「日本の女子サッカーはこんな劣悪な環境なのに、よくやった!」という声をよく聞きますが、コレって本当なの?

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 1週間以上たってもまだまだ終わらない“なでしこジャパン”フィーバー。W杯制覇という偉業をもってすれば当然のことだが、実は彼女たちの実情が正確に報道されていない面が、いまだある。

 たとえば、優勝した翌日の朝日新聞朝刊の一面記事には、こう書かれていた。

「日本代表は多くがアマ選手だ。昼間働いて夕方から練習に打ち込む」

 このように、女子サッカーは「環境的に恵まれていない」と思い込んでいる人も多いだろう。だが、少なくともこの記述の前半部分は誤りである。今回の女子W杯に出場した代表21名のなかで、純粋にアマと呼べる選手は阪口夢穂、上尾野辺めぐみ(ともにアルビレックス新潟レディース)、岩清水梓、岩渕真奈(ともに日テレ・ベレーザ)、丸山桂里奈(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)、福元美穂(岡山湯郷Belle)の6名だけである。

 どうやら、「厳しい環境にも負けず金メダルを勝ち取った」という美談にしたいのだろうが、現在、世界の女子サッカーで裕福なプロ生活を送れているのは、アメリカやドイツの代表選手のごく一部。つまり、女子サッカーとはそういう競技なのである。

 オリンピックに出場するアスリートを見ればわかるように、日本のほとんどのスポーツには恵まれたプロ環境など存在していない。日中は働いて、夕方から練習するのも当たり前といえる。何も、女子サッカーだけが日本のスポーツ界で特別に悲惨な状況にあるわけではない。

「結局、普段、女子サッカーをろくに取材してもいない大手メディアが、先入観をもとに間違った情報を撒き散らしているだけなんです」(専門誌デスク)

 むしろなでしこリーグは、国際比較すればそれほど悪くない環境にある。たとえば、澤穂希ほか、7人の代表選手を送り込んだINAC神戸レオネッサ。自前の豪華なチームバスと練習場を持ち、平日には午前・午後の2部練習。「こんなすばらしい練習環境、アメリカにだってない」と、澤がいうほど充実している。そして、澤と大野忍以外はアマ登録選手だが、昼間に会社で働いているわけではなく、チームへの貢献度に応じて、所属企業から給料という名の年俸を受け取っている。つまり実質的な“プロ”だ。資金の潤沢な企業グループの社長がオーナーであり、純粋な「企業チーム」とは異なるからこそ実現している、恵まれた環境だ。

 結局のところ、サッカーというだけで欧州で活躍する男子のトップ選手の待遇と比較されて、必要以上に“清貧”のイメージを植えつけられているなでしこジャパン。彼女たちは、純粋にサッカーの実力で世界一になったことを評価されるべきで、そこにマスコミがあおる“女工哀史”的サブストーリーは必要ないのではないだろうか。

(写真/益田佑一)