“なんのために仕事をしてますか?” 働くとは何かを問う直木賞受賞作

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 先日、第145回直木賞を受賞した『下町ロケット』(池井戸潤/著、小学館/刊)。
 早くもWOWOWで連続ドラマの放送開始を控え、話題の作品となっている。

 かつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃航平は、打ち上げ失敗の責任を取って研究者の道を辞し、親の跡を継いで大田区の小さな会社、佃製作所を経営していた。しかしある日、佃製作所に危機が訪れる――。

 そこからロケットに関する最先端特許を中心に物語は本格的に幕を開く。
 知財所有権を巡り、崖っぷちの中小企業・佃製作所が、大企業を相手に、特許侵害による裁判、資金難、買収劇などを乗り越えていく姿が、実にスリリングかつ爽快に描かれている。

 著者の池井戸潤氏は、銀行マンからコンサルティング業に転進した経験を持ち、ビジネス書も多数出版している。彼ならではの経験が存分に発揮され、リアリティ溢れる展開が読者を惹きつけて止まない。

 だが、この作品にはもうひとつの魅力がある。
 「何のために働くのか?」という命題だ。

 従業員の生活を考えなければならない経営者としての立場。いち研究者として追い求めたい自身の夢と理想。その狭間で揺れ動き、時に理解を得て、時に反発を受けながら、佃は思い悩みながらも前進していく。

 経営者にとって必要なものはなんなのか?
 そこに強いメッセージを感じる作品でもあるのだ。

 社会派ドラマ、経済小説、エンターテイメント。どの方向から読んでも楽しめ、多くの人に勇気と感動を与えることのできる作品だろう。
(ライター/石橋遊)



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