「経産省解体論」古賀茂明氏を次官に――緊急対談 高橋洋一×岸博幸

写真拡大


■「原発」「インサイダー」「やらせ」 の責任をとらず、パフォーマンスでお茶を濁す経産省
……8月4日朝、海江田経産大臣が発表した経産省首脳の更迭人事。実はそこで「更迭」を告げられた人達は、今年の夏にはもともと人事異動が予定されていてもおかしくない人達だった。その後4日夕には後任人事も発表されたがその中身は「順送り」であったようだ。


岸博幸さん(@hiroyukikishi)のツイートより:
松永経産次官の後任は経済産業政策局長に決定。これって完全な順送り人事じゃん。資エ庁長官や保安院長の後任も同様。これのどこが更迭なんだ。大臣の政治主導であるかのように今朝発表してるけど、官僚主導の順送り人事であることは明白。経産官僚に取り込まれた海江田大臣は情けない。


海江田大臣は「人事権者は私」であるとして、政治主導であるように見せかけたが、その内容はこれまたもともと予定されていた通常の「順送り人事」と変わりはなかったようだ。結局、新しい風は吹かず、海江田大臣の演出に終始したとも言える今回の人事騒動。経産省は「原発事故」「インサイダー」「やらせ」などの問題の責任はとらずに、このようなパフォーマンスでお茶を濁すつもりだろうか。高橋洋一氏(元財務官僚)と岸博幸氏(元経産官僚)に、引き続き語っていただく。
経済産業省はどうなるのか

●参加者
高橋洋一氏(元財務官僚、経済学者、嘉悦大学教授)
岸博幸氏(元経産官僚、慶應義塾大学大学院教授)

■良い人には「出て行け」と言い、悪い人が居残る組織

岸:僕は経産省って小泉政権の頃からおかしくなったと思ってるんですよ。経済財政諮問会議ってあったじゃないですか。そこがそれまで経産省がやってきた霞が関のシンクタンクとかブレーン的な仕事を全部とっちゃった。そして賢い財務省は諮問会議を取り込もうとしたんですよ。なのに経産省は諮問会議にそっぽを向いて、そのまま小泉政権の真ん中から距離を置いちゃった。不良債権処理や産業再生機構の件では抵抗もし、その延長で、杉山さんが次官になったんです。

そして竹中平蔵嫌い、諮問会議嫌い、とやったもんだからその杉山次官の頃から決定的に悪くなった。その流れをくむのが今の次官の松永さん。その松永さんは原子力安全・保安院の院長時代に、今回の問題となった「津波の高さの想定」の中味を決めた責任者だから、いろんな面で罪が重いんですよね。

高橋:そういう人がよく古賀茂明さんに退職勧奨とか言うよね。先日、TVタックルでも言ったんだけど、良いことしてる人に「出て行け」って言って、悪いことしている人が居残る、ってそういうシステムなんだよなぁ。

岸:古賀さんの業績を考えれば明らかにおかしいですね。退職をすすめるなんて、ありえない。

高橋:「津波の基準を低くしてすみません」って、自分が辞めるのが普通なんじゃないの? それが普通の社会の話でしょう? だってその時、きちんと津波の基準を高くしていれば、あの事故は起きなかったかもしれない。

岸:耐震設計基準の15ページの中で、津波に関しては数行しか書いてなくて、しかも東電が勝手に決めた5.7メートルっていうのを、そのまま入れてますから、今回の被害を大きくした原因にもなっている。本来、松永さんには凄い責任があるはず。

高橋:いろんな人が予見していた部分があるから、今回の事故は天災ではなくて人災なんだよ。

岸:それに関する質問に対しても、無視に近い否定でしたね。加えて言えば、今、メディアを賑わしている保安院による「やらせ」の問題のようなものも、松永さんが保安院にいるときからあった可能性があります。

高橋:やらせって言うと、タウンミーティングでもやっちゃって、全部潰したんだよね。あれ見てるのにまだやってたってのが驚きだよね。みんな処分されたの、見てたわけでしょ? 普通はやめるよね。

岸先生

高橋:そういえば古賀さん、なんか動物の死骸とか入れられたらしいけど。

岸:えっ!

高橋:なんだったっけ、あれ、

――ご自宅にハクビシンが投げ込まれたというニュースがありました

岸:え? ハクビシンの死体を投げ込まれたの?

高橋:なんか変だよな、って感じだな。

岸:かわいそうになぁ。許しがたいですね。

高橋:この手の話って、相手はプロだから、誰がやったとか絶対にわからないよ。まぁ、命あるからまだいいんじゃないの、ということだな。
高橋氏

■古賀茂明氏への経産省の対応が「ヘン」

高橋:古賀さんへの経産省対応みてて、緩いなーと思ったよ。敵に塩を送っているような。

――といいますと?

高橋:今の次官とか官房長とかね、私だったら絶対に違う対応だと思うんですよね。見方によっては、古賀さんを皆で盛り上げてるような。皆で応援しているようにすら思う。

普通は、あぁいう場合、対応するときには、まずなにもしゃべらない。古賀さんがなんかグチグチ言ってくるとするでしょ? そしたら「わかりました」って言って、それ以上しゃべらない。で、何やるかっていうと、次の人事異動のときに、ビョーンと飛ばす。

岸:でしょうね。

高橋:海外だっていいんだから。飛ばしたって文句言えないんだから。大使館の大使とかね。地方の経済産業局長とかね。暑いのが苦手だったら南へ。寒いのが苦手だったら北へ。昔の財務省だったら、暑いのが苦手な人はインドへ、寒いのが苦手な人はロシアに行かされてた。経産省だってそういうのあるでしょう?

岸:そういうの、明確にはないんですよねー。

高橋:おしおき部屋、ないの?

