アジアの社会起業家たちの事例が詰まった「ビジネス・ルポ」

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 アジアの発展途上国の現場で、様々なビジネスモデルの事例が生まれている。
 ソーシャルビジネスと呼ばれるそれらは、医療や食糧、貧困などの問題を、現地の当事者たちが解決しながら、持続可能な社会を作り上げていくモデルとなっている。
 『辺境から世界を変える』(加藤徹生/著、井上英之/監修、ダイヤモンド社/刊)にはその事例のレポートが掲載されている。

 2009年、著者の加藤氏は、カンボジアの最北部ストゥントゥレン州でカンボジア陣が運営するNGOの代表のチャンタ・ヌグワン氏と出会う。彼女の起業家としての資質を感じながら支援を続けるうちに、もし彼女のような起業家が途上国に無数にいるとすれば、世界はどうなっていくのだろうかという疑問が湧いたという。
 そして、その疑問を解き明かすべく、アジア各国を旅し、世界的な活躍をする起業家の取材を行う。本書では、世界的に活躍する869名の起業家から「社会システムの変革」と「市場の転換点となるビジネスモデルの創出」という2つの基準を通して、電気、水、教育、医療などの7つ事例を取り挙げて紹介している。

 例えば、ハリシュ・ハンデ氏は、途上国に太陽光発電をもたらした人物だ。
 太陽光発電の設置・管理を手がけるインドのセルコ社は、貧困層向けのローン太陽光発電をセットで提供することで「安く、安心して使える灯りを貯蓄のない貧困層に提供する」という道を切り開いた。
 それまで、企業が途上国に太陽光発電を普及させるプロジェクトは多々あったが、設置するだけして、メンテナンスを現地に任せっきりにして失敗を繰り返していた。しかしハリシュ氏は、費用がかかることを覚悟して徹底的にメンテナンスを行った。
 各地にサービスセンターを設置し、エンジニアが3ヶ月に1度訪問し状況を管理した。現地の生活を知り、顧客の仕事や生活に直結する使い方を提案したのだ。さらに「日に10ルピー(約20円)だったら払える。だけれど、ひと月に300ルピー(約600円)は払えない」という商人たちや日雇い労働者のために、貧困層向けローン、マイクロファイナンスを提供する機関を口説き、南インドで太陽発電とローンをセットにしたプログラムの提供に成功する。
 そしてセルコ社は約50万人を超える人々にサービスを提供することになる。

 先進国が途上国での事業に失敗する中、技術的に先進国に遅れをとっていると途上国の起業家たちが、なぜビジネスにおいても、社会貢献においても、成功を収めることができているのか。
 貧困問題の現状をしっかり理解した上で、ビジネスを展開していくアジアの途上国の社会起業家たちの創造力に驚かされるに違いない。
(新刊JP編集部/田中規裕)



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