリアンを売っている人にとってはあまり嬉しくないかもしれないから。でも、「冷蔵庫に腐った肉があって臭かった」だったらOKです。なぜかというと、それは彼らの過失なわけで、“自虐”だからです。

これだけがレギュレーションで、あとは自由にエステーのことを宣伝してくれ、材料は問い合わせてくれれば渡すから、と伝えて彼らにお任せすることにしたのです。もちろんお仕事としてお金は払っていますよ。

【「学生あがり」との出会いは飲み屋だった】

彼らはとあるイベントに出演した後の飲み会で出あった若者3人で、「エステーのCM大好きなんですぅ〜、勝手に宣伝してもいいですか?」と言われたので、「勝手にしろ!」と答え、このサイトを作ってもらい、日々情報発信してもらっています。

その飲み会の席で、彼らは普段からさまざまなコンテンツを作っていると言いました。聞くと大学時代から一緒に雑誌やウェブサイト上のコンテンツを作っていたのですが、そのまま就職せず、自分たちの会社を立ち上げたのだそうです。

人に何かを伝える“コミュニケーション”という分野で、自分の技だけで生活をしようとしている立派なヤツらだと思いました。一方で、彼らは社会の中で、社会人として、組織として研修も受けていません。顔形はどう見ても子供っぽくて学生だし、ヒゲは生やしているし、こっちがスーツを着ているのにTシャツでやってくる!

まったくもって学生の延長なんですよ。でも、彼らがやっていることは、プロでなくては生きていけない厳しい世界のことです。私はこのアンバランスなチームに惹かれていったのです。

宣伝部にいると、「HPを作りたいです!」とか「動画を作りましょう!」みたいな売り込みは年間に少なくとも100件以上は来ます。でも、彼らのウリ文句が、「私どもは、○○社や××社をやっています!」という「大手の仕事をやっています」ということばかりなのです。

そんなこといわれても、「すごいね、でも、だから?」となります。「ウチのサイト見ました?」と聞くと「見たことない」となる。彼らはあくまでも「大きな会社の仕事をやっている」がウリでしかないのです。私なんてそこで皮肉で「あぁ、そぉ、だから、○○社のHP、たいしたことないんだ。君たちがやってたの、あれだけの予算があるのにね……、今合点がいったよ! あんたらがやっていたのか!」と言ってしまいます。

本来ネット上の企画って新しいことをどんどんやらなくてはいけないのに、彼らは売り込みのときは権威主義でやっているのです。これが情けなくてね……。でも、「勝手にエステー宣伝部」の連中は全く権威と関係ないところで動いてきました。「権威」の方々とも仕事はやっているとは思いますが、そこをおくびにも出さずにあくまでも学生上がり風で居続ける。ここが気に入ったのです。

【コミュニケーションで重要なのは「何かを伝えよう」という熱意】

彼らは喋ってみると、技術があるのかないのかは正直分かりませんでした。本当にできるのかも分かりませんでした。でも、「何かを伝えよう」という熱意は伝わりました。ネット上で「何を伝えようか」というのに技術はいりません。あくまでも重要なのは「伝える気持ち」です。その気持ちがないのに大企業の仕事をしていることだけを自慢する人とは仕事はできません。

エステーの宣伝コミュニケーションの基本は「目線の低さ」です。決してエラソーにはせず、「どうですか! 面白いと思っていただけましたか…」というのがエステーの基本です。その基本と彼らのキャラクターは似ていたんですよ。

彼らに「目線を下げろ」とは言ったものの、彼らは元々下がっていて、地べた這っていたから、あげようにもあげられなかったんですよね。組織人としての経験を積んだ人にはそこらへんをみっちりと伝えなくてはいけないのですが、彼らに対してはそのチューニングが全くいりませんでした。

そして、喋ってみると、意外とボキャブラリーもあるし、面白い文章書くので「お前ら、なんなんだよ! そんな学生あがりなのにやるじゃん!」とちょっと驚いたほどです。そうしたら「勝手に宣伝部員」のAが「僕は文学部ですよ!」とかいうんですよ。「お前、学部を言いだすとはそこだけはプライドあるんだね。お前、そこしか自慢することないんだろ」と二人して笑いあいましたね。

いや、こうやって他人に情報発信を任せることって本当は怖いけど、こういうものってのはやってみないと分からないから、やってみようと思ったんです。「ネットだから情報コントールできない」ではなく、元々コントロールできないものなんです。コントロールできるものは、「どの情報を出すか出さないか」だけです。あとは受け手に委ねる。TVも新聞もネットも一緒です。問題はどのネタを出すか出さないかの判断だけです。

さまざまな企業がネットでの情報発信を何かと恐れ、「じゃあ、出すのをやめよう」となり、結果的に貴重な情報・人を楽しませるはずだった情報を出さなくなりました。

【企業は「恐いから」とコミュニケーションを逃げるべきではない】

企業はコミュニケーションしてナンボなんですよ! 恐いから、変な風に思われたらイヤだから…とコミュニケーションを躊躇するかもしれませんが、重要なのは「書いては困ること」を決めることです。

だからこそ彼らには人が嫌がること、人を悪く言うこと、いじめるようなこと、社会通念上よくないことは書くな、とだけ伝えたのですね。

あと、私が信用したのは、ネットって、変な人たちも当然いますけど、その辺を歩いている中にだって変な人はいるわけですよ。ネットだからってワケでもなく、新聞を読んでいる人だって、立派な会社に勤めている人だって、変な人は必ずいる。

「ネットは変な人が多い」って叩く人もいますが、ネットには善良なる市民も当然います。そういった人たちには企業の情報発信だって色々託したいです。消臭力のCMを作ったのはネットの善良なる人々でした。それはすでに証明されています。

私にはその経験があったからこそ、「勝手にエステー宣伝部」にしても「学生あがり」の連中が善良だったからこそ託すことにしました。ただし、そこから生まれたものについては、自分が責任をとらなくてはいけません。

これまでに何度かツイッター上で「勝手なことするな」と彼らに言ったことはありますが、それは出してはいけないことを彼らが書いた時です。「お前、後で報告しようとしていたんだよ…」といった類のものですね。消臭力のCMにアカペラバージョンがあることを彼らがツイッターでバラしたのですが、その時は

「お前ら、言っちゃダメだよ! アカペラバージョンあるじゃんって!」

なんて私が言い、実は私の方が拡散させちゃったのです(笑)。でも、あのやり取り、私は好きです。皆さんが見ている前で企画が立ち上がる様を説明し、時に上司と部下のような「バカ!」「すいません!」とやりとりをする。

果たして他人に「勝手に」企業の情報発信をしてもらうことがどんな結果をもたらすのか? 私にはまだ分かりませんが、しばらくはこの状態を楽しみ、何か新しいものが生まれることを期待しています。

文/高田鳥場(エステー特命宣伝部長)

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