"農業の東大"といわれる、農業のエリート養成所が滋賀県湖南市にあります。そこは「タネのタキイ」として知られるタキイ種苗が、1974年に設立したタキイ研究農場付属園芸専門学校です。 

 「自衛隊並みにハード」と噂されるほど厳しい学校ですが、就職のときには、農業生産法人などで即戦力として歓迎されます。しかも、農業学校にも関わらず、卒業生たちは一般企業でも重宝されるというのです。どうして同校の生徒たちは、それほど優秀な人材になれるのでしょう?

 同校は18〜24歳までの男子限定の全寮制で、入学費・授業料・寮費・食費などはすべて無料。授業は畑での実習と講義の2本立てです。実習は東京ドーム15個分ある広い農場内で行われ、しかも移動はすべて駆け足。さらに実習後には、その日の学習内容をまとめた日誌も提出しなければなりません。

 また、1年次は相部屋。朝7時の起床から夜11時の消灯までのタイムスケジュールは厳格で、TVの私有は禁止。携帯電話の使用も制限されています。外出・外泊には学校への届けが必要で、門限は夜10時。寮内での飲酒はもちろん厳禁。ケンカなどの暴力行為は即刻退学。在学中は帰省時も含めて自転車・バイクの運転は禁止されています。

 そんな学校を取材したジャーナリストの川上康介氏は書籍『五感で学べ』のなかで、「タキイ3倍速の法則」なるものを提言しています。18歳で入学した生徒が2年間学ぶと、卒業する頃には24歳程度に。22歳から2年間学んだ場合には、28歳程度の雰囲気をまとうといったように、他校の生徒らに比べ、同校の生徒は3倍の速さで成長するというものです。

 その秘密は、普通の社会人が1日8時間を会社に捧げるのに対し、この学校では1日24時間すべてを農業に捧げていることにあります。ただ農業の技術だけを学ぶのであったら、そうは成長できないかもしれません。24時間農業漬けになることで、農家として生きていくための心構えや体力、そして規則正しい生活習慣の重要性を学ぶのです。

 「日々の生活や人との接し方にも変化がでてきます。仲間が今何を考えているのか、どういう気持ちなのかを常に考えるようになる。自分のことよりもまず相手のことを考えるようになる。いつの間にかそういうことが自然にできるようになった」と話すのは、生徒の山中景星さん。
 
 農業を本気で学ぶことは決して楽なことではないようですが、その分、人間としてとても重要なことを手にし彼らは卒業していきます。それが、農業の学校にもかかわらず一般企業からも支持される理由ではないでしょうか。



『TV、飲酒、自転車禁止。エリートを輩出する"農業の東大"とは?』
 著者:
 出版社:オレンジページ
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