「交通安全協会」の謎

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マンションの掲示板に、「交通安全区民のつどい」というタイトルのチラシが貼ってあった。9月下旬の「秋の交通安全運動」を啓発するイベントのようだ。9月7日に浅草公会堂で実施される。

出演者は、「水戸黄門」こと里見浩太朗さん(トークショー)、浅草追分社中(津軽三味線)、そして春雨や雷蔵さん(落語)。どう見ても老人向けのイベントだと思ったら、プログラムのなかに「高齢者交通安全教室」があった。

はじめは、「こんなイベントやるより、自転車に乗る子どもにヘルメットをかぶれと啓発したほうがいいじゃん。どうせドライバーの金を使ってるんだろうから」と思ってチラシを読んでいた。しかし、「主催者」と「申し込み方法」の部分を読んでいたら、別の疑問を抱いてしまった。

主催は、「台東区交通安全協議会/台東区内 各警察署/台東区内 各交通安全協会」となっている。なんか、ぐだぐだでよくわからない。調べてみると、「台東区交通安全協議会」は「台東区」が設置した組織で、次が区内四カ所(上野、浅草、蔵前、下谷)にある警察署、そして最後に警察署と同じ四カ所に交通安全協会がある、ということがわかった。

さらに、申し込み方法は「町会交通部長を通じて、各交通安全協会に申し込んでください」とある。この一文を読んで、まず、町会(町内会)に「交通部長」なるポジションがある、という発見があった。次に、町会と交通安全協会は親密な関係にあり、前者は後者の出先をやっているということが理解できた。

ところで、交通安全協会というは、あの運転免許試験場などで免許の更新を手伝ったり証紙を売ったりしている組織だったような……。他にも、交通安全運動を開催したり、交通安全グッズを配ったりもしている。とりあえず、冒頭のイベントが交通安全運動の一環として、交通安全協会と台東区、そして警察署が共同で開催する点はクリヤーになった。

だが、交通安全協会を調べれば調べるほど謎が深まっていった。元締めは、全日本交通安全協会という「財団」の組織なのだと思う。各都道府県にもそれぞれ「財団」の交通安全協会がある。問題は、都道府県の下部組織にあたる市町村と、さらに細かく分割された地域ごとの交通安全協会だ。

千葉県を例にしてみよう。県内には44地区の交通安全協会があるのだが、そのうち財団または社団の法人格を取得しているのは船橋をはじめ5つの地区に限られる(「財団」が3、「社団」が2)。ならば、残り39の地区にある交通安全協会は、町内会と同じレベルの有志による組織なのだろうか、県の下部組織なのだろうか。よくわからない。

組織の謎だけではない。考えてみれば、業務内容についても、警察がやればいいような仕事をわざわざ交通安全協会がやっているようにしか見えない。また、警察幹部の天下り先であることは言うまでもない。そんな組織を日本全国に網の目のごとく張りめぐらせて、得をするのは天下りした退職警官だけなのではないか。

なんとなく知っているけれど、実際には何をやっているのかわからなかったり、どんな形態なのかわからない組織が世の中にはけっこうある。交通安全協会という組織も、そんな謎の組織であると筆者は感じた。とにかくどんな組織であれ、言いたいことはただ一つ。それは、人から集めたお金を目的以外に使用したり、無駄に使用しないでほしいということだ。

(谷川 茂)