自然エネルギーへの移行は難しい 米ジャーナリストが指摘

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 3・11に起きた東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故以来、世間の「原子力」への懐疑の目はより強くなった。しかしその一方で、経済的な面で原子力発電の力はまだまだ必要であるという議論も存在する。

 アメリカのジャーナリストであるトーマス・フリードマンによって『グリーン革命』が執筆・出版されたのが2008年のことであった。フリードマンはその『グリーン革命』において、石油燃料からの脱却と、再生可能エネルギーへの転換を訴えるのだが、そのフリードマンの議論に対して批判を加える一冊の本が同じくアメリカで2010年に出版された。
 それがアメリカのジャーナリストであるロバート・ブライスによって執筆された『パワー・ハングリー』(古館恒介/訳、英治出版/刊)である。

 前述のフリードマンの主張に対し、ブライスは、化石燃料からの転換は支持するものの、太陽光や風力などのグリーンエネルギーへの転換は需要という観点から見て現実的ではなく、環境にもやさしくないと反論する。
 そして、あくまで現実的な視点に基づいてエネルギーの移行について議論を展開する。「パワー密度」「エネルギー密度」「コスト」「規模」という4つの軸を“原則”とし、太陽光や風力発電などといったグリーンエネルギーが持つ課題について指摘しているのだ。

 ブライスは、経済性と環境への影響、双方からエネルギー源を評価する。
 例えば原子力については、『シルクウッド』や『チャイナシンドローム』などの映画が原子力事故への恐怖感を煽っていることや、原子力の将来は過去を乗り越えられていないという市民感情を指摘した上で、それでも原子力発電の初期費用についてのコストは、洋上風力発電や陸上太陽光発電と同程度であり、さらに風力や太陽光とは違い、常時稼動電力を提供してくれると主張する。
 一方、太陽光発電や風力発電といったグリーンエネルギーについては、エネルギー密度や安定性の部分からこれまでの化石燃料や原子力には及ばないと述べる。さらに、驚くべきことに風力発電が二酸化炭素の排出量を削減していることを裏付ける研究結果はないと言うのだ。
 ブライスは言う。「環境にやさしいこと」にまつわる情報の氾濫は、「環境への影響なくエネルギーを安価に得られる」という錯覚を助長してきた、と。

 ブライスはグリーンエネルギーへの移行の難しさを繰り返し述べながら、原子力と天然ガスの推進を謳っている。
 とはいえ、アメリカと違い、日本に天然ガス資源は存在しないし、何より福島第一原子力発電所の惨状とその影響力を間近で見てきた(そして放射能の危険に晒されている)日本人にとって、グリーンエネルギーは将来に託すべき希望ともいえるものだ。

 理想と現実の狭間で、最もベターな判断とは何か。

 ブライスの指摘通り、グリーンエネルギーは多くの課題が山積みになっており、それを克服できる見通しは立っていない。その上に脱炭素、脱原発の風潮が強まっているという状況。3・11以後のエネルギーをめぐる日本の状況は危機的であるということに、本書を通して気付くことができるだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)



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