浦沢直樹が『モーニング』に連載中の漫画『BILLY BAT』第7巻が、7月22日に発売された。歴史的事件の背後に存在するコウモリ・ビリーバットの謎を描くミステリー作品で、ストーリー共同制作者は長崎尚志である。戦後日本の下山事件やイスカリオテのユダの裏切り、戦国時代など様々な時代・事件を扱うが、この巻では1963年11月22日のジョン・F・ケネディ大統領夫妻のテキサス州ダラスでのパレードが山場になる。

 主人公のケヴィン・ヤマガタはケネディ大統領の暗殺を阻止しようとする。これに対してケネディ大統領暗殺犯として知られるリー・ハーヴェイ・オズワルドは、そのケヴィンを救おうとし、ビリーバットの予言に翻弄される登場人物の思いはすれ違う。さらにビリーが見える女子大生ジャッキー・モモチも加わり、ストーリーが複雑度を増す。

 歴史的事件を題材としたミステリー作品には難しさがある。史実として定着している内容から独自性を出さなければ面白くない。一方で史実との差異が拡大すると、物語のリアリティが欠けてしまう。浦沢直樹の代表作『20世紀少年』は登場人物の子ども時代である高度経済成長期のリアルな雰囲気が、ノスタルジアを求める読者層に評価された。一方で『20世紀少年』と続編の『21世紀少年』で描かれた未来は現実から大きく離れたものになり、結末は広げ過ぎた風呂敷のたたみ方への苦慮が見られた。

 実在した歴史的人物が登場し、壮大な歴史的スケールで描く『BILLY BAT』は『20世紀少年』以上に風呂敷のたたみ方が難しくなる。しかし、この巻の主題のケネディ大統領暗殺事件では史実との緊張関係を巧みに回避した。未来を知るビリーという現実離れした設定にもかかわらず、史実に驚くほど忠実な展開が進む。実在の人物であるオズワルドに偶然出会った架空のキャラクター・ジャッキーもオズワルドの逃走劇に溶け込んでいた。

 前巻まではケヴィンが身を挺して人類を救うというシナリオが暗示されていた。ところが、この巻では歴史的陰謀に抗う人間の無力さが漂う。陰謀を食い止めるには非力であるとしても、それ故にこそ、真実を書き留めるケヴィンのような人間が必要とのビリーの台詞に価値がある。多くの陰謀論と同じく『BILLY BAT』もオズワルドのスケープゴート説を採用するが、オズワルドにとっては微かな救いのある結末が無力感漂う読後感に一抹の清涼剤となった。

(林田力)

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