商魂たくましいメジャーリーグ名門球団

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 8月は野球シーズン真っ盛り。日本プロ野球でも、そしてアメリカのメジャーリーグでも熱戦が続いていますが、今年のメジャーリーグは、ロサンゼルス・ドジャースの経営難やオーナー夫婦の泥沼の離婚訴訟など、野球以外の話題も取りざたされたのは記憶に新しいところ。
 ドジャースは残念ながら経営に失敗しましたが、元々多くのメジャーリーグ球団はビジネス感覚に優れ、斬新なアイデアを実行することで売上を伸ばしています。1995年〜2010年の15年間を見ると、日本プロ野球の年間売上高が約1200億円でほぼ横ばいなのと比べて、MLBは約5倍になり、2010年は70億ドルに達しています。

 今回は『勝負は試合の前についている! 米国スポーツビジネス流「顧客志向」7つの戦略』(日経BP社/刊)の著者である鈴木友也氏が「この10年間で、経営革新に最も積極的に取り組んだMLBの球団」に挙げている、ボストン・レッドソックスの手法を紹介します。

■施設の老朽化を逆手にとったブランディング
 レッドソックスは、ヘッジファンドで財をなしたジョン・ヘンリー氏による球団買収を境に、球団経営のノウハウを磨き、効率的にキャッシュを生み出す仕組みを確立しました。
 ヘンリー氏がまずしたことは、「球団」という商品を軸にビジネスを展開する持ち株会社であるフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)を立ち上げること。これによってヘンリー氏は古い球団にありがちな“保守体質”の経営からの脱却を図り、球団や球場、テレビ局、マーケティング会社などを次々と傘下に収めていきました。

 ヘンリー氏が球団の収益拡大に際して、重視したのが「球場」。
 レッドソックスの本拠地、フェンウェイ・パークが建設されたのは1912年、実に100年近くの歴史を持つ古い球場です。それもあって、ヘンリー氏が球団買収に名乗りをあげ、他の投資家グループとの競合になった際、多くのライバルたちは新球場の建設を主張しましたが、ヘンリー氏は古くても伝統のある球場が、カネを生み出す「仕掛け」として機能すると判断し、「伝統のある」、「ノスタルジック」なイメージを高めるブランディングを行っていきます。
 そのブランディングに基づいたスタジアムツアーを企画したり、球場付近に古きアメリカを再現するような飲食店街を作るなどして、ヘンリー氏は試合のない日でもお金が入る仕組みを生み出すことに成功しました。

■テレビ局を最大限に活用する
 前述のFSGはニューイングランド・スポーツ・ネットワーク(NESN)というローカルテレビ局を傘下に収めており、この局を有効に使った球団プロモーションは大きな効果を上げました。
 特に効果的だったのが「ソックス・アピール」名付けられたデート番組。フェンウェイ・パークで野球観戦をしながら気に入った異性を探すという趣旨のこの番組ですが、チームの公式ファンクラブに加入していることが参加条件となっていることで新規ファン獲得の効果があったと同時に「球場=楽しいデートスポット」というイメージを植え付けることができました。また、番組の宣伝にはレッドソックスの選手が登場してウラ話を披露するということで、野球ファンの関心も引き付けることができ3重の意味で球団のプロモーションになったのです。

■厳しい制約の隙間を縫ってビジネスチャンスを作る
 MLBにはフランチャイズ権による厳しい制約があり、原則として各チームは規定された地域外でメジャーリーグ関連ビジネスを行ってはいけません。しかし、レッドソックスはFSM(フェンウェイ・スポーツ・マネージメント)という別会社を作ることで、既定外の地域でも収益を上げることに成功しています。

 本書には、MLB以外にも例を挙げ、アメリカのスポーツビジネスのマーケティング手法や顧客開拓のノウハウを紹介しています。実にたくましく、エネルギッシュにビジネスチャンスを作り出していくアメリカ人のバイタリティは、私たちも見習うべきなのかもしれません。
(新刊JP編集部/山田洋介)


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