教え方が上手な人とはどんな人?――石田淳さんインタビュー(3)

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 部下に仕事を教えるのは上司の役目。しかし、どのように教えればよいのでしょうか。
 石田淳さんが上梓した『教える技術』(かんき出版/刊)は、行動科学の知見から、上司が部下に仕事内容を教える際に何をすべきなのか、何を重要視すべきなのかを教えてくれる一冊。転職が当たり前になった時代に、普遍的に使える「教える技術」は身につけておくと必ず重宝するはずです。

 今回は、石田さんへインタビューを行い、どうして今、「教える技術」が必要となっているのか、「行動科学」とは何かなど様々な質問をぶつけてきました。今回は最終回となる後編。石田さんが今までに思った「教えることが上手い人」とは一体?

―後編:石田さんが思った“教えることが上手い人”とは―

―石田さんご自身、たくさんの方々に教えてきたと思います。その中で、「ああ、あれは失敗だったな」と思うエピソードはありますか?

「失敗したエピソードはたくさんありますが、やはりまだ教える技術を身につけていなかった時代、自分の会社の社員に対して抽象的な指示をし過ぎていたというのが一番ですね。『自分で考えろ』と普通に言っていましたから(笑)。けれども、一向に育たないし、社員がどんどん会社から離れていってしまいまして、抽象的な言葉で発破かけても通用しないということを勉強しました。
あとは、自分の仕事のやり方を一方的に押し付けてしまっていたこともありました。もちろんそれで成長できる人はいますが、それは一部の部下だけで、8割の部下はそのやり方に合わなかったですね」

―役職があがってくると、部下の数が多くなってくる方もいると思います。そういった方は(部下が)多くなっても、一人ひとり部下に対してコミュニケーションを取るべきなのでしょうか。

「基本的には部下が何人、何十人でも変りません。ただ、何十人も部下がいたら途中に中間管理的な立場の人間がいるはずなので、その人たちのことを見ていれば良いと思います」

―これまで石田さんが出会った人の中で、この人は教えるのが上手だと思ったのは誰ですか?

「水泳のインストラクターです(笑)。ビジネスの現場だと…あまり出てこないな。水泳のインストラクターに勝る人はいませんね。やはり教え方が上手です、彼らは。特にアメリカで学んできて、日本で教えているようなインストラクターは、具体的な行動を分かりやすく説明できるので、生徒の水泳の上達もはやいですよ。『気持ちを込めて泳げ!』なんて言わないですから(笑)」

―そう言われても、どういう風に泳いでいいのか分かりませんよね(笑)

「気合い入れて泳げ!とかね(笑)」

―それは仕事においてもそうですよね。「気合い入れて仕事しろ!」とか。

「そうですよね。『お客様との絆を作れ!』と言われても、入りたての若手だったらどうやって絆が作ればいいのかが分からないでしょう。だったら、売り上げを倍にするとか、明確で具体的な目標を設定した方が、自分なりに考えられるし、分かりやすいと思います。
例えば、ライターさんでも『良いインタビューを取ってこい!』と言われても、『良いインタビューって何だろう?』って思いませんか?

―そうですね。自分でも良いインタビューをしようと漠然に思っていた頃があったのですが、やっていくうちに迷ってしまうことが多かったです。『教える技術』はそういった自分の思考のマネジメントという点でも使えますね。

「使えるところはたくさんあると思います。結局、『良いインタビュー』がどういうインタビューなのか、それは分析しないと分からないはずですよね。インタビューを読む人が『これは面白いな』とか『良いインタビューだな』と思うことが重要ですから、自分の中で漠然と『良いインタビュー』像を作り上げても仕方ないと思います」

―そういうときは、インタビューが読まれた数を分析するなどの対処法がありますね。

「そうですね。数値という具体的な指標に落とし込むことで、かなり分かりやすくなると思います」

―お話を「教える技術」に戻したいのですが、日本の社会には年齢に基づく上下関係が根強く残っています。年上の方に何かを教えることが恐れ多いと考えている人も多くいると思うのですが、そういった場合はどうすればいいのでしょうか。

「年上だからといって、教え方を変えるというのはありえないことですよね。飛行機の飛ばし方を教えないといけないのに、年上だからといって特別扱いして、学ぶための行程を省くことはできません。上司と部下という関係性がある以上、上司は部下を指導する必要があります」

―なるほど。また、教える技術をどこまで実践すべきか、というところで、石田さんにとっての「自立」の定義はどのようなものなのでしょうか。

「それは、会社側から課せられた具体的な数値目標を達成できたときだと思いますね。上司は、部下が目標を達成できるように上手く教えていかなければいけないのですが、そのときに『教える技術』が役立つと思います」

―石田さんのブログを拝見いたしまして、「上司をあだ名で呼ぶのが今後のスタンダード?」というエントリーがとても気になりました。最近ではユニークな企業が増えてきていますね。

「そうですよね。ここ最近ですが、社員同士をニックネームやファーストネームで呼ぶ会社が増えてきました」

―もし、石田さんの会社でニックネーム制を導入するとしたら、なんと呼ばれたいですか?

「なんと呼ばれたいか…。『ジュン』でいいですよ(笑)。アメリカでは『ジュン』って呼ばれますから」

―でも、あだ名で呼び合うと関係がフランクになりますよね。

「そのためのツールですからね。コミュニケーションが取りやすくなりますし、風通しが良い企業にしたい、下の人間でも意見が言えるような企業にしたいとき、例えば会議の間だけでもあだ名で呼び合うといいと思いますね」

―この、『行動科学を使ってできる人が育つ!教える技術』ですが、どのような方に読んで欲しいと思っていますか?

「ビジネスの現場であればプレイングマネージャーやマネージャーです。また、教える立場にいる方、これからなる方、たとえば親御さんですとか学校の先生も含めた、いろいろな方に読んで欲しいですね。
この『教える技術』には普遍的なやり方が書かれているので、一度身に付けると一生使えるものです。他の会社でも通用するポータブルスキルですから、これを機会に学んで頂けると幸いです」

―では最後に、このインタビューを読んでいる方々に一言お願い致します。

「この本は、教えるための普遍的な技術を、各項目2ページから4ページくらいでまとめて、自分の知りたいところから読めるような形になっているので、とても読みやすいと思います。
また、教えることって結構難しくに考えてしまう人も多いと思いますが、技術さえ身に付けてしまえば、思っているほど難しいことではありません。だから、この機会にいろんな方に読んで欲しいと思いますね」

―ありがとうございました!

(了)


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