プロ野球のロッテ、阪神や米大リーグのヤンキースなどで活躍した伊良部秀輝氏(42)が7月27日、カリフォルニア州ロサンゼルス近郊の自宅で亡くなった。自殺と見られる。伊良部氏はヤンキース時代、思うような投球ができないと観客にツバを吐いたり、物を壊したりといった行為で批難を浴びていた。その当時の伊良部氏を密着取材していた米・スポーツジャーナリストのジョージ・ウィルス氏はこうレポートしていた。(週刊ポスト1997年9月26日号より)

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 いまや米メディアで書き立てられる伊良部像は、まさにヒール(悪役)そのものだ。ゲームで思うような投球ができないと、物を壊したり、唾を吐いたり,マウンドの土を蹴って巨大な穴を作ったり……。その悪行は、米スポーツ・マスコミの間でも注目の的といってよい。

 とりわけ1997年9月1日、フィリーズ戦に敗れた後は、ロッカーで大暴れ。金属製のドアや天井のスプリンクラーまで破壊して、ヤンキース内部でも大問題となってしまった。

 ある主力選手はあぜんとして、こういった。

「ロッカールームで暴れるようなキングコングはヤンキースには必要ない」

 入団以来、伊良部の最大の庇護者だったスタインブレナー・オーナーも、9月5日のオリオールズ戦で伊良部が中継ぎ登板に失敗した後は、どうやら匙を投げた格好だ。

「伊良部にはもう期待はしないよ。春のキャンプでしっかりトレーニングすれば、伊良部は、来年はヤンキースに貢献すると思う」

 メジャーに初登場以来、試合後のインタビューでは、日米報道陣にそっけない答しか返さず、態度も決してよいとはいえない伊良部。だが、私の知るかぎり、ロッカールームやグラウンドでは、とてもリラックスした感じだった。いつもは話したがらないようなことまで謙虚で素直な口調で話すのだ。

 一時マイナー・リーグに降格された時は、通訳をさえぎってたどたどしい英語を交えて、心境をこう語った。

「もちろん望んでいたことではないが、マイナー・リーグに落とされても、私自身はそんなに驚いていなかった。たしかに、こんな結果になって不本意です。でもこの数週間で、いままで経験したことのない本物の野球に接して、たくさん学びました」

 7月20日のブリュワーズ戦は2対6で敗れたが試合だが、伊良部は、マウンドを下りる途中でファンに向けてツバを吐き、全米ファンのブーイングを浴びたものである。だが、伊良部によれば、このツバはファンに向けたのでなく、あくまで相手チームに向けたものだったという。

「マウンドから下りる時、納得いかない気持ちをブリュワーズにぶつけてやろうと思っただけなんだ。ファンに向けてツバを吐くわけがないじゃないですか。本当は自分に対して腹が立ったんです。それだけですよ」

●インタビュー/ジョージ・ウィルス