部下をうまく育てるには?――石田淳さんインタビュー(2)

写真拡大

 部下に仕事を教えるのは上司の役目。しかし、どのように教えればよいのでしょうか。
 石田淳さんが上梓した『教える技術』(かんき出版/刊)は、行動科学の知見から、上司が部下に仕事内容を教える際に何をすべきなのか、何を重要視すべきなのかを教えてくれる一冊。転職が当たり前になった時代に、普遍的に使える「教える技術」は身につけておくと必ず重宝するはずです。
 今回は、石田さんへインタビューを行い、どうして今、「教える技術」が必要となっているのか、「行動科学」とは何かなど様々な質問をぶつけてきました。中編では、石田さんが感じている上司たちの悩みや部下が育たない理由について聞いています。

―中編:現代の上司たちの悩みとは?―

―石田さんが講演をされる際に、聴講されている方々からはどのような質問が来ることが多いですか?

「多いのは、やはり『ゆとり教育世代の考えていることが分からない』『年上の部下とどのようにコミュニケーションをとったらよいのか分からない』といった内容ですね。ちょっと厳しく言ったら辞めてしまったとか、そういった実際の経験に基づく悩みが多いです」

―それは自分の考えとは別の考え方を持っている人たちに対して、恐怖感を持っているということでしょうか。

「恐怖感というより、どうしたらいいのか分からないというのが本音でしょう。自分の言葉が通じない、思っていることがなかなか通じないという方もいらっしゃいますし」

―では、部下がなかなか育たない一番の理由はどこにあると思いますか?

「まさしく、本書のタイトルではないですが『教える技術』を知らないことだと思います。つまり、教え方が分からない。『三つ子の魂百まで』ということわざがありますが、誰でも自分の受けた教育が一番正しいと思っています。若い頃怒られてきた上司は、部下に対して怒りながら育てることが一番良いと思っていますし、教わらずにきた上司は教えずに自由にやらせることが一番良いと思っているんです」

―そうなると、必然的にその教え方に合わない人もでてきますよね。

「そうです。全然成長できませんよね。合う人はすごくのびるかも知れませんが、全員に合う教え方ではないですから、その教え方に合う人よりも合わない人の方が多いのではないでしょうか」

―先ほど、講演会の聴講者から「ゆとり教育世代の考えていることが分からない」という意見が出ているという話がありましたが、そうした世代の違い、ギャップを埋める方法はあるのでしょうか。

「だいたい世代間のギャップというのは、30代半ばを境にして生まれます。例えば、40代と20代では大きく違いますよね。それは何に起因するかというと、子どもの頃にどのような教育を受けてきたかということなんです。
例えば20代前半の方は幼稚園の頃から習い事をしていて、小学校が終わったら塾に行く。中学受験をする人もいるでしょう。このような子ども時代を過ごした方は、30代後半から40代の方に比べてかなり多いと思います。
そういう意味では、今の若い世代は、一から事細かく教わっていくことで能力を身につける世代なのだと思います。一方で、40代以上は『自分で考えなさい』と言われて育っている世代。そこで大きなギャップが生まれているんです」

―確かに教わり方が全然違いますよね。

「団塊の世代の方々に、水泳をどのように教わったか聞くと『川か海に連れていかれて、そのままザブンと入れられて、泳いでみろ!と言われた』と答える人も少なくないと思います。つまり、『自分の泳ぎは自分で見つけるべきだ』と教わってきたんです。
でも、それでは泳げるようになる人は半分もいませんよね。さらに2、3割の人は水を見るだけでも嫌になります。一方、今の子どもたちは、スイミングスクールに通っていると小学校高学年にもなれば四泳法をある程度マスターしてしまいます。それはなぜかというと、スイミングスクールで基礎から全部教えてくれるからです。最初は顔に水をつけて、次はバタ足で……といった具合に。要は、どちらのやり方をこれから制度として会社の中に取り入れていきますか、ということなんです」

―後者の方、つまり基礎からしっかりと覚えていく方が確実に身につきますよね。では、部下の行動を見ていると、「これはちょっと直したほうがいいな」というところが出てくると思います。そのとき、どのタイミングで部下に対して、間違い、直すべき点を指摘すべきなのでしょうか。

「単純に言うと、成果が出ていないときです。一度やらせてみて、なかなか成果が出てこない。そのとき、上司は部下と率先してコミュニケーションをとるべきです。そして、どの部分が難しいかを逐一確認しながら、(上司は)教え方を変えていくべきです」

―会社の離職率は、上司と部下のコミュニケーション量と比例するといいますね。

「基本的にはそうです。マーケティングをしている人は分かると思いますが、顧客満足度を高めるには、お客様への接触回数が重要だということと同じですね」

―ただ、コミュニケーションという点では、若い人が年上を避ける傾向もあるという話も聞きます。例えば、今の若い人は年齢の上の人となかなか一緒に飲みたがらないといいますよね。

「でも、飲みに行くことだけがコミュニケーションじゃないですよね(笑)。仕事の合間、5分間とってタスクの話をする。要は回数です。特に新人は仕事の仕方がわからないのが当たり前ですから、常に意見を聞いてあげる姿勢を持つべきです」

―若手のビジネスマンの中には、失敗が怖くてなかなか具体的な行動に移せない人も多いと思います。部下に失敗を恐れるなというメッセージを伝えるにはどうすればよいのでしょうか?

「まずは、自分の失敗の体験談などを話して、『こういうことをしたら失敗したから、こうしないほうがいいよ』ということを伝えることが大切です。『成功する』より、『失敗しない』ほうが教えやすいし、(成功の)範囲を狭めませんよね」

―なるほど。失敗しないポイントを押さえておくことならば、新人や若手でもすぐに出来ると思います。

「上司の皆さんの中には『教える』ということ自体を難しく考えている人もいると思いますが、実はそんなに難しく考えることではないんです。まずはこの本を読んでいただいて、できる範囲で少しずつ実践していって欲しいです。それに、この内容は企業の現場だけでなくて、学校や家庭でも応用できると思います」

―上司の方々の中には忙しくて部下とコミュニケーションを取る時間もない、という人もいると思います。そんな人は、この「教える技術」を実践する時間をどうやって作ればいいのですか?

「それは、もともと(コミュニケーションを)取る気がないかも知れません(笑)。一番大事なのは何回部下と話したか、ちゃんと計測して、記録をつけておくことです。自分の手帳に話した回数をメモしておくことで、今週どれだけ部下と話したかが分かりますよね。マネジメントは必ず記録を残すことが大事ですが、部下のマネジメントも同じだと思います」

―後編「石田さんが思った“教えることが上手い人”とは」に続く―



【関連記事】 元記事はこちら
「教える技術」はどうして必要なのか――石田淳さんインタビュー(1)
部下も自分も心の病気にならないために
部下の心をつかむ3つの方法
信頼される上司になるために必要なこと4つ