岸:ないない。インドもあるんだけど、そこには若手のがんばってる人を送ってました。経産省はそういうのはないですね。だから古賀さん、ああいう状態なんですよ。そういう部分は緩いですよ。

高橋:普通、1年半もほったらかしにしないよね(東電再生論を発表した古賀さんは、1年半の間仕事も渡されず、幽閉されている状態)。国内でもいいんだし、1年経ったらどっかへポーンと飛ばすってのが普通なんじゃないかな。

岸:古賀さんには一時期そういうのあったんですよ、筑波へ飛ばしたりして。

高橋:筑波なんてペナルティになんないよ。

岸:でもさすがに体調崩した後だったから大変だったみたいですよ。しかし古賀さんのおかげで経産省はかつてないぐらい有名になってきていますね。

高橋:でもさ、経産省ってもっとダーティな問題があるのに、そこにフォーカスされないのは、古賀さんのおかげ、とも言えるよ。

岸:古賀さんにはもちろん期待していますけども、古賀さんみたいに真面目な人はあぁいうことになっちゃって、汚いことやっている奴は局長とかに残ってますからね。

高橋:そういう人達ってさ、表に出ないじゃない。「経産省枠」ってのがテレビにあったとしてさ、今は古賀さんでほとんど埋まっちゃってるからね。

岸:古賀さん、経産省に貢献してるんだ!(笑)

高橋:うがった見方だけど、そういう戦略なのかもしれないよ(笑)。
高橋先生

■経産省のインサイダー問題について

高橋:インサイダーやってた人達もさ、あれはひどいよ。あれは役人としてはあるまじき行為です。実はインサイダーの法律については、財務省時代に担当していたことがあるんで詳しいんだけれども、あの法律ね、よく「ザル法だ」と言われてるんだけども、ザルじゃないよ。要件が非常に明確で、そこが「升(マス)」みたいになってるんだけど、通常そこに落ちることはほとんどない。でも、一回そこに落ちるともう逃れられない。そんな法律なんだ。

普通はそこに落ちるなんてありえない話なんだけど、一罰百戒(一人を罰することによって他の多くの人々を戒めること)みたいに絶対に言い逃れできないやつだけしょっぴく、っていう法律なんだよ。そこにピタッと入ってるんだから。

岸:それ最悪じゃないですか。

高橋:でね、経産省でこんなインサイダーなんてやっちゃったら、もう経産省を解体するしかないよね。

岸:そうですね、絶対解体すべきです。

高橋:インサイダーは、ダメだよ。なんであれが曖昧になるのかわからないよ。

岸:完全に有罪なの? 奥さんが(実際の取引を)やってたとしてもアウト?

高橋:アウトだよ。あれが曖昧になるなんて、温情だよ。それは多分、同じ役人だってことで、司法と手を握ってるんだよ。地検とかだったら終わりだよ、あれ。民間だったら即アウト。

岸:懲戒になりますかね?

高橋:懲戒どころじゃない、刑事罰だよ。だからね、経産省って、金融庁となにかあるんじゃないの? 金融庁に出向してるやついない?

岸:いるいる

高橋:どのくらいいってんの?

岸:課長ぐらいかな。

高橋:課長ぐらいだったら話せるな。「まぁ、まぁ、まぁ」ってのは言えるよな、役人どうしだから。

岸先生と高橋先生

■「経産省解体論」古賀茂明氏を次官に

――インサイダー事件は、経産省解体のきっかけと成り得る?

岸:今回の、機構法案をめぐる東電擁護のバカな姿勢と、インサイダー事件。これだけで完全アウト。これで組織を解体されても、普通は文句言えない。

高橋:経産省みたいな組織って、海外の中央省庁にはないんですよ。

岸:特許庁みたいな仕事はありますけどね。

高橋:特許庁と通商関係。あとはもう、いらないんだよ。本当は、省庁再編でやんなくちゃいけないんだろうけど、通商と特許とエネルギー、あと中小企業庁。これぐらい残して、あとはいらない、ってこと。

岸:そうですね、ほんとにいらない。

高橋:それが海外では普通じゃないかな。

岸:それが常識だし、この原発問題に関しても、保安院を移すだけでは意味がなくて、エネルギー庁を経産省からはずして、電力会社と経産省幹部の癒着を切らないとダメです。そういう、両方の面から解体していかないとだめです。

――経産省は「詰み」の状態なんでしょうか。

岸:本来はね。でも経産省はそれを上手く逃げようとしている。経産省からすれば保安院切り離すだけで済めばラッキーなはず。完全にそれは「軽傷」ですからね。

高橋:真面目な人がいれば、省庁再編の見直しを言うべき時期にも来てるんだよね。

岸:次の総理には、是非、経産省に対して「古賀茂明さんが事務次官になる」がいいのか「経産省解体」がいいのか迫って欲しいですね。

高橋:古賀さんを事務次官にすると結局「解体案」になって、自分で自分をクビにして経産省を解体して終わり、ってことも有りうるね。まぁ、そうは言っても民主党が組織の解体はやんないだろうな。絶対やんないな。

岸:そうなったら民主党を評価しますよ。まぁ、保安院切ってオシマイでしょうけどね。結局は。


(つづく……かもしれない)

参院本会議

■関連記事
海江田経産大臣による「更迭人事」は浅はかな演出
「成立しちゃった!東電救済法」ヤメ官僚緊急トーク 高橋洋一×岸博幸
もうすぐ成立「こんなに問題、東電救済法案」緊急勉強会
「匿名文書」による野党工作の実態――東電救済法案「根回し文書問題」渡辺喜美氏にきく(1)
国民負担を5兆円増やす「東電救済」の法案が衆院復興特委で可決――民主・自民・公明が水面下で合意した修正内容とは?