いよいよ看板建築のカンバンを凝視してみる

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看板建築の「カンバン」そのものをじっとみてみる。結構いろんなパターンの形があるものだ。

■看板建築をじっと見てみよう


そろそろ看板建築ときちんと向かい合ってみようと思います。

なんていきなり書き出すと「あなたは看板建築の担当講師として今までいいかげんに向かい合ってきたのか!」とツッコミが入りそうですが、実はこの1年、看板建築について正面から見てきていなかったのです。

過去には
 じっと近づいて素材に着目してみたり、(→バックナンバーはこちら
 斜め横から見て「看板具合」を分類してみたり、(→バックナンバーはこちら
してきましたが、そもそものカンバン全体をとらえていませんでした。

そこで、今回からしばらくはカンバンそのものに注目した記事を書いてみたいと思います。

■看板建築のカンバンの特徴


看板建築のカンバンにはどのような特徴があるか、今まで何度か触れてきたテーマとしては、「実際には木造が多い」「建物の後部は和風建築だが正面だけ洋風」「建物が2階建てでもカンバンの高さは3階分くらい」「防火の観点などから石やモルタルや銅板で覆われる」といったところでしょうか。

今回は、一歩進んで「そもそものカンバンの形状」「カンバンに行われる装飾」「屋号等の文字」「戸袋等の細工」などを見ていこうと思います。それぞれ着目点を簡単に触れておきますと、以下のとおりです。

「そもそものカンバンの形状」…今回のテーマですが、カンバンそのものの形に注目します。
「屋号等の文字」…やはり商店建築である以上、屋号を飾らなければいけません。看板建築といってもトタンにペンキ文字で看板を掲げているものは実は少数です。今でも残存している屋号の文字を研究してみます。
「カンバンに行われる装飾」…単なる板状のカンバンを立てつける例もあるが、洋風建築に見られる細かい装飾をつけて、より洋風建築を偽装する例があります。様式は様々で、ここに注目してみます。
「戸袋等の細工」…洋風を目指しても和風の窓の作り、特に雨戸を収納する戸袋がファサード部分に残っていることがあります。このとき、戸袋に江戸小紋や幾何学的模様を刻む「洒落」た建築がありますので、調べてみます。

要するに「4回分のネタのストックを公開!」ということなわけですが、それぞれ看板建築鑑賞の楽しみの紹介でもあります。それでは今回は「カンバンの形状」について考えてみます。
kanban110813B
(写真B)□型ファサード。今までよくみてきた看板建築の例。素材もモルタル、銅板など様々だ。大半は□型。


■基本的な形は□型、時折凸型


私がいろいろ看板建築を撮影してきて、そもそものカンバンの形状を分類してみると「□型」「凸型」「変形型」くらいに分類できると思います。

【□型】……単純に四角形のファサードです。8割方はこの形だと思います。和風の屋根は△になりますが、洋風といえば□になる、という当時のイメージが伝わってくるようです。細工としても簡単なので、採用しやすいということもあるでしょう。
ただし、装飾・細工の有無を見ると千差万別で、ただ単に板一枚、というようなものから、洋風の凝った装飾を施したものまで□型も鑑賞の幅があります。路地裏に回って見上げてみないと、石造の本格的な洋風建築に見えるような例もあります。
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(写真C)凸型ファサード。装飾を凝らした、こだわりの物件が多く見応えたっぷり。


【凸型】……凹凸の凹型というものはあまりみかけないのですが、凸型は比較的見られます。建物の高さを強調する形状ということでしょうか。さらにもう一段、凸を描いている物件も時々みかけます。
凸型の場合はただの板一枚、ということはあまりありません。デザインそのものが凝っていることもありますが、さらに装飾を伴うことが多いようです。といいつつ、ただの板一枚なのに、凸型に切り抜いている看板建築もあるから、奥が深いところです。
ちなみに、△状の屋根の形に合わせ凸状のカンバンを作り、後ろに隠している、という関係はないようです(このあたりはもっと観察が必要です)。

【変形】……とりあえず、□型と凸型以外を「変形型」とグループ分けしてみました。ここに紹介したパターンではごくまれにみかける凹型や半円を乗せている形状があります。以前紹介したマンサード屋根も特殊な例のひとつです(→バックナンバー http://michikusa-ac.jp/archives/2671245.html )
変形型については、オーナーが大工と相談して「隣の○○さんとは違うヤツを作ってくんな!」とこだわりを見せたのではないかと推察しますが、真相は定かではありません。
たぶん、数%くらいしか割合はないと思いますので、見かけたらぜひその変形具合を堪能したいところです。
kanban110813D
(写真D)その他、特殊な形状も発見の楽しみがある。こだわってオーナーが作った雰囲気が偲ばれる。


■ファサードの形状を楽しもう


看板建築を見上げるときは、ファサード(前面)の意匠を楽しむのが基本です。というのは後ろから見上げたり、横から見上げるようなことを看板建築は想定して作られていないからです(といいつつ横や後ろから見上げることも楽しみのひとつですが)。

看板建築は、個人商店のオーナーが、見栄を張って洋風建築を作った結果です。ぜひその見栄っ張りが現れているファサードを正面から着目してほしいと思います。

今回は、「ファサード特集第一弾」として、その形状に着目してみました。次回もお楽しみに。


[今回の撮影地]
墨田区緑、品川区北品川・戸越、千代田区神田須田町・神田神保町・神田小川町・飯田橋、中央区日本橋堀留町、文京区根津、世田谷区池尻、台東区入谷・池之端、北区赤羽西



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