8月2日タイムリミット! もうすぐ成立「こんなに問題、東電救済法案」緊急勉強会

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8月2日火曜の委員会採決を経て8月3日水曜の本会議で成立予定の「東電救済法案」こと「原子力損害賠償支援機構法案」。この法律によって、以下のような問題が起きると言われています。

・将来、電力自由化の可能性がなくなります
・電気料金が高くなります
・電力会社を破綻させないための継続的な税の投入と増税が起きます

成立までもうあまり時間が残されていないのですが、この法律により何が起きるか理解している人は少ないと言われています。十分な説明と議論がおこなわれないまま、この法案は、とにかく急いで成立へ向けて進んでいます。水面下で与党と野党がガッチリと手を組んでいるため、もう止めることはできないとも言われていますが、今一度この法案の問題点についてまとめるため、松田公太参議院議員の呼びかけで4名の方が集まり緊急勉強会をおこないました。勉強会の様子の動画は先行して公開されており、たいへんわかりやすいと評判です。今回掲載させていただくテキスト版と動画版、あわせて御覧ください。

●「こんなに問題、東電救済法案」緊急勉強会参加者

松田公太氏(参議院議員)
井上高志氏(株式会社ネクスト代表取締役社長)
福井秀夫氏(政策研究大学院大学教授)
原英史氏(政策工房代表取締役)

●勉強会動画

動画版はこちら: http://tokyopressclub.com/post/8292599548

●この法案の名称について

井上:そもそも、原子力損害賠償支援機構法とは何なのでしょうか。

松田:「原子力損害賠償支援機構法」なんですが。この名前ひどいでしょ。噛んじゃいそうになるでしょ。これ凄く重要な法案なんですよ。今後の日本を占う法案でもあるかなと思うんですよね。ところが、マスコミなかなかとりあげてくれないじゃないですか。こういうことに関して。名前がまず難しすぎるのかなというような気すらするんですね。特に政治家とかがですね国会で話しをしたりすると、みんな難しい言葉をたくさん並べて、いかにも自分は頭がいいんだみたいな感じでぶわーっと話すじゃないですか。そうすると、普通の国民はですね――

井上:よく分からないから、質問するのも馬鹿みたいな感じに見られちゃう。

松田:そうそう、そう見られちゃうし。もういいや、分からないから勝手にやってくれと。自分が理解できないということは、大したことじゃないんだろぐらいの気持ちが、皆さんにあるんじゃないかなと思うんですよね。これ、なんか名前変えるとしたら原さんなんて名前にしますか。

原:『東電救済法』ですね。こういうの、役所の人たちに名前付けさせるとみんなこうやって訳のわからない難しい言葉にしちゃうので、みんなで略称を勝手に作っちゃえばいいと思うんですよね。

井上:「分かりやすくいうとこうだ」という対応表を作っちゃえばいいんですね。

福井:僕が名付けるとしたら「強盗団正当化法」ですか。

原:この法案、もともとは何だったかというと、福島の原発事故に伴って大変な損害賠償責務というのが生じています。これまだ金額はよくわかりません。10兆円とも言われてますし、もっと多いんじゃないかという話もあって、これをどうやって賄っていくのか。ていうところが問題になっていると。これはもう3月ぐらいからずっと言われているのが、東京電力に10兆だか20兆だか分かんない金額を全部背負えと言ったところで、出てきませんよね。じゃあそこをどうするんですか。ということが問題になっているわけですね。

通常であれば、民間企業が巨額の債務を負った、ということになればこれは破綻処理となります。しかし今回については「これは特殊ケースなんです! 電力っていうのは特殊ケースでそんな法的に整理とか破綻処理とかそんなことをやるわけにはいかないんです!」って言って出てきたのがこの法案。一言で言ってしまえばそういうことで、東電の救済なのか強盗団の正当化なのか。ということなんですね。4月ごろに何か時々議論になったりして、マスコミなんかでも報じられたんですけども、東京電力の損害賠償額の上限を設けて政府に負担をさせるのか。それとか、銀行の債権の額をカットするのかどうか。なんていうことを、時々話題になったりしたんですけども。あれって要するに通常の法的整理をやったら、まず会社の持っている資産というのは全部売っぱらって、株価はゼロになります。株を持ってた人はみんなパーになっちゃいますよね。お金を貸していた銀行も、通常債権カットで大幅な債権カットに応じるというのは当たり前ですよね。

通常はそうなんですけれども、そこをどうするのか、というのがずっと争点になっていて、「そうは言ったって東京電力って特殊な会社なんだから潰すわけにはいかないでしょ。損害賠償額の上限設けて、債務超過と法的整理なんていうところにいかないようにしないといけないじゃないか。」なんていう議論がなぜか出てくる。本当のところ考えるとよく分からないんですよ。東京電力が潰れちゃうと電気が止まっちゃうんですと、電力供給受けられなくなりますよ。なんていう人がいるんだけども別にそんなことはない。要するにJALのときも同じような議論があって、JAL潰しちゃったら飛行機飛ばなくなりますよ。だから、あれは絶対破綻処理なんかできないんですって、ずっと言っている人たちがいたんですけども、別に破綻処理やっても飛行機は飛んでますよ。別に破綻処理をするということと、サービスが止まっちゃうということは別の話なので、それはおかしな話。

井上:電力だけは特別扱いだって理由、根拠はなんですか。

原:その理由が電気が止まっちゃうという話だったり。

福井:地域独占だから特殊だと。地域独占の東電を破綻させたりしたら他に電気を提供してくれる事業者はいないんだから、国民経済も国民生活も大混乱になると、と大手マスコミの論説委員が真顔で言っていたのを聞いたことがあります。これまったく間違っています。

松田:なんとなく都市伝説的な話を流している。みんな困っちゃうんだよ大変なんだよ。というストーリーを作り上げている。神話を作り上げているような感じさえしますね。さっきJALの話が出ましたが、「JALがこんなことになったら日本人大変でしょう」といったけど、まったくそんなことはなくて実際には良くなってきている。他も実際そうだと思いますね。電話なんかもそうじゃないですか。どんどん自由化してしまったら大変なことになるんだっていう話、みんなで電話が使えなくなっちゃうよ。なんていう話もあったんだけども、まったく真逆の方向いって。経済はなんでもそうだと思うんですが、自由化があって競争があって初めて良い方向へ行くと思うんですね。それをなんとか隠して、電気は公共性が非常に高いんだと、守らなくちゃいけないんだ。ていうイメージを誰かが作り上げている。

井上氏と松田氏

●この法案で、誰が得をするのか

井上:それ守ることで、誰が得するんですか。

福井:基本的に一番得をするのは、東電のステークホルダー。利害関係者と言われる人たちで、株主、社債権者、一般債権者。

松田:株主は、株価ゼロになりたくないと。

福井:社債権者は銀行が多いんですけど、貸しているからそれが圧縮されたくない。債権放棄されたくない。

松田:回収したいわけですね。

福井:社債ももちろん保護したいし、一般貸付している債権もできるだけ守りたい。当然東電の経営陣も、そんな破綻処理したら自分達いなくなるわけですから、わが身を守りたい。年金債務もカットしたくないと、東電の労働者、従業員はみんな思うと。それに加えて、今修正協議をしても骨格は変わらないわけですが、まさに支援機構法案のポイントは破綻処理させない。東電を債務超過にさせないことなんですね。させないで、非常に利益を被るのは今のようなステークホルダーと、それからこの機構法案の大きな特徴は、基本的に電力料金で賠償負担を賄おうというスキームなんですよ。多少納税者のお金もいれると。

井上:ものすごい負担を国民がするということになりますね。

福井:そうです。しかも、東電の電力料金だけじゃなくて、他の電力会社の電力料金でも賄う。しかも、超長期でとにかくそれで細々と払い続ける。というスキームですから、納税者とか電力料金負担者が株主や社債権者や東電の関係者に補助金をあげる、ていうことを意味する

松田氏

●この法律の内容をわかりやすくたとえてみる

松田:この法案が閣議決定された翌日に国会にたつチャンスがあったので、すぐその場で質問したんですよ。海江田大臣と枝野さんに質問したんですけど。一般の社会だったらこういう話ですよ。T君という人がいます。T君はまわりから、「その車は危険だよ、ちょっと危ないところがあるかもしれない。ブレーキが緩いよ」そういうのを言われていた車を運転していた。周りから注意があったにも関わらず、同乗者も一緒に「大丈夫大丈夫」ということで運転していた。ところがある日、住宅街に突っ込んでいって大きな事故を起こしてしまった。たくさんの負傷者も出しちゃったし、家も全壊か半壊させてしまったと。はた困ったと。T君は賠償しなきゃいけない、家を壊しちゃったりしたから。どうしようかなってなっているときに、T君はまずは友達からお金を集めようと、T君の友達C君とかK君とかね、そういう人たちがたくさんいますと。そういう人たちからお金をたくさん集めて、それを元にみんなに返しましょう。その瞬間でおかしいでしょ、なんとなく考え方が。保険だったら、事前に入らなきゃいけないでしょ。事故が起こる前に。そうじゃなくて事故が起こったあとに、慌ててそんなものを作ってお金を友達から引っ張りあげる。C君とK君からしたらえらい迷惑だ。

福井:今度は友達でもない人からも取り上げるともっと凄い話。
 
松田:そのお金で賠償しますよと。ところがT君が車を買うためにお金を出していた人たちがいるわけですよ。銀行も貸していたし、お金を預けていた人達――これは株という形で――その人たちは守りましょうと、T君それだけの事故起こしたから守りましょうと言い出した。さらにT君は資産をたくさんもっている、実は凄いぼんぼんだったと。大金持ちの息子だったと。なのに、マンションとか他にも車とかたくさん持っているのに、それを売れと普通だったら言うところを、それを売らせずに、その人たちから集めたお金でとりあえず返しましょうと。賠償しましょうと。もっと酷いのは、怪我しちゃった人たち、家をぶち壊されちゃった人たちが、実は知らない間に自分達がそのお金を払ってT君から自分達のお金を返してもらっているという仕組みになっていると。つまり電力料金の値上げとか、税金アップによって自分達の賠償金を返してもらう……。凄く変な話だと思わない? 普通の社会だったらこういうのありえないでしょ。暴動起こるよね。ところがそれを今やろうとしているんですよ。

井上:その質問に対してはどういう回答だったんですか。

松田:T君は大切な仕事を担っているからとか、なんかそんなようなことを言っていたと思います。それこそ、T君は町で大切な仕事をしているのだとしたら、そんな人に任せられないし、T君の代わりにやりたいっていう人はいくらでもいるだろうから、そういう人たちにやらせればいいじゃないですか、という話です。

井上:なるほど。今回の場合、友達のC君とかK君とかからもお金をもってくるんだけど、その他にも公的資金等がはいるんですか?

福井:納税者もお金を出すことに、交付国債という形でお金を出すことになってますね。

井上:我々が負担するということに。

福井:そういうことです。普通の納税者や電力料金負担者という国民一般が負担して株主や社債権者の銀行を救済してさしあげる。こういうことですね。

井上:T君とその取り巻きたちを救うために、僕らはお金を出すし、まったく関係ないのに善管注意義務違反なのに、お金は出してあげるし、「高い料金でもしょうがないな」て言って払ってあげる。

福井:そういうことですね。国の責任という人が凄く多いんですよ。今回の法案の修正の段階では野党から国の責任を明記すべきだとか、国も監督してたんだからもっと負担すべきだ。みたいな議論があるんですね。国っていう人格がお金出してくれるわけじゃないんですよ。国の負担って納税者の負担なんですから。東電はさほど責任はないっていう人も多いんですよ。東電は責任はないって言いますが、こちらも東電という抽象的な人がいるわけじゃないんですよね。東電の株主や、債権者や東電の経営者のことなんですよね。国の責任の今の強調っていうのは、非常に奇妙な昔の一億総懺悔論みたいなごまかしでありまして、結局納税者がもっと臥薪嘗胆(がしんしょうたん。成功するため苦労に耐えること)して東電の関係者の損を賄ってあげましょう。っていうのが本質的な構図です。

これ元々の法律から見ても非常におかしいんですよ。原子力賠償法というもう50年ぐらい前の法律が今も生きてまして、この法律が実は基本的には大変よくできてると私は思います。この場合、原子力事業者というのはこの場合東電ですが、「無限責任」なにか事故を起こしたら賠償で無限責任を負うと書いてある。しかも無過失で責任を負うと書いてあるんですよ。非常に巨大な天変地異による場合を除いての無過失無限責任と書いてある。これは東電という原子力事業者というその事業者に全責任を負わせるというのは、その事業者が国とか被害者より原子力事故のことは一番よく知っているわけですよ。もっとも安く容易に事故を回避できる可能性がある人なんですね。最安価損害回避者という、法と経済学の呼び方ですが。そうすると、その人に無過失無限責任を負わせろというのはアメリカの判例などでは結構確立した考えた方で、それをまさに日本も忠実にいれていた。それで足りない分はどうするかというと、1200億円ほど共済にはいってるんですよ。1事業者あたり1200億円ほどは国と保障契約を結んでいて、電力会社の負担金で1200億円分は事故のために戻ってくる。1200億円で済まない賠償負担はどうするかというと、東電の資産を全部活用して出せるだけ、もちろん資産の範囲内ですから実際は有限なんですが、出せる範囲で全額出してください。そのあとどうするかというと、原賠法のなかでは残りは国が必要な支援を行うと書いてあるんですよ。東電に出せるだけ出してもらったあとは、納税者負担です。となっているんです。これは極めて明快な話でありまして、この法律の通りやるんだとすると、基本的には東電がもし債務超過だったら会社更生法で破綻処理をして、もちろん賠償債権は圧縮されますが、圧縮されたって今の法令上残った分はちゃんと国が責任を持つと書いてあるんだから、その通り粛々とやればなんの問題もなかった。あえてそのまっとうな王道を通らないで、わき道を通ってステークホルダー達を一生懸命救済しようとあの手この手で誤魔化しきったのが、今回の支援機構法ということだと思いますね。

井上氏

●なぜ政治家はこぞってこの法案を通過させようとしているのか


井上:こうやって説明を聞くとおかしいよね。っていう風に国民も分かるんですけど、政治家の人たちはなんでみんなこぞってこの法案を通過させようとするんですか。

松田:良い質問ですね! この件は、原さんが詳しいと思います。

原:結局東電のお世話になっている人たちが多いんです。大雑把に言っちゃえば、自民党のなかには東電から例えば献金を受けていたりとか、選挙でお世話になったりとか、会社の経営側の人たちからお世話になっている。これは東電だけじゃなくって地域の関西だったら関電だったり、そういうグループになってるわけですね。一方で民主党の人たち、これまた電力総連とか大電力会社の労働組合。選挙の時にお世話になってる人も多くて、その人たちはその人たちで電力会社にあんまり厳しいことをやったりそういうことはできないんで、結局東京電力を潰さない。破綻をさせずになんとか助けてあげたい。ていう方向で物事が進んでいったと。これまた電力村とかよく言われますけど、要するに電力会社と役所と政治家とマスコミと、いろんなところが一体になって利権構造みたいなものが作られてしまっていて、経済界だって本当はそんなことになって、電力料金が上がったらみんなもっと大反対してもおかしくないんですよ。経団連とか電気を沢山使う産業はたくさんあるじゃないですか。あの人たちも絶対文句を言わない。なんでかって言うと東京電力からいろんな便益を受けている。ものを買ってもらったりとか、そういう形で色んな便益を受けていて、だから「東電破綻させたら金融市場が混乱しますよ」とか変なことを言ったりするわけですよね。さらに言うと、そんなおかしなことになっちゃってるのにマスコミはなんで報じないのか。というとマスコミもまたコマーシャル料金。節電がんばってくださいとかたくさんCM出しているじゃないですか。あれ結局みんな出しているのは電力会社ですよね。

福井氏

●電力会社が、マスコミに広告を出して、「言論を買っている」

福井:他社と競う必要がないのに随分な広告料が出ているわけですね。不思議でしょう? 普通は他社の買わないで、うちの買ってくださいといってまともな企業は広告代を出すんですよ。他社がいないのに広告出すってどういう意味ですか。

井上:お布施としてずっと出しているんですか。

福井:お布施というよりは言論を買っていると考えた方が分かりやすいんじゃないでしょうか。

井上:どのぐらい出しているんですかね。

松田:何百億って単位ですよね。一年間で。

原:コマーシャルが流れ始めてから急にテレビの論調変わっちゃったんですよね。3月以降見ていても「電力会社がこうやって広告料出してくれるんだ」っていうのが分かってから急にやわらかくなって、今こんなおかしなことが起きちゃってるなんて全然ニュースで報じられない。

井上氏と松田氏

●「絶対債務超過させない会社」――そんな会社、一度でいいから経営してみたい(笑)

松田:今もう1つ問題になっていることがあって、今このような説明があったら非常におかしな法案。本当に我々資本主義国家ですかと言いたくなるような。政府が1つの会社を債務超過にさせないと言っちゃってる。そういう会社を経営したくない?

井上:(笑)絶対、ノーリスクだもんね。

松田:我々絶対債務超過させませんからと言われたら、どうします? ジャブジャブ銀行からお金を借りて、バンバン投資しますよね。

井上:失敗してもセーフティネットがあるわけですからね。

松田:国がセーフティーネットですから。

井上:素晴らしい法律だね。

松田:そんな変な法案を通そうってことで、実際、衆議院は通っちゃったわけですよ。修正が加えられて。その修正を誰か言い出したかというと、実は自民党だったわけですね。この修正案で本当にさらにおかしなことになった。元々変な法案だったのに、さらに輪をかけて「え〜っ!」て、頭をかかえちゃうような修正がされていくんですね。

原氏

●「国の責任」というときこえは良いが、結局それは国民負担を意味する

原:国の責任ってさっき福井先生がちょっと言われましたけども、国の責任を明確にしましょう。ていうのが基本的な考え方なんですよ。国の責任と言ったところで大臣が払うわけでもないし、役人が払うわけでもない。結局国民の税金で、国民負担をしましょう。ってことになっちゃっているわけですね。政府の法案というのはまだ電力料金を値上げをするとか、国債で負担して最終的には何十年かかっても返しますから、ていうお約束になってたんですけど、今回の修正によるとそれだけじゃなくて、純粋に税金でお金をつっこんじゃうということができるようにしちゃったと。より明確に国民負担ができるようになった。ていうことなんですね。

松田:ここに書いてありますが。国の責任について言及する。と書いてあります。これ面白いでしょ。法案修正のポイントって紙じゃないですか。これパッと見て、あることに気づきませんか? ……作った人の名前とか書いてないんですよ。これが不思議なことに永田町とかをぐるぐるまわっているわけですね。誰が作ったかわからない「法案をこうやって修正しましょうよ」という紙がなぜ出回っているか。

根回し文書

●東電救済法案「根回し文書」と呼ばれるもの

※下記URLの文書が、国会でも話題となっている「根回し文書」と言われているもの
http://tokyopressclub.com/post/8078329756

原:こういう紙を私も昔よく作ったんですけどね(全員笑)、役所の人たちがこういう紙よく作るんですよ。法案の修正協議ってね、法律を作るプロセスって一応政府が提出しますから、政府が提出するところまでは別に役所が関わっていても別におかしくないんですけども、そのあと国会にでてあとは国会議員で議論しましょうと。与野党で修正協議、ちょっとここは直したほうがいいなじゃないかってことを議論しましょうってのは、国会議員の仕事ですよね。そこになぜか役所の人たちが裏で入り込んでいて、こういう修正ぜひやったらいいですよ。といって野党の人たちのところにもっていったりするんですよ。多分今回の政府の法案というのは、相当程度東電救済の法案ではあったんだけども、それでもなお多分電力会社とか役所の人たちから見ると、もっと国が負担してくれたっていいじゃないかと。国の負担ってのは国民負担ですね。もっと強めてやってもよかったんじゃないかと思ってたはず。だからこういう法案修正のポイントという紙が出てきて、国の責任をもっと明確にしろと。ていうことを、野党の人たちに多分頼んで、それでそういう修正をしたんですね。

松田:原さんは実は経済産業省にいらっしゃった方なので、経産省の電力会社との癒着というか、その関係性をよくご存知なのでやっぱり経済産業省からすると絶対潰してもらいたくない。東京電力を。だから必死になってこういうのを作ってまわっていると。

原:そこは一体ですよね。役所と民間企業というと役所のほうが偉いみたいに思われる場合も多いんですけど、東京電力と経済産業省でいったらたぶん東京電力のほうが強いぐらい

福井:官は政治に弱い。政治は民に弱い。特にこういう独占企業には弱いですね。力ありますから。

井上:法案のところでまた素朴な疑問なんですけど、世の中の常識からするとおかしいよね。ってさっきのT君の話でよくわかりますと。自分達の関係者だけ救済しようとして、まわりが一生懸命タッグを組んで理由付けして通しちゃったていうのは分かりました。ただ、世の中の道理や常識で、これって会社更生法にすべきだよね。て言った場合に、デメリットとかってないんですか。理路整然と本来あるべき会社更生法を適用した場合に、良いことばかりじゃないんじゃないかというような不安もあったりするんですけど。

福井:そこにまさにつけこんでいるわけですね。会社更生法なんか適用したら、こんなに世の中に大混乱が起こります。というですね。デマを流して、それを信じさせることにも成功しているという側面がありますね。例えばこういうのがあるんですよ。会社更生法になるとですね。債権に優劣があるわけですね。一般担保付社債というのは、東京電力の社債というのは電気事業法上優先される債権だという位置づけがありまして、会社更生法になったときにも他の損害賠償債権とか、普通の銀行貸付債権よりも順位が上なんですよ。これをとらえて、いやいや社債がまず優先的に保護されますから、被害者の賠償債権は圧縮されるので被害者救済にはなりませんと。したがって会社更生法なんか使うことはできません。というこれも永田町や霞ヶ関界隈で流布した説なんですね。私は珍説奇説の類だといっているのですが。2つ誤りがある。

1点は会社更生法を使うというのはですね、とにかく社債は全額絶対的に優先せよ、などという説はかつてはあったけれども極めて少数説。普通は相対優先説といって、なにも社債を全額保護したあとでないと、東電の資産から他の債権者は全然東電資産にかかっていけません。などということはありえない。裁判所で確立した実務では、例えば社債が10なら10保護するとしたら、賠償債権や一般売掛債権は8にしましょうとか、順位をつけるというのは比率の圧縮度合いを変えて順位をつけるということで変えてるのが実態なんですね。従って賠償債権やもちろん劣後はして比率は小さくなる可能性は高いですが、とんだりすることはない。この点で会社更生法の解釈の誤りが流布されている。

第2におかしいのは、原子力賠償法のたてまえでは、東電がすっからかんになって無限責任を負ったあとはいずれにせよ国が必要な支援を行うことになっているんですよ。賠償に関する限りは。どちらにしろ最後は国がでていって、賠償債権は全額満足せざるをえないです。逆にですね、賠償債権が納税者が残りを負担はしますが、納税者の負担を一定だというふうに仮定すれば、今度の支援機構法案のような分担関係になったら、一定だとすればですね。納税者の金が株主や社債権者はいる分、被害者救済はかえって縮まるんですよ。支援機構法案を通したほうが、納税者負担一定とすれば被害者救済ははるかに劣後する。ということですから、まったく逆のことが流布されてるというのが1つ大きな点ですね。

あとね、これもよくあるパターン。会社更生法を使うと社債がデフォルト起こすと、社債がデフォルト起こすと社債を発行しにくくなる。特に他の電力会社なんかが社債発行をしにくくなって、日本の電力事情がむちゃくちゃになるっていう説があるんですね。これは一見もっともらしいんですけど、今回事故起こしたのは福島第一であって他の電力会社の原発でないわけですよ。福島原発の賠償のデフォルトがただちに他の電力会社に波及するわけがない。それは別の事故ですから。しかも、もしですよ。原発っていうのがどうもリスクがあるんだということが、社債市場で意識されるようになったとして、他の電力会社の原発もそれなりに危ないらしいということがわかった段階で、社債の金利が上がったり発行しにくくなったとしたら、それこそ健全な社債市場の働きですから、それを誤魔化して高い社債のまま誤魔化し続けるほうが社債市場の混乱だと。

ガム

松田:私も議論になったときすぐに言ったのが、それだったら万が一ですね。日本でホンダが何か大きな問題を起こして、社債の格付け下がってね。大変なことになったと。じゃあそれに合わせてトヨタもいちいちそうなるんですか。ならないですよ。逆に上がるかもしれないですよね。ライバル減ったということで。ほんとにひっちゃかめっちゃかでワケのわからない話。

福井:あと金融不安になるという珍説もあるんですね。銀行が多いんですよ、社債権者には。一般貸付はもちろんメガバンクですよね。銀行の債権が何兆円もデフォルト起こしたりすると、金融秩序にも大混乱が起きる。具体的に信用創造機能。銀行の貸付機能に支障が生じて、貸しはがしや貸し渋りが起こったら日本の経済の動脈が止まりますという、一見もっともらしい反対説があるんですけども。しかしですね、すべての銀行のすべての社債をデフォルトにならない前に全額保護する理由には全然ならないですよね。デフォルトを仮に起こしたとして、それでその銀行がなんだかの経営不安を抱えて、それで貸し渋りや貸しはがしを起こし出すかもしれないリスクが出たときに、その銀行に対してだけ例えば公的資金注入すればいいわけですね。今のこの言わば、そういう人が出ると困るから全額、しかも銀行以外の社債権者も含めて全額保護しましょうっていうのは、くしゃみして風邪になるかもしれないといった人に対して、肺炎になって一月入院する分の治療費と慰謝料を全額前払いして、あとは取立てませんというのも同じだと。こういう感じですね。

熱っぽく語る4名
●「電力自由化」につながっちゃうから、資産も売りたくない!

松田:もうひとつこの話から繋がっていくと思うんですけど、東電が持っている資産があるじゃない。さっきのT君の例でいうと、お金持ちのボンボンでしょう。例えば発送配電だけでも6兆円ぐらいあるというふうに言われているんですけど、そういった資産を普通だったら会社更生法だったら売らざるをえなかった。売らざるをえなくなって、そこで賠償金を払って、それでも足りない部分があったら国にお願いするというパターンだと思うですが。国にお願いするというところは置いといて、資産を売却するという考え方。そこに立ち返ってみると、そこを売却しなくちゃいけないことに仮になったとしたら、その部分を誰かが買うことになるわけですよ。手を上げてですね。その部分をやはり手放したくない。なぜかというと、そこを手放してしまうと電力自由化に繋がっていっちゃうんですよ。

福井:発送電分離とかね。

井上:発電、送電、配電。ですね。

松田:ところを自由化ということに繋がってしまう。今これは十分わかっていると思うんだけど、今の日本の電力事情というのが発電しても送電網を東電が押さえているので、そこをなかなか使わせてもらえないから、発電しても売れない、という状況が続いている。流通していないんです。

コンビニでいうと、せっかく商品をサンドイッチを作っても配送のロジスティクス(物流網)の部分をセブンイレブンが押さえていて、「使わせてあげないよ」って言われちゃったらどうあがいたってその商品は売れないわけだから、作ろうとも思わないでしょ。サンドイッチのベンチャー作ろうとは思わない。コンビニに売れないっていうのが最初からわかるんだったら。それとまったく同じ状況がずっと続いていて、誰も発電ビジネスに、若干はいってきてはいたけれども実際真剣に取り組もうと思っている人たちはいなかったわけですよ。送電網、コンビニで言えばロジスティクスを誰でも自由に使って良いですよという形にして、例えばこのトラックは誰でも配送のために使ってくださいちう形にして、お金を払うところには平等にちゃんと使わせますよ。ということになったとしたら、どんどんサンドイッチを作るところが出てくる。競争が生まれる。そうすると、コンビニで500円だったサンドイッチが競争が生まれから、400円なるかもしれないし300円になるかもしれない。同じクオリティでもより安く作ろうという努力が発生するわけだから、競争がはじまるよ。となっちゃわけじゃないですか。その競争を回避したいという考え方もあって、実はこの東電救済法案を通したいという……。

福井:透けて見えますよね。資産を売ることで自由化に繋がったら偉いことだから、他の電力会社が奉加帳(付き合いでお金をとられること)をまわされて唯唯諾諾として払いますといってるわけです。電気事業連合会とかが。本来おかしいですよね。まともな企業なら「そんないわれのない負担には私どもは応じられません」というのが真っ当な企業です。東電を助けるんじゃない、俺たちの電力のシステムを助けるんだというのが無ければそんなお金を払う理由はないってことですよね。

松田:さっきのトヨタの話と一緒で、仮にホンダが潰れそうになって大変な事故を起こしてしまって、トヨタとかスズキとかダイハツとかマツダが喜んでサポートするために何百億とか払いますか。絶対無いですよね。よし、チャンスだと思うに決まっている。まったくそれが起こってないのが変でしょう。何百億ですよ、年間何百億。

井上:みんなで築きあげた参入障壁という秩序を、維持したほうが俺たちにはいいと。

福井:独占利益の維持経費だと思っているふしがある。

井上:送電のところっていうのは、例えば誰かが風力とか太陽光とかで発電したとするじゃないですか。それをどこかに流したいとすると法外な値段を払わないといけないんですか。

松田:現状をいうと、理由をつけて「流せません」っていうことを電力会社が言ってしまっている。

原:料金も取られるんですよ。送電網に繋げて送ってあげることに対する対価、料金というのは多額のお金を取られ、止まっちゃったときのためのバックアップの料金とか。もし止まったときにはペナルティはこれだけお金をとりますよ。なんていうのも凄く高くなっていて。あとは風力なんかだと、不安定な電力なのでそうやすやすと繋げないんです。というようなことを色々と理由をつけて、結局なかなか余程のコストをかけないと繋げないようにしている。なんていう状態なんで、なかなかはいってこれないんですよ。

井上:さっきのサンドイッチ屋さんと物流の話でいうと、電力会社が信号も1個もないようなきれいな高速道路を持っていて、下の道はなくて、下の道通りたかったら自分で舗装しろと。そこまではちょっとできないよなと。高速通ればすぐなのに、ていうときに色々理由つけて通さないようにするか、もしくは通るのだったら100キロあたり10万円払いなさいとか。

福井:高速道路と対比すると分かりやすいんですよね。いわゆる高速道路というのは、道路網はどこか独占会社が持っているわけですが、ある独占会社が道路というインフラ部分は持っていると、だけどそこを走る車というのはみんな個人や事業者や企業が持っている。「東日本道路会社の車しか走らせません」て言ったら暴動起きますよね。電気は実はそれをやっているんです。東京電力株式会社がおこした電気以外は私の電線にはのせてあげませんと。道路ではできて電力ではできてない。

松田:なぜかというと「あなたが持っているトラックは、タイヤのまわりがボコボコしていて高速道路に悪い影響を与えるかもしれない。だから通せないんです」というような話を平気でするわけですよ。

井上:ちなみに日本の電気料金というのは、先進国のなかと比べるとどのぐらい高いんですか。

原:相当高いです。統計の取り方によって相当違うんですけども、アメリカと比べると経済産業省がいっているデータでさえ、これかなり価格差がなくなってきたという説明をするために出しているデータなんですけども、それでさえアメリカの2倍。

井上:そこのコスト高にはいろんな秩序維持コストとかが入ってるだとか、全部のっかっているんですね。

福井:料金認可を政府がしていますから。原価自体はですね、原価は本当は競争があれば下がるんですよ。普通の企業がそれこそサンドイッチ作る場合には、小麦粉をどこから安く仕入れるとか。人件費もできるだけ効率化して、機械と人間と分業しようとか。競争市場で原価を賄うのであれば下がりうるんですよ。ところが、電力会社の原価っていうのは言わば独占的な原価ですから、東電が従業員に払っている人件費が原価なんです。いくら高く払っていても原価なんです。他と競争が無いんですから。原価自体は肥大化する傾向がどうしても出ているわけですね。

松田:ちょっと質問いいですか。総括原価方式というのは製造業でいう、製造原価ってあるじゃないですか、あれと同じ感覚ですか。そうすると人件費はやっぱりその中にに入るんですね。それでも管理部門にいる例えば本社にいるような人たちの人件費は入らないんですか。

福井:入ります。電気事業法上の料金規制基準は「能率的な経営のもとにおける原価プラス利潤」なんですよ。法令上の原価には、間接経費や管理部門の経費も全部入ります。利潤ってのが結局ですね。数パーセント実際にはのっけるらしいんですが、これが株主の利益ですよ。利潤の部分です。

井上:そんな会社絶対成功しますよね。

松田:だからそんな会社経営したいでしょ。

井上:失敗したら保障してくれるし、絶対利潤が上にのっけられるんですから。

福井:使っただけ原価になって、さらに株主の利潤をのっけられるということですよね。

●一社独占のコーヒー会社があったら?

松田:そういうコーヒー会社を作ろうとしているわけ。タリーズコーヒー私作りましたと、一社独占です。他のドトールもスターバックスも存在すらしてないで、コーヒー豆の原価ちょっと上がろうが、もしくは人件費を何人費やそうが、それに上乗せしてみんなに売れますと。だったらコーヒー1杯千円2千円3千円となってきちゃうわけじゃないですか。でも一社しかないからコーヒーどうしても飲みたかったらそこから買わざるをえない。コーヒーだったらまだいいけど、電力ってみなさん生活のときにどうしても必要じゃないですか。絶対使わざるをえない。それをそういう価格で決めてしまっているという異常な状況なんです。

原:さっきのその電力村みたいなね。利権構造というのは、結局そこにすべて起因しているところがあって、広告料なんていうのもそこにはいっちゃうわけです。

井上:用もないのに出す広告。それも原価になっちゃうわけですよね。

福井:原価です。

井上:もの凄い簡単な経営ですね。

福井:会社更生法がいかんという理由に、もう1つ面白いのがあってですね。電力は国民の生活の基盤だから、独占で東電の代わりがいない東電を破綻させたらえらいことになるっていうのは、これ私むしろ逆だと思うんですよ。JALはまだね、他の航空会社がいたけれども、東電は他の供給者がいなくて消費者は東電をどちらにせよ選ぶしかないんだからかえって混乱は小さい。なぜならば、運転資金さえ政府が債務保証等で供給してあげれば、逆に言えば他にお客が逃げないんですから、むちゃくちゃ安定経営が維持できるわけですよ。破綻処理をしたときにこういう独占企業はもっとも混乱が少ない。JALよりももっと混乱が少なく然るべき企業なんですね。これを巷で流布させているのは逆の説なわけですね。

電力料金もね、元の案ですと東電の料金も他の電力も上げてほそぼと超長期で賠償負担させるんだ。みたいな議論があるんですけど。これ最近私もつらつら考えているけどかなりおかしいんですね。まさにさっき話題にでた料金原則からすると、原価プラス利潤しかのっけられないんですよ。でもいくらその原価に野放図に独占事業者だからたくさんのっけられるにしても、過去の賠償を原価にのっけるのはできないはずなんですよ。なぜならば、もし競争事業者がですよ。サンドイッチ屋さんとかコーヒー屋さんが、何か食中毒で不祥事起こしました莫大な債務を負いましたというときに、同じ品質同じ量のサンドイッチコーヒーに、他のチェーン店ではのっけていない賠償額をのっけたらそれで商売成り立つと思いますか。要するに競争事業者が第三者賠償を払うような時には、原価には絶対のっけられないんですよ。のっけたとたんに客がいなくなりますから。じゃあのっけられるとすれば、利潤を圧縮するしかない。まさに株主の努力ですよ。株価を下げてそれでまたなんならそれは1案ですよ。ところがですよ、原価プラス利潤は一定ですから利潤を圧縮するなら総額一定ですけれども、支援法案のスキームっていうのは上げるといってるんですよ。ということは原価にのせるという意味なんです。料金原則からすれば許されないことをやろうとしている。

もしそれで料金にのっけるんであれば、料金債務は存在してないっておそらく争いがあるんですよ。もし利潤を、特に他電力の株価を圧縮する形で利潤を圧縮しようというんでしたら、他電力の株主は株価を下げた、任意でそういう奉加帳にですね。同意をした経営陣は我々の株価を下げたんだから、それを賠償しろといって株主代表訴訟が提起できる。

それ覚悟してやろうとしているのかどうかよくわからないんですね。任意で協力するということは、国が命令してですよ。お前達奉加帳にサインしろと命令されたんであれば、財産権の一種の侵害ですから。憲法に基づく損失補償。正当な保障を請求できるはずです。逆に言えばそれ請求しなきゃいけないはずです経営陣は。それをやらないで、今の経営陣の自主的判断で奉加帳にサインしますといったのであれば、それは応分の責任を取る覚悟があってのことじゃないとおかしいんです。

井上:そのリスクを認識したうえで出すんでしょうね。経営者だったら当然そのぐらいのことわかってるはずですよね。

松田:あまり深く考えていないかもしれない。さっきいったような会社の経営をやってきた人たちですよ。意味がわかってないんじゃないですか。株主代表訴訟ってどういう意味ですか。ってそういう感じだと思いますよ。

もう、止められない?
●こんな法案通しちゃダメだけど、法案を止めるのは無理っぽい

井上:凄くよくわかってきましたね。

松田:やっぱりおかしいでしょ。こんな法案通しちゃだめなんですよ。

井上:おかしい。全く非常識ですね。これは困った状態で、みんな東電を守りたいし、がんじがらめで利権が絡んでいるし。そこに政官がぐちゃぐちゃになって固まっているから。ただ、このスパゲティー状態を解消して、いまいまこの法案を止めるのは無理っぽいですよね。

松田:本当は国民の皆さんに「おかしい」と、井上さんのように気づいていただいて、声を上げていただくのがいい、時間があれば。でもやっぱり短縮して、一気に進めちゃおうとしているんで、そんな余裕も全くないですから。

福井:スタートを仮にしてしまえば、国のお金も電力料金負担者のお金もどんどん入り出しますから、スタートしてしまった以上は、一刻も早く傷口の浅いうちに大手術をした方がいいということが言えますね。
どこかできちんと東電のバランスシートを出させて、この先、国のお金や電力料金負担者のお金をつぎ込むということが誰をどれだけ得させて、誰にどれだけの損失を強いるものなのかというバランスシートを出させて、これをそれ以上やり続けるんですかという点で、民意を問うべきタイミングがかなり早く来ないといけないと思います。

松田氏

●KTさんはなぜ説得されたのか

松田:さっきお見せした法案修正のポイント。これを官僚のどなたかが作られて、自民党のある議員の方々が資料をもって党内の説得に回ったわけなんです。例えば、KTさんはもともと、「こんな法案だめだ」といっていたのに、こういう資料を見せられて「なるほど」と説得されてしまった。この資料の中にあるのは、「実は2段階なんですよ。いずれは債務超過になるので、破綻処理をするんです」ということをいって、自民党の反対派を説得したらしいんです。それで自民党の中がまとまって「わかりました。これを通しましょう」ということで修正案を通してしまったと。

でも実際はそれは完全な騙しで、そもそも自分でも不思議だなと思ったのは、いずれ破綻処理するんだったらなぜすぐやらないのか? 1ステップ余計に踏ませちゃうとそれだけ混乱が増えてしまう。それだけお金が投入されてしまえば、より面倒くさいことになってしまいます。本当に破綻処理しようとするなら、まず最初にすぐやらないとさらに損失が広がる。2段階にする意味がない。これはなんなんでしょう? どうやって説得されたんですかね、KTさんは?

福井:これは巧妙なんですけどね。いずれ破綻処理するんなら、一見リーズナブルと信じてしまうという人がけっこう知性理性も十分おありの方に多かったんですよ。でもよく考えてみると、いったん支援機構がスタートして、国や電力料金の負担が入り始めて、その後で破綻するということは、もっと傷口を深めるということなんです。

なぜならば、破綻した段階でそこに入ったお金は当然、会社更生法的な処理をするのであれば、債権が圧縮されますから飛んじゃんうんですよ、かなりの程度の債権がデフォルトするということなんです。ということは2段階の最後の破綻処理までに入った国民のお金はほとんど飛んで、誰のものになるかというと株主、主債権者のものになるということなんです。ですから、あとで破綻させるということは、やっぱり最初に破綻させるよりも、余分に株主や銀行を救済するという意味なんです。だったら今やったほうがいいじゃないですかってことになるんです。

しかも、もし(機構が)できてしまったら、一刻も早く破綻処理してしまえば、私もそこまでいってしまえば、やむを得ない次善の選択だと思いますが、それにしてもいったん支援機構法案スキームができてスタートして、いわば東電の賠償資金のために、お金を入れ出した後に破綻させるというのは、どういうことかというと「国はもう支援しません」と宣言して悪役を買って出るということなんですよ。そんなことができる政府がいますかね?二重の意味で、まったくおかしな議論で、きわめて袋小路に落ち込んでしまったということを意味しています。

原:作った人達の意図は、債務超過には「絶対に」しないということなんですよ。修正のポイントと、もうひとつ修正が許されないポイントという紙があるんですが、「こういう修正はやってはいけません」とたぶん説明して回った紙なんですね。

この紙の最初のところで書いてあるのが、勘定区分を設けることは絶対にやってはいけませんと。これは東電に対する支援と将来のそれ以外の電力会社への支援の勘定区分なんですが。テクニカルな問題なんですが、勘定区分をつくっちゃうと会計処理上、東電が債務超過になってしまう可能性がある。だからこれだけは絶対にやってはいけないと。それで勘定区分を結局つくらなかったんですよ。この修正協議をやった人たちは債務超過にならないためにはどうやったらいいか、ということを考えて作成している。

福井:目くらましなんですよ。ごまかしちゃいけない。

松田:数字の遊びですよね、これ。勘定区分を分けないことによってぼやかす、ただそれだけの話なんですよ。こんなこと普通の会社ではありえないでしょ? どこかからお金を借りた。それを一つのボックスに入れて、どこからお金が来たか、どこにお金が出ていくかわからないようにしちゃいましょうということ。

井上:監査法人の適正意見が出る訳がないじゃないですか。

松田:それがまた出ちゃうんでしょうね、来年ね。

福井:経理区分や、受益と損失の区分は、完全にガラス張りにするというのが実は一番近道だと思う。それを知らされないまま、まるめこまれて怒濤をうったように変な修正が施されて国会を通ろうとしてますから。それが何を意味することか、知ることが第一歩です。そうすれば引き返せる道はあり得ると期待したいです。

他電力会社の将来の話ならまだわかるんですよ。過去の話は、全くおかしいでしょう。人の尻拭いを他の会社がするということですから。将来の話で保険をみんなで分担しましょう、これならわかる。ところが、もう一つまだおかしいのは、いまの修正協議の議論の中では、将来の原発については、現行の原子力賠償法というよくできたシステムの法律構造を改めて、電力会社の負担には上限を設けましょうとなっています。

更に国が国策として原発に責任を持つべきだという議論があったんですよ。これは私は2つともまったく間違っていると思う。私はむしろ、現行の原賠法にある政府保証契約の1200億円はなしにして、国はいっさいかかわらない。その代わり民間の賠償責任保険に加入できた原発だけに限って操業を認めるというのが将来の原発政策の一番正しいやり方だと思う。

再保険も含めて、民間の保険を引き受けてくれるぐらいに安全性が認められた原発を運転する事業者だけは原発設置許可を出すよと国が言うべきなんですよ。こういうことを言うと、「原発というのは今回のこともあって危ないことが知れ渡ったんで民間の保険会社なんか引き受ける訳がないですよ。だから国がやるべきです」と言う人がいる。これはもっと悪い。民間すらリスクを引き受けない、国民に負わして言いはずがないと。ますますやってはいけない。

井上:しかも、それを国ができるのかと。

福井:国家が破綻するかもしれません。民間保険だけに委ね、国の責任はいっさい引き上げて、賠償保険加入義務だけを設ける。あるいは国は徹底的に原発事業者の事業に関する情報開示だけを命じる。他のことで国が責任を持つというのは、かなり狂った方法だと思います。

井上:これからのエネルギーの政策に関しては、発電、送電、配電を全部自由化していって競争を生み……。

福井:それで下がる要素がかなりあります。後は火力に頼らざるを得ない面もでてきますから、それで上がる面もある。それを差し引きして、徹底的に合理化して、仮に原発がなくなったとして、もたらされる価格が高くなったとしてもそれは適正価格なんです。

松田:結局、ドイツが目指す方向性がそうで、原発を完全に廃止するという方向性なんだけど、確かにドイツの電力料金は高くなっているんですよ。でもそれは、国民がオープンに議論をして、それでみなさん納得して、多少電力代金がが上がるとしても、クリアな方向性ですすめてくれるんであれば、原発を廃止して払いましょうということになったわけですよ。本来、日本もそういう方向に進むべきかなと思うんですよね。

井上:マスコミを見ていて、違和感を感じるのは、皆本当は同じことを考えているのに、脱原発か否かという0か1の議論で、グリーンエネルギーか、それは現実的じゃないよという二元論しかないんですけれど。皆最終的には同じ脱原発ということを遠くの未来には考えていて、同じこと言ってるはずなのに。

●脱原発は信念でいうべきものではない

福井:たぶん思考回路が大きく違うんですよ。脱原発のスローガンを唱えられる、どこかの国の総理大臣は、一種信念として言っている訳です。でも信念で原発にするかしないかを決めてもらっては困るんです。要するに原発をとることのリスクと受益と負担を国民にもたらすのかについてバランスシートを作ってもらって、総合的にみて国民にとって国家にとって、これは吉とでればやる、凶とでればやらないという回路をたどった上で脱原発になるなら、それは正しい脱原発なんですよ。計算もしない。バランスシートもつくらない前に脱原発というのは、無責任きわまりない政治の姿勢だと思います。

松田:そういうやり方をしているのであれば、菅総理は、とにかく政権の延命をはかろうかとだけ考えていると思ってしまう。

福井氏

●この法案が通れば、日本の電力はずーっと高いまま

井上:今日はこの法案に関しても、よく理解できたんですが、僕を含めて国民の多くはわからないことが日常茶飯事で、知らない間にどんどん物事が決まっていく。これは国のあり方としては残念で、それこそ福井先生が属する政策研究大学院大学で毎週のように漫画を出していただいて、国民がそれを読むとなるほどと理解ができ、みんなが正しい見解を持てるようになるような工夫が欲しいなと。

松田:この法案が通ってしまったら日本の電力はこれからもずっと高いままです。その構造を、あのような原発事故でのピンチ、あれだけの人を苦しめたんだから、何かしらプラスを生み出したいなと思うのが通常だと思うんです。ところが、それをしないで、もっと悪化させて、より電力会社の独占状況を守りましょうというのが今回の法案です。この法案が通ってしまったら本当に未来永劫、日本の電力は、自由化もできないし、料金も高止まりしまうということを皆さんにしっかりお伝えしたい。

福井:システムの問題として、電力の面でも相当まずいことがおこると思うんです。こういう不透明な、法治主義国家で本来想定されている法的な手続きをあえて避けるってことが、一応、先進民主国の一員を成すとされる日本で、白夜堂々とおこなわれるというのが将来の政治システム、社会システムに暗雲を投げかけるきっかけだと思う。

松田:たぶん、こういう話を聞いて井上さんは怒ると思うんです。なぜか? 「この国は資本主義だ」という想いをもってベンチャーを立ち上げて、必死になってがんばっている。自分の信じたものが、これでくつがえされる、だまされた気になる。政府、もしくは一部の利権者のために、こういう法案が通ってしまう。ふざけんなよと思わない?

井上:我々は、オープンな土俵で、ルールのもとで競争してきて、ものすごい努力をしてリスクも負いながらやっているわけですよね。「リスクはない」「ルールは勝手に変える」だとしたらそれはもう愕然としますよね。

松田:この国大丈夫かと思ってしまいます。

井上:本当に心配ですね。

福井:本当に、こういうことがわかった上でこういう選択を採るような国家だったら、進取の気性がある、優秀で、事業をやって国富を富ましていただきそうな方は、どんどん日本を脱出すると思いますよ。

松田:今は、その瀬戸際に立っています。
本日は、ありがとうございました。

松田氏事務所


●復興特委にて「東電救済法案」に関する質問を松田公太氏がおこなう予定だそうです
参議院 東日本大震災復興特別委員会 原子力賠償支援機構法案質疑(NHK中継あり)
日時 8月1日(月)10:00〜17:12
場所 第一委員会室
質疑者:松田公太議員15:42〜15:57

参議院ネット中継:
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php



(情報提供:東京プレスクラブ、編集協力:猫目さん)

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