東日本大震災の津波でなぎ倒された岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」のマツの木を、千葉県の成田山新勝寺で「護摩木」と共に焼いて供養することが報道されると、「核廃棄物を持ち込むことは許さん!」などといった苦情が寺に押し寄せた。陸前高田市のマツを管理するボランティア団体にも抗議が来ている。

   陸前高田市やボランティア団体からは、市への非難や風評被害が広がるばかりで、「もうそっとしてほしい」といった悲鳴が挙がっている。

「皮は薪にはしないのに」と地元は憮然

   市やボランティア団体は、マツを巡る騒動でバッシングに晒されていることに頭を抱えている。今回の騒動のあらましはこんな具合だ。

   陸前高田市のマツを管理するボランティア団体によれば、2011年6月に大分県の芸術家から、京都「大文字」で使うマツの木切れが欲しいといわれ、市と協議して提供を決めた。木切れに被災者の願い事を書いて欲しいという申し出については、市民は復興で忙しい中、疑問もあったが、震災で亡くなった縁者を思い、また自分達への心遣いに感謝して応じることになった。「生まれ変わったらまたあなたと再会したい」などと書かれたものが400本近く集まった。

   しかし、京都では放射能を心配する府民からの反発が出て、大文字保存会は2011年8月6日、陸前高田市のマツは使わないと発表した。

   すると今度は全国から、京都への非難が殺到したため、一時は「大文字」をはじめとする五山の保存会が薪に使うと発表。マツの放射能の検査が条件だった。検査してみると表皮に1キログラムあたり1130ベクレルの放射性セシウムを検出、再び中止が決まった。

   ボランティア団体によれば、最初の「大文字」で使うマツは京都の関係者や自分達が検査しても放射能は出なかったという。それは、マツの皮を取り、薪として使えるよう加工した後だったからだ。次に行われた検査では、加工していないマツが運ばれ、皮と内側を別々に検査。内側は大丈夫だったが皮から放射能が出た。ボランティア関係者は、

「皮は薪にはしないため、今回の検査でよかったのだろうか?」

と首をひねる。しかし、今回の検査で京都に対する非難が沈静化したのは確かだ。

「燃やしても全く人体に影響はない」

   ちなみに、放射線影響研究所に問い合わせてみたところ、野菜や肉、魚などについては、放射性セシウムが1キロあたり500ベクレルを超えるものは食用にしないという国の基準値がある。今回のマツの皮は1キログラムあたり1130ベクレル。約2倍の数値だが、皮を食べることはない。

「不安だという気持ちはわかりますが、燃やしたとしても全く影響は出ないでしょう」

と話している。

   そうした中、11年8月15日、千葉県の成田山新勝寺で9月25日に行われる伝統行事「おたき上げ」で、願い事が書かれた札「護摩木」とともに陸前高田市のマツがたかれると報道された。すると15日の昼過ぎまでに新勝寺に30本近い問い合わせが来た。批判が多く「核廃棄物を持ち込むことは許さん!」といった過激なものまであったという。

   新勝寺によれば、マツを燃やすことを決めたのは京都「大文字」が話題になる前で、同じ宗派である陸前高田市の金剛寺が「おたき上げ」でマツを供養することを知り、賛同したことがきっかけ。マツは金剛寺から長さ90センチ、4.5センチ角のものを20本から30本提供を受ける。批判が寄せられていることについて新勝寺では、

「まずは放射能の検査をします。検出されればマツは燃やしませんが、拝むという形になるかもしれません」

と話している。

   この新勝寺の件で、再び陸前高田市のマツに対する非難が始まっている。先のボランティア関係者の電話には、

「どれだけ日本に放射能を拡散させたいんだ!」

などといった抗議が来ているという。

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