第93回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)で準優勝した青森県代表の光星学院高等学校でこのほど、野球部員3人が昨年12月に飲酒をしていた事実が発覚した。

 3人はいずれもベンチ入りし、試合にも出場していた。3人は昨年末に帰省した際、それぞれ別に飲酒。ブログに飲酒したと書き込んだ部員がいたことから、外部から指摘で発覚した。3選手も、飲酒の事実を認めている。

 同校の規定では、飲酒した部員は停学になる。法官新一校長は会見で、「野球を愛する者たちへの背信行為。指導が至らなかった。高野連の指導の下で今後の対応を決めたい」と謝罪した。

 青森県高等学校野球連盟から一報を受けた日本高等学校野球連盟竹中雅彦事務局参事は、「報告書を見ないことには現段階では何とも言えません。しかし、学校で甲子園準優勝の報告をした日に不祥事の発表をするとは前代未聞…」と絶句。さらに、「 学校が早い時期に把握していたなら問題。(部員の)ブログには上級生の暴力のことも書いてあるらしいので、全てを調査してほしい」と話した。

 光星学院は、青森勢として42年ぶりの準優勝に輝き、22日午前に母校に戻った野球部員は「夢と勇気と感動ありがとう」の横断幕が掲げられる中、600人の職員や生徒、OBらに出迎えられていた。

 しかし、数時間後に飲酒問題が発覚するすると、学校側は予定していた青森県庁や八戸市役所などへの表敬訪問を取りやめた。同校のある八戸市役所も、準優勝を称える看板を玄関に設置する予定だったが、中止すると発表した。

 高校球児の不祥事は、今回が初めてではないが、何度見てもこの手ニュースには後味の悪さを覚える。一時の好奇心に負け周囲に多大なる迷惑をかけた部員には大いに反省を求めたい。また、学校側の発表がなぜ甲子園大会終了まで遅れたのか、徹底的に調査してもらいたい。

 だが、それ以上に気にかけているのが、飲酒の事実を認めた3人の部員を含む野球部員の心のケアだ。

 日本学生野球憲章は、「国民が等しく教育を受ける権利をもつことは憲法が保障するところであり、学生野球は、この権利を実現すべき学校教育の一環として位置づけられる。この意味で、学生野球は経済的な対価を求めず、心と身体を鍛える場である」と、学生野球が教育の一環であることを強調している。

 だが、高校野球がビジネスの場になっていることは否めない。球場のネット裏にプロ野球のスカウントが陣取っている光景は今に始まったことではないが、最近はこれに、米メジャーリーグのアジア地区担当のスカウトが加わった。
 彼らは、スピードガン、スコアブック、ストップウォッチなどを片手に、将来のスター選手の発掘に血眼になっている。

 学校側も、高校野球が持つブランドを最大限に利用している。 新設高校がスポーツを広告塔として捉え、優秀な成績をおさめることで経営の安定化を狙うのは今に始まったことではない。だが、2000年からは、伝統あるブランド高校もスポーツの価値に気がつき、スポーツ推薦枠を設けるようになった。

 少子化が進む昨今、学生の確保は容易ではない。そんな中で、国民の多くが注目する高校野球は、彼らには格好のPRの場だ。

 メディアも毎年、高校野球にスポットを当てる。試合の結果や内容を紹介するだけでは飽き足らず、中には学校や選手のエピソードを取り上げ、視聴者に感情移入を促すメディアもある。特に今年は、3月11日に発生した東日本大震災と結びつける内容が多かった。

 ボクもこの手の番組を好んでみるが、ふと、報道が特定の高校に変更していないか実像以上に誇張されているのではないかメディアが視聴率を上げるために高校野球を利用し過ぎているのではないかと思うことがある。

 高校野球には他にも、越境入学選手とプロ野球のスカウトの橋渡しなどから、野球賭博までと、金銭にまつわる話題に事欠かない。

 高校野球は今やビジネスの場と化してしまったが、一方で高野連は未だ教育の一環と主張している。

 この矛盾に翻弄されているのは、グラウンドで汗する高校球児たちだ。自らのあずかり知らぬところでヒーローに祭り上げられ、全国から注目される。その期待に応えられなかったら、いっきに背を向けられる。不祥事を起こそうものなら、犯罪者のように叩かれる。とても、高校生が耐えられる環境ではない。

 乱暴な言い方をすれば、今回の飲酒事件も、学校が甲子園大会に出場したことで問題が大きくなった。普通の高校生なら、ちょっとした好奇心で済まされたことだろう。だが、周囲が球児たちをヒーローにし、そして犯罪者のような扱いをしている

 高校野球がビジネスの場と化すことについて、高野連は見て見ぬふりをしている感は否めない。日本学生野球憲章にあるように、学生野球が教育の一環なら、高野連は球児たちが周囲に翻弄されぬよう、守っているはずだ。

 飲酒の事実を認めた3選手には、24日も処分が下されるそうだ。学生野球が教育の一環なら、彼らをトカゲの尻尾きりのように切り捨てることだけは、絶対にやめてほしい