第93回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)は、西東京代表の日本大学第三高等学校が10年ぶり2回目の優勝を果たし、幕を閉じた。

 青森県代表の光星学院高等学校との決勝戦では、13安打11得点と打線が爆発。投げては、光星打線を5安打、無失点に抑えた。


 高校野球と言えば、打者走者の1塁へのヘッドスライディング。打ち取られた弱い当たりにも、1塁へ全力疾走。ユニフォームを真っ黒に汚しながら1塁に頭から滑り込む姿は、見る者の心に訴えかけるものがある。

 そんな1塁へのヘッドスライディングには、賛否両論の声があがっている。反対派は、ヘッドスライディングよりも、1塁を駆け抜けた方が早いと主張する。
 鳥越規央著「9回裏無死1塁でバントはするな」(祥伝社新書)でも、1塁へのヘッドスライディングの有用性を疑問視している。鳥越氏は、「ヘッドスライディングで短縮できる時間が0.1秒に満たないのであれば、それほど判定に影響を与えるとは思えない」としている。

 鳥越氏はさらに、ヘッドスライディングの怪我のリスクも指摘している。これには新旧の盗塁王も支持している。
 盗塁王13回、日本記録の通算1,065盗塁の記録を持つ元阪急ブレーブス(現オリックスバファローズ)の福本豊は、「僕は盗塁するとき、1度もヘッドスライディングをしたことが無い」と現役時代を振り返っている。
 福本は現役引退後、オリックスブルーウェーブの打撃コーチ、2軍監督、阪神タイガースの打撃コーチや守備走塁コーチを歴任したが、選手には、牽制時の帰塁の際、手からではなく、足から戻るよう指導したそうだ。

 2007年から4季連続盗塁王に輝いた埼玉西武ライオンズの片岡易之も、「ヘッドスライディングで怪我をした記憶があるので、それからはあまりしていない。肩を脱臼したり、大きな怪我が多くなってしまうので、僕はなるべく足でスライディングした方がいいと思う」と話している。

 たしかに、人間の構造上、足は手や頭より丈夫にできている。手や頭から滑り込むより、足でスライディングした方が、怪我のリスクは低い。足から滑り込めば、相手野手に威圧感を与えることもできる。(スパイクの刃を立てるのは反則だが)

 だが、そんなヘッドスライディングだからこそ、見る者に感動を与える。高校野球の最終回2死、最後の打者が、1塁に駆け込んでアウトになるより、ヘッドスライディングで執念を見せた方が絵になる。判定がセーフになれば、味方の士気も高揚する。

 ヘッドスライディングが絵になるという意味では、むしろプロこそヘッドスライディングを推奨してはどうだろうか。
 プロ野球は言うまでも無く、ショー・ビジネス。われわれファンは、選手の常人離れしたプレーを目当てに、球場に足を運んでいる。
 その際、現役時代、わざと大振りをしてヘルメットを飛ばした長嶋茂雄ではないが、勇猛果敢にヘッドスライディングを試みてファンを沸かす選手がいてもいいのではなかろうか。(もちろん、怪我をしないことが前提だが)

 以前、シアトル・マリナーズのイチローが1塁へのヘッドスライディングについて、福岡ソフトバンクホークスの川崎宗則に苦言を呈したことがある。
 イチローにはイチローなりの美学があるのだろうが、ファンは美学と同時に、選手のガッツ溢れるプレーを望んでいる。
 少なくと、打ち取られた打球で1塁への全力疾走を怠る選手よりも、ユニフォームを真っ黒に汚しながら、懸命に1塁に手を伸ばす選手の方が、僕は格好がいいと思う。