ついに開幕の時を迎える2011-2012シーズンのブンデスリーガ。若手の台頭、新興勢力の躍進、古豪の低迷と、波乱に満ちた昨シーズンの展開は果たして一過性のものなのか。ブンデスリーガのシーズン展望をかつての名手、ギド・ブッフバルトに聞いてみた。


インタビュー=ハーディ・ハッセルブルフ/『キッカー』 翻訳=阿部浩 アレクサンダー 写真=千葉 格

いよいよ新シーズンが開幕します。まずは優勝予想から聞かせてください。本命はやはりドルトムントでしょうか?
ブッフバルト 間違いないね。優勝はドルトムントかバイエルンだ。ドルトムントにとって唯一の問題はチャンピオンズリーグ(以下CL)だろう。あの大会の厳しいプレッシャーに耐えられるなら、リーグ戦はバイエルンとの一騎打ちになるはずだよ。他の候補? この“2強”にシーズンを通して食らい付けるチームはないんじゃないかな。少なくとも私には想像できない。

ドルトムントはヌリ・シャヒンが抜けた穴を埋められますか?
ブッフバルト できるさ。シャヒンのポジションにはスヴェン・ベンダーがいるし、イルカイ・ギュンドアンも使える人材だ。それと、ケガから復帰した香川(真司)。あのヤパーナー(日本人)が中盤に戻ってくるのは心強い。最高の補強だね。ただ、シャヒンのようにパス一本で局面を打開できる選手を失ったのだから、戦術面では多少の変化を強いられるだろう。

バイエルンと言えば、宇佐美貴志が加入しました。彼は第2の香川になれるでしょうか?
ブッフバルト そう思う。ただ、タイプは違うね。香川は中央で真価を発揮するが、宇佐美は(アルイェン)ロッベン、(フランク)リベリーのようにサイドで生きるタイプだ。ロッベンとリベリーのケガの多さを考えると、彼の存在はバイエルンにとっても心強いはずさ。宇佐美は香川と同様、リーグにサプライズを起こす可能性を秘めていると私は思っている。

昨シーズン不振に陥ったシュトゥットガルト、シャルケ、ブレーメンといった古豪の復活はあるでしょうか?
ブッフバルト  シャルケには期待したいね。メンバーリストを見れば、彼らの潜在能力に疑いの余地はない。昨シーズンはブンデスリーガで低迷したが、CLとDFBカップで のパフォーマンスは見事だった。今シーズンはリーグ上位に顔を出すと思うよ。シュトゥットガルトとブレーメンは10位以内が目標だが……難しいかな。両 チームとも根本的な変革期に当たっているからね。私の古巣シュトゥットガルトは何とか5位から9位の間に入ってほしい。ヨーロッパリーグに参戦できる順位 なら成功と言えるだろう。

2年前のリーグ王者ヴォルフスブルクは昨シーズン、残留争いに巻き込まれました。復帰したフェリックス・マガト監督はチームを再建できるでしょうか。
ブッフバルト できると思うが、時間は掛かるだろう。2、3年は厳しいシーズンを過ごすかもしれない。強いヴォルフスブルクが戻ってくるのはそれからだ。

つまり、新加入選手がカギということですか?
ブッフバルト ヴォルフスブルクには親会社(フォルクスワーゲン)の豊富な資金があるし、しかも移籍市場を正確に見ている。この夏は無駄な買い物をせず、チームに合った選手をきちんと見極めた。必ず強くなると思うよ。ただ、繰り返すけど時間は掛かるだろう。

ジエゴは気になりませんか? 最近の彼はすっかりトラブルメーカーですが……。
ブッフバルト 確かに。ジエゴは天才的な選手だが、チームの和を乱す行動はいただけないな。チーム全体にとってマイナスだ。この夏に放出、という展開もあるだろうね。

新シーズン、個人的に注目している選手はいますか?
ブッフバルト すべての若手選手だ。昨シーズンの香川や(マリオ)ゲッツェのように、いきなりトップレベルで活躍する選手が出てくるかもしれない。そう思うとワクワクしないか? そういう意味で、バイエルンの宇佐美には注目している。バイエルンのようなビッグクラブで、彼がすぐに試合に出られるかどうかは分からない。最初は忍耐が必要だろう。でも、日本人はみんな忍耐強いからね。


あなたは日本のサッカーに詳しく、また深いつながりを持っています。ドイツにやって来る日本人選手は今後も増えるでしょうか。
ブッフバルト もちろんだ。日本のマーケットは最近、非常に注目されている。才能溢れる若手がたくさんいるからね。ドイツのクラブは常に日本のリーグを追っているし、昨年あたりからスカウトが日本に行く回数も激増している。この傾向はしばらく続くんじゃないかな。

では、次にドイツへ移籍する可能性のある選手を具体的に挙げるとしたら?
ブッフバルト 浦和レッズの原口元気を推薦したい。そう、かつて私が監督を務めた浦和レッズの選手だ。私が監督だったら、何も言わずに契約書にサインするよ(笑)。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではグラビアページを担当